Docker Engine 29.4.0リリース、AuthZプラグインバイパスやBuildKit脆弱性など複数のCVEを修正

概要 Docker Engine 29.4.0が2026年4月7日にリリースされた。本リリースはBuildKit v0.29.0やrunc v1.3.5への依存関係更新を主な内容とするが、直前のセキュリティリリース29.3.1で修正された複数の重要な脆弱性修正も含んでいる。29.3.1以前のバージョンを使用している場合、29.4.0へのアップグレードによってこれらすべての修正が適用される。最低Go要件も1.25に引き上げられた。 セキュリティ修正(CVE) 29.xシリーズで修正された主なセキュリティ脆弱性は以下のとおり。 CVE-2026-34040: AuthZプラグインの認可バイパス脆弱性。特定の条件下でAuthZプラグインによる認可が迂回される可能性があった。 CVE-2026-33748 / CVE-2026-33747: BuildKitにおけるGit URLフラグメントのバリデーション不備と、信頼されていないフロントエンドによるファイルアクセスの問題。 CVE-2026-33997: docker plugin installにおける権限検証の不備により、不正な権限昇格が可能になる脆弱性。 CVE-2025-61729: ホスト名バリデーションのエラーフォーマット処理において過剰なリソース消費を引き起こすDoS脆弱性。 CVE-2026-34040、CVE-2026-33748、CVE-2026-33747、CVE-2026-33997の修正はcontainerd v2.2.2およびGo 1.25.8へのアップデートとともに29.3.1で提供された。CVE-2025-61729は29.1.2でGo 1.25.5へのアップデートにより修正済みである。 29.4.0の技術的変更点 29.4.0では依存ライブラリの更新と機能改善が中心。BuildKitがv0.29.0に、runcがv1.3.5にそれぞれアップデートされた。機能面ではdocker cpコマンドがコンテンツサイズと転送サイズの両方を報告するようになったほか、Windows環境でDOCKER_TMPDIR環境変数が正しく参照されるようになった。またGo SDKにおいてcli-plugins/hooksの型が非推奨となり名称が変更されている。 バージョン29.xシリーズの背景 Docker Engine 29.0.0は2025年11月にリリースされた大型アップデートで、APIバージョンが1.52に更新された。実験的なnftablesファイアウォールバックエンドの追加、NVIDIA GPU向けのCDIベース処理(29.2.0で追加、AMD GPUのCDI対応は29.3.0で追加)、docker image lsの新しいビュー形式、rootlessモードでのslirp4netns代替としてpasta(passt)へのフォールバックなど多くの機能が追加された。cgroup v1のサポート廃止予告(2029年5月まで継続サポート)やGoモジュールパスの変更(github.com/docker/dockerからgithub.com/moby/mobyへ)といった破壊的変更も含まれており、利用者はアップグレード時に注意が必要だ。

April 10, 2026

北朝鮮「Contagious Interview」、npm・PyPI・Go・Rustなど5エコシステムに1,700超の悪意あるパッケージを配布

概要 北朝鮮に関連する攻撃グループ「Contagious Interview」が、npm・PyPI・Go・Rust・Packagistの5つのオープンソースパッケージエコシステムを横断して、1,700件以上の悪意あるパッケージを配布していたことが明らかになった。Socket社のリサーチャーが2025年1月以降のキャンペーンを追跡・調査した結果として報告されており、開発者ツールに偽装したパッケージを通じて開発者環境への侵入を図るサプライチェーン攻撃の大規模な実態が浮かび上がった。 影響を受けるパッケージと技術的詳細 攻撃はエコシステムをまたいで実施されており、確認されたパッケージは以下の通りである。npmでは dev-log-core・logger-base・logkitx・pino-debugger・debug-fmt・debug-glitz の6パッケージ、PyPIでは logutilkit・apachelicense・fluxhttp・license-utils-kit の4パッケージ、Goでは github.com/golangorg/formstash と github.com/aokisasakidev/mit-license-pkg の2パッケージ、Rustでは logtrace、Packagistでは golangorg/logkit がそれぞれ確認されている。 悪意あるコードはインストール時ではなく、一見正当に見える関数の呼び出し時に実行される点が特徴的だ。たとえばRustパッケージでは Logger::trace(i32) というメソッド内にマルウェアが埋め込まれており、セキュリティ検査をすり抜けやすい設計となっている。ペイロードはWebブラウザ・パスワードマネージャ・暗号資産ウォレットからのデータ窃取を行うほか、Windows環境ではリモートシェルコマンド実行・キーロギング・ファイルアップロード・AnyDeskを用いたリモートアクセスといった包括的な侵害後機能を備えた完全なインプラントとして機能する。 関連する攻撃活動と背景 本キャンペーンと並行して、UNC1069と呼ばれるグループによるAxiosのnpmパッケージへの汚染も確認されている。Telegram・LinkedIn・Slackを通じた数週間にわたるソーシャルエンジニアリングキャンペーンの後、悪意あるミーティングリンクを通じてWAVESHAPER.V2マルウェアを配布する手口が用いられており、標的となる開発者への接触が組織的かつ段階的に行われていることが窺える。 一連の活動は北朝鮮による外貨獲得および情報収集を目的とした国家レベルの攻撃インフラとして機能しており、オープンソースエコシステムへの信頼を悪用した開発者向けサプライチェーン攻撃が継続的に拡大していることを示している。開発者は使用するパッケージの出所を慎重に確認し、特にロギングやユーティリティ系の軽量パッケージへの依存には注意が必要だ。

April 10, 2026

イラン系ハッカーグループ「Handala」、停戦後も対イスラエルサイバー攻撃継続を宣言

概要 親パレスチナ・親イラン系のハッキンググループ「Handala」が、米国とイスラエルの間で停戦合意が成立したにもかかわらず、米国への攻撃は一時停止するものの、イスラエルへのサイバー攻撃は継続すると宣言し、条件が整えば米国への攻撃も再開する意思を示した。同グループはテヘラン政府とは独立して活動しているとされており、イランの公式な外交的動向に関わらず攻撃を止めるつもりはないとの立場を明確にしている。 確認された攻撃事例 Handalは複数の重大なインシデントへの関与を表明している。医療機器大手Strykerへの侵害については「イラン人児童殺害への報復」と主張しており、さらにFBI長官Kash Patel氏の個人メールアカウントへの不正アクセスも行ったと主張している。また、米国の重要インフラを標的としたPLC(プログラマブルロジックコントローラ)への攻撃や、Microsoft 365環境に対するパスワードスプレー攻撃も報告されている。 重要インフラへの脅威 サイバーセキュリティ専門家は、停戦後に攻撃活動がさらに拡大する可能性を警告している。Nozomi Networksの幹部は、停戦によって「規模と範囲の両面で」サイバー活動が増加すると予測する。主な標的として挙げられているのは、港湾・発電所・水道施設といった社会インフラのシステム、データセンター、そして防衛関連企業だ。PLCへの攻撃は産業制御システムの誤作動や停止を引き起こす可能性があり、物理的な被害にも直結し得る点で特に深刻視されている。 今後の展望 Handalaの宣言は、地政学的な停戦がサイバー空間での対立を収束させるとは限らないことを改めて示している。国家から独立した形で活動するハクティビストグループは、外交交渉の枠外で動くため、従来の国家間合意によって抑制しにくいという課題がある。企業や政府機関には、重要インフラのセキュリティ強化と、パスワードスプレーやPLC悪用に対する防御態勢の見直しが急務となっている。

April 9, 2026

Android 2026年4月セキュリティ更新、Frameworkに権限不要のDoS脆弱性(Critical)を修正

概要 Googleは2026年4月6日(現地時間)、月例のAndroidセキュリティ情報(Android Security Bulletin)を公開した。今月は比較的小規模な内容ながら、Frameworkコンポーネントに深刻度「Critical」(最高レベル)の脆弱性が含まれており、早急なパッチ適用が推奨されている。トピックファイルによると、この脆弱性はCVE-2026-0049として追跡されており、Android 14・15・16が影響を受ける。 脆弱性の詳細 今回のセキュリティ更新は、パッチレベル「2026-04-01」と「2026-04-05」の2段階で構成されている。 **パッチレベル「2026-04-01」**では、Frameworkコンポーネントの脆弱性1件が修正される。この脆弱性は追加の権限を必要とせずにローカルからサービス拒否(DoS)攻撃に悪用できる、いわゆるゼロインタラクション脆弱性であり、深刻度は最高レベルのCriticalと評価されている。 **パッチレベル「2026-04-05」**は上記の修正に加え、以下のサードパーティコンポーネントの脆弱性を含む完全版パッチとなっている: Google のコンポーネント:1件(High) NXP のコンポーネント:1件(High) STMicroelectronics のコンポーネント:1件(High) Thales のコンポーネント:1件(High) 今月の修正を完全に適用するためには、「2026-04-05」のパッチレベルへの更新が必要となる。 対応と推奨事項 影響を受けるのはAndroid 14・15・16で、現在サポートされている主要バージョンが広く対象となっている。ユーザーはデバイスメーカーからセキュリティアップデートが提供され次第、速やかに適用することが強く推奨される。なお、今回の修正はProject Mainline(Google Playシステム更新)経由での配信は含まれておらず、通常のOTAアップデートを通じて適用される形となっている。

April 9, 2026

Docker EngineのAuthZプラグインバイパス脆弱性CVE-2026-34040、CVSS 8.8でホスト乗っ取りの恐れ

概要 Docker Engineに高深刻度の認可バイパス脆弱性(CVE-2026-34040、CVSSスコア8.8)が発見され、2026年4月8日に公開された。本脆弱性はDocker Engineの認証プラグイン(AuthZ)フレームワークに存在し、攻撃者がセキュリティ制御を回避してホストシステムへのフルアクセスを取得できる。修正済みバージョンはDocker Engine 29.3.1で、影響を受けるユーザーへの早急なアップデートが推奨されている。 技術的な詳細 本脆弱性の根本原因は、2024年7月に公開された既知の脆弱性CVE-2024-41110に対するパッチが不完全であったことにある。攻撃メカニズムは、1MBを超えるリクエストボディを持つAPIリクエストを細工して送信することで、AuthZプラグインによる検査が実行される前にリクエストボディが除去(drop)され、Dockerデーモンがそのまま処理してしまうというものだ。これにより、攻撃者はrootファイルシステムへのアクセス権を持つ特権コンテナを作成できる。本脆弱性はCyera Research LabsのVladimir Tokarevらによって発見された。 影響範囲 本脆弱性を悪用することで、攻撃者はAWSキー・SSH認証情報・Kubernetes設定などの機密情報を窃取し、クラウドアカウントの侵害につなげることが可能だ。また、コンテナ化されたAIコーディングエージェントへのプロンプトインジェクション攻撃を経由した自律的な悪用も想定されており、影響範囲はホストシステム全体に及ぶ。 緩和策とアップデート 根本的な解決策はDocker Engine 29.3.1へのアップデートだ。即時のアップデートが困難な場合の緩和策として、以下が推奨されている。 ボディ検査のみに依存するAuthZプラグインの使用を避ける 最小権限の原則によるDocker APIアクセスの制限 Dockerをrootlessモードで運用し、特権「root」をホストの非特権UIDにマッピングする フルrootless展開が困難な場合は --userns-remap オプションを使用する

April 9, 2026

ロシア国営通信Rostelecomが大規模DDoS攻撃を受け、約30都市でネットサービスが停止

概要 2026年4月6日(月)夜、ロシアの国営通信大手Rostelecomのネットワークに対して「大規模な」分散型サービス拒否(DDoS)攻撃が行われ、全国約30都市でインターネットサービスが一時的に停止した。影響を受けたサービスは広範にわたり、オンラインバンキング、政府サービスポータルの「Gosuslugi」、動画プラットフォームの「Rutube」、ゲームプラットフォームの「Steam」、さらに各種銀行サービスが利用不能となった。 Rostelecomは国営メディアに対し、攻撃は迅速に封じ込められたと説明。サービス中断はDDoS攻撃を緩和するために導入した緊急フィルタリング措置の副産物であると述べた。一部のユーザーは、政府が承認した「ホワイトリスト」に登録されたサービスのみにアクセスできる状態だったと地元メディアに報告しており、インターネット遮断時に生じるロシア独自の制限的なネット環境が改めて浮き彫りとなった。 背景と影響 今回の攻撃は、ロシアが国内インターネットインフラの「主権化」を推進している文脈で発生した。ロシアは「Runet(ルーネット)」と呼ばれる独自のインターネット基盤の整備を進めており、グローバルなウェブから独立して国内ネットワークを運用できる体制の構築を目指している。今回のDDoS攻撃によるサービス停止はその脆弱性を露わにした形となった。 また、今回の事態は先週発生した別の障害の直後に起きたものでもある。先週の障害ではモスクワを含む複数地域でカード決済・ATM利用・モバイルバンキングが数時間にわたって利用不能となった。その原因についてはいまだ不明であり、一部メディアはIPアドレスフィルタリングを含む政府のネットブロック施策との関連を示唆し、別の報道ではロシア最大手銀行Sberbankの内部障害の可能性も指摘している。火曜日の時点でも一部の政府系ウェブサイトへのアクセス障害が続いていることが、ロシアのインターネット監視サービスによって確認されている。

April 9, 2026

Anthropicがサイバーセキュリティに卓越した汎用モデル「Claude Mythos Preview」を限定公開——悪用リスクから一般提供を見送り

概要 Anthropicは2026年4月7日、サイバーセキュリティ分野で卓越した能力を発揮する新AIモデル「Claude Mythos Preview」のプレビュー版を発表した。同モデルは同社の新サイバーセキュリティイニシアティブ「Project Glasswing」の一環として開発されたものだが、その能力の高さゆえに悪意ある攻撃者に利用された場合の危険性を考慮し、Apple・Google・Microsoft・Nvidia・AWSといった限られたハイプロファイルな企業パートナーへの提供にとどめている。一般公開は当面見送られた。 高いサイバーセキュリティ能力と悪用リスク Claude Mythos Previewは「防御的なサイバーセキュリティ業務」を主な用途として設計されており、既存のモデルを大きく上回る脆弱性検出・解析能力を持つとされる。Anthropicは同モデルのハッキング能力が非常に強力であると認めており、もし悪用されれば大規模なサイバー攻撃を可能にするリスクがあると説明している。このような判断から、同社は一般向けのリリースを控え、信頼できるセキュリティ研究パートナーに限定した形でのプレビュー提供という慎重なアプローチを選択した。 Project Glasswingとサイバーセキュリティへの取り組み Project Glasswingは、AIを活用したサイバーセキュリティ研究の加速を目的としたAnthropicの取り組みである。ソフトウェアの脆弱性を自動的に発見・分析することで、企業や研究機関がセキュリティ上の問題を攻撃者より先に修正できるよう支援することが狙いだ。限定パートナーにはApple・Google・Microsoft・Nvidia・AWSのほか、Broadcom・Cisco・CrowdStrike・Palo Alto Networksなど計12社が名を連ね、さらに約40の組織にもアクセスが提供されている。各パートナーはMythosを活用した防御的セキュリティ研究の実施が期待されている。 今後の展望 Anthropicは今後、Mythos Previewで得られた知見やフィードバックをもとに安全策を強化しつつ、提供範囲の段階的な拡大を検討するとみられる。AIの能力が高度化するなかで、強力なモデルをいかに安全かつ責任ある形で展開するかという課題は、業界全体にとって重要な問いとなっている。同社の慎重な姿勢は、AIの安全性を優先するAnthropicの基本方針を改めて示すものといえる。

April 8, 2026

FlowiseのCVSS 10.0 RCE脆弱性(CVE-2025-59528)が実際の攻撃で悪用、1万2000以上のインスタンスが危険にさらされる

概要 AIエージェント構築プラットフォーム「Flowise」において、CVSSスコア10.0(最高深刻度)のリモートコード実行(RCE)脆弱性CVE-2025-59528が実際の攻撃で悪用されていることが確認された。2025年9月にパッチが公開されてから6か月以上が経過しているにもかかわらず、2026年4月時点でも多数のインスタンスが脆弱なバージョンのまま運用されており、インターネット上に公開された1万2000〜1万5000件のインスタンスがリスクにさらされている状態だ。攻撃はVulnCheckのCanaryネットワークによって検出され、単一のStarlinkのIPアドレスから発信されていることが確認されている。 脆弱性の技術的詳細 この脆弱性は、Flowiseの「CustomMCP」ノードにおけるコードインジェクションの欠陥に起因する。攻撃者はmcpServerConfig入力値を適切な検証なしに評価・実行する処理を悪用し、サーバー上で任意のJavaScriptコードを実行できる。Node.jsの危険なモジュール—child_processによるOSコマンドの実行やfsモジュールによるファイルシステムへの無制限アクセス—が利用可能となるため、機密データの窃取やシステムの完全な乗っ取りが可能となる。攻撃にはAPIトークンのみが必要であり、特別な権限を持つアカウントは不要だ。脆弱なバージョンはFlowise 3.0.6未満のすべてのバージョンであり、修正版は同年9月にリリースされた3.0.6、そして最新の推奨バージョンは3.1.1となっている。 攻撃の背景と連鎖するリスク CVE-2025-59528はFlowiseにおいて実際に悪用が確認された3件目の脆弱性となる。すでにCVE-2025-8943(CVSS 9.8)とCVE-2025-26319(CVSS 8.9)も攻撃に利用されており、このプラットフォームが継続的な標的となっていることを示している。Flowiseはローカルまたはクラウド上にセルフホストされるオープンソースツールのため、企業のセキュリティポリシーが行き届かないまま個人や小規模チームが公開インターネット上に展開しているケースが多い。パッチリリースから長期間が経過しても多数のインスタンスが未更新のまま残っている現状は、AIツールのセキュリティアップデート管理に組織的な課題があることを浮き彫りにしている。 推奨される対応 Flowiseを利用している組織は、直ちにバージョン3.1.1(最低でも3.0.6)へのアップデートを実施することが最優先事項となる。業務上の必要がない場合はインスタンスをインターネットに直接公開しないよう構成を見直し、不審なJavaScript実行パターンやアクセスログを確認して侵害の痕跡がないかを調査することも重要だ。併せて、CVE-2025-8943およびCVE-2025-26319への対応状況も確認し、使用中のAPIトークンの棚卸しと不要なトークンの無効化も推奨される。

April 8, 2026

QilinとWarlockランサムウェアがBYOVD手法で300以上のEDRツールを無効化、Cisco TalosとTrend Microが解析

概要 QilinおよびWarlockという2つのランサムウェアグループが、BYOVD(Bring Your Own Vulnerable Driver)と呼ばれる手法を用いて、標的環境に存在する300以上のEDR(エンドポイント検知・応答)ツールを無効化していることが判明した。Cisco TalosはQilinの攻撃手法を、Trend MicroはWarlock(「Water Manaul」とも追跡)の活動をそれぞれ調査・公開した。BYOVDはWindowsカーネルレベル(Ring-0)で動作する正規署名済みの脆弱なドライバーを悪用する手法であり、ユーザーモードで動作するセキュリティ製品では検知・阻止が困難な点が問題視されている。 現在、Qilinは最も活発なランサムウェアグループの一つとなっており、2025年に日本国内で発生した134件のランサムウェア事案のうち22件(約16.4%)に関与しているとされる。また、初期侵害から暗号化実行までの潜伏期間は平均約6日間とされており、防御側に対応の余地はあるものの、その間に検知できなければ甚大な被害が生じるリスクがある。 Qilinの攻撃チェーン Cisco TalosのTakahiro TakedaとHolger Unterbrinkによると、Qilinの攻撃はDLLサイドローディングを起点とする多段階の手法を採用している。まずmsimg32.dllという悪意のあるDLLが展開され、これが第1ステージのPEローダーとして機能する。このローダーは実行環境を整え、暗号化された第2ステージのペイロードを内包しており、すべてインメモリで動作することで検知を回避する。 具体的には以下の順序で処理が進む。 EDR製品が利用するユーザーモードフックを無効化し、APIコールの監視を妨害する Windowsのイベントトレーシング(ETW)によるログ生成を抑制する EDRキラーコンポーネントがEDRの監視コールバックを登録解除し、プロセス終了を妨げられない状態を作る 脆弱なドライバーrwdrv.sys(ThrottleStop.sys のリネーム版)とhlpdrv.sysをロードし、300以上のEDRドライバーに関連するプロセスを強制終了する ランサムウェアの本体をインメモリで実行する なお、rwdrv.sysとhlpdrv.sysは以前AkiraおよびMakopランサムウェアのBYOVD攻撃でも使用された実績があり、複数の脅威アクター間でツールやインフラが共有されている可能性を示唆している。 Warlock(Water Manaul)の攻撃手法と更新されたツールキット Trend Microが追跡するWarlockは、パッチ未適用のMicrosoft SharePointサーバーを初期侵入経路として使用する点が特徴的だ。2026年1月にはツールキットが更新され、従来使用していたBYOVDドライバーgoogleApiUtil64.sysがNSecKrnl.sys(NSec製)に置き換えられた。このドライバーはカーネルレベルでセキュリティ製品を終了させるために使用される。 Warlockの攻撃で観測されたツールキットには以下が含まれる。 TightVNC — 永続的なリモートコントロール PsExec — ラテラルムーブメント(横移動) RDP Patcher — 複数同時RDPセッションの有効化 Velociraptor — C2通信 Visual Studio Code + Cloudflareトンネル — C2通信のトンネリング Yuze — イントラネット侵入・リバースプロキシ Rclone — データ窃取 推奨される対策と今後の展望 Trend MicroはBYOVD攻撃への対策として、「基本的なエンドポイント保護から、厳格なドライバー管理とカーネルレベル活動のリアルタイム監視への移行が不可欠」と強調している。具体的な推奨策としては、信頼できる発行元のドライバーのみに限定したインストールポリシーの適用、ドライバーインストールイベントのリアルタイム監視、SharePointなど公開サーバーへの迅速なパッチ適用、カーネル整合性の監視などが挙げられる。 BYOVDはランサムウェアグループ間でのツール共有と組み合わさって急速に普及しており、企業のセキュリティ検知基盤そのものを無力化するアプローチが標準的な攻撃戦術として確立されつつある。防御側には、エンドポイント保護のレイヤーをカーネル監視・ドライバーガバナンスまで拡張する取り組みが求められている。

April 8, 2026

Windowsゼロデイ「BlueHammer」のPoCが流出——研究者がMicrosoftの対応に不満を爆発

概要 「Chaotic Eclipse」(別名「Nightmare-Eclipse」)として知られるセキュリティ研究者が2026年4月3日、Windowsのローカル権限昇格(LPE)ゼロデイ脆弱性「BlueHammer」の概念実証(PoC)コードをGitHub上で公開した。公開の動機はMicrosoftセキュリティレスポンスセンター(MSRC)の脆弱性報告への対応に対する強い不満であると研究者自身が述べている。Microsoftは現時点で公式パッチを提供していないため、未パッチのまま脆弱性が野ざらしになる危険な状況が生じている。 技術的な詳細 BlueHammerはTOCTOU(Time-of-Check to Time-of-Use)競合状態とパス混乱(Path Confusion)を組み合わせた手法によるLPE脆弱性だ。攻撃に成功すると、SYSTEM権限または管理者権限の取得、SAM(Security Account Manager)データベースへのアクセス、さらにはシステムの完全掌握が可能になる。ローカルアクセスを持つ攻撃者が前提条件であり、リモートからの単独悪用には適さないが、侵害済み環境での権限昇格ステップとして非常に有効な攻撃手法となる。 セキュリティアナリストのWill Dormannはエクスプロイトの動作を実際に検証した。Windows Serverプラットフォームでは完全なSYSTEMアクセスではなく非管理者から管理者への昇格にとどまるなど信頼性に課題があると指摘したが、一般的なWindowsシステムでは権限昇格に成功することを確認している。 Microsoftの対応と緩和策 Microsoftは「協調的な脆弱性開示(Coordinated Vulnerability Disclosure)を支持する」とコメントするにとどまり、パッチリリースの具体的な時期は明らかにしていない。研究者は「Microsoftをはったりで脅したのではない、私はまたやっている(公開する)」と述べており、開示プロセスへの不信感を露わにしている。 公式パッチが提供されるまでの緩和策として、セキュリティ専門家はローカルアクセスの厳格な監視と、認証情報の適切な管理(クレデンシャルハイジーン)の徹底を推奨している。組織は最小権限の原則を再確認し、不審なローカルプロセスの実行を検知できる体制を整えることが重要となる。

April 7, 2026