OpenAIがEUにサイバーセキュリティモデルのアクセスを提供、AnthropicはMythosのEU展開を保留

概要 OpenAIは2026年5月11日、最新のサイバーセキュリティ特化AIモデル「GPT-5.5-Cyber」について、欧州連合(EU)の政府機関およびセキュリティ関連組織向けにプレビューアクセスを提供すると発表した。これは、AIを安全保障・サイバー防衛分野に活用したいとするEU側の要求に応えた動きであり、米欧間のAI技術協力をめぐる交渉における大きな前進と位置付けられる。一方で、AnthropicはAIモデル「Mythos」のEUへのアクセス提供について引き続き保留姿勢を維持しており、EU規制当局との協議が継続していることが明らかとなっている。 企業間の対応姿勢の違い OpenAIとAnthropicの対照的な姿勢は、EU市場への展開戦略および規制対応の考え方における違いを示している。OpenAIはEUとの積極的な協力路線を選択し、サイバーセキュリティ分野のモデルを先行提供することでEU規制当局との信頼関係を構築しようとしている。一方Anthropicは、Mythosの公開後もEUへのプレビューアクセス提供に合意していない。欧州委員会との協議は4〜5回行われたものの、OpenAIとの交渉と比べて「異なる段階」にあるとされ、Anthropic自身からの説明は明らかになっていない。 EU規制環境とAI安全保障活用をめぐる背景 EUはフロンティアAIモデルがサイバー攻撃の加速や重要インフラへのリスクをもたらす可能性に懸念を強めており、米国のAI企業に対して透明性の確保や規制当局による事前評価の機会を求めている。OpenAIによるGPT-5.5-CyberのEUプレビュー提供は、こうした規制要件に対応しながら市場拡大を図る戦略の一環とみられる。今後、他のAI企業がどのような形でEU規制環境に適応していくかが、欧州におけるAI競争の行方を左右する重要な要素となりそうだ。

May 12, 2026

npm CLI 11.xが「minimumReleaseAge」とOIDC一括設定を導入、サプライチェーン攻撃対策を強化

概要 npm CLI 11.xの最新リリースで、サプライチェーンセキュリティを高める2つの機能が追加された。1つ目はminimumReleaseAge設定で、新しく公開されたパッケージバージョンのインストールを任意の期間遅延させることで、悪意あるパッケージへの露出リスクを低減する。2つ目はOIDCトラステッドパブリッシングの一括設定機能で、npm trustコマンドを使って複数パッケージのOIDC設定を一度に構成できるようになった。 minimumReleaseAgeの仕組みと背景 minimumReleaseAgeは、公開直後のパッケージに依存する攻撃手法、すなわち悪意あるバージョンを公開してCI/CDパイプラインが自動的にインストールするまでの短い時間を狙う手法に対抗するものだ。インストールを数時間〜数日遅延させることで、セキュリティスキャナーやコミュニティによる検出の機会を確保できる。 この機能は他のJavaScriptパッケージマネージャーにも急速に広まっており、pnpm v10.16、Yarn 4.10.0(npmMinimalAgeGate)、Bun v1.3がそれぞれ同様の機能を実装済みだ。記事では「リリース遅延はJavaScriptパッケージマネージャー全体での基本的な期待になりつつある」と指摘しており、業界標準の防御制御として定着しつつある状況を示している。 ただし、現時点のnpm版には除外メカニズムが備わっておらず、内部パッケージと外部依存関係を区別できない。pnpmが持つ除外ルール機能の追加をユーザーが要望しており、今後の対応が注目される。 追加されたその他のセキュリティ機能 npm CLI 11.10.0では--allow-gitフラグも追加された。Git依存関係の.npmrcファイルは予期しないコード実行を引き起こす可能性があるため、npm install --allow-git=noneと設定することでGit依存関係の実行を制限できる。この制限はnpm CLI v12でデフォルトになる見通しだ。 OIDC一括設定機能は、npmがクラシックな公開トークンを長期的に廃止する方針の一環として追加された。npm trustコマンドで複数パッケージのOIDC設定をまとめて管理できるようになり、CI/CDパイプラインでのトークン管理の手間が軽減される。セキュリティ機能がパッケージマネージャーレベルで直接実装される流れは今後も続くと予想される。

May 11, 2026

Apache mod_http2のdouble-free脆弱性CVE-2026-23918、CVSS 8.8でDoS・RCEのリスク——即時パッチ適用を推奨

概要 Apache HTTP Server 2.4.66 の mod_http2 モジュールに、深刻なメモリ管理の欠陥(CVE-2026-23918)が発見された。CVSSスコアは 8.8(重大)と評価されており、認証不要でサービス拒否(DoS)攻撃を引き起こせるほか、条件次第ではリモートコード実行(RCE)につながる可能性もある。Apacheプロジェクトは2026年5月4日に修正済みバージョン 2.4.67 をリリースしており、影響を受けるシステムへの即時アップデートが強く推奨されている。脆弱性の発見者は Striga.ai 共同創設者の Bartlomiej Dmitruk 氏と ISEC.pl の研究者 Stanislaw Strzalkowski 氏。 技術的詳細 本脆弱性の根本原因は、mod_http2 の h2_mplx.c に存在するストリームクリーンアップパスの実装ミスにある。攻撃者が HEADERS フレームの直後に RST_STREAM(非ゼロエラーコード付き)を送信すると、同一ストリーム上で on_frame_recv_cb と on_stream_close_cb という 2 つの nghttp2 コールバックが順に発火する。両コールバックがいずれも h2_mplx_c1_client_rst → m_stream_cleanup を呼び出すことで、同一の h2_stream ポインタが内部クリーンアップ配列へ 2 度プッシュされる。その後、c1_purge_streams が配列を反復処理して h2_stream_destroy を呼び出すと、2 度目の呼び出し時に既解放のメモリ領域へアクセスするdouble-freeが発生する。 DoS 攻撃は「1 本の TCP 接続と 2 フレームのみ、認証・特殊ヘッダー・特殊 URL 一切不要」という極めてシンプルな条件で引き起こせる。ワーカープロセスがクラッシュすると Apache は自動再起動するが、クラッシュしたワーカーへのリクエストは破棄されるためサービス断が生じる。 RCE については、Apache Portable Runtime(APR)が mmap アロケータを使用するシステム——Debian 系ディストリビューションや公式 httpd Docker イメージがこれに該当——でのみ成立する。実証実験では、解放済みメモリアドレスへ偽の h2_stream 構造体を配置し、プールクリーンアップ関数を system() にポイントさせることで、数分以内にコード実行に成功している。ASLR が有効な環境でも Apache スコアボードが固定アドレスに配置されることを悪用した点が技術的な肝となっている。 ...

May 10, 2026

IvantiのEPMM、RCEゼロデイ脆弱性CVE-2026-6973が悪用中—12.8.0.0以前の全ユーザーに緊急パッチ適用を呼びかけ

概要 Ivantiは2026年5月7日、Endpoint Manager Mobile(EPMM)に存在するリモートコード実行(RCE)の脆弱性CVE-2026-6973がゼロデイ攻撃として実際に悪用されていると警告した。この脆弱性は不適切な入力検証に起因するもので、管理者権限を持つリモート攻撃者がシステム上で任意のコードを実行できる。IvantiはEPMMバージョン12.8.0.0以前のすべてのユーザーに対し、直ちにパッチの適用を促している。修正済みバージョンは12.6.1.1、12.7.0.1、12.8.0.1。米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)はこれまでにIvanti製品の脆弱性33件を実際の攻撃で悪用されたものとして記録しており、政府機関への影響も懸念される。 脆弱性の技術的詳細 CVE-2026-6973は重大度「高(High)」に分類されるRCE脆弱性で、攻撃には管理者レベルの認証情報が必要とされる。悪用が確認されているものの、開示時点では「非常に限定的な悪用」にとどまっているとされる。今回のセキュリティアップデートでは、CVE-2026-6973のほかに4件の高深刻度の脆弱性も同時に修正されている:CVE-2026-5786・CVE-2026-5787・CVE-2026-5788・CVE-2026-7821。これらは権限昇格、証明書スプーフィング、不正アクセスを可能にするものだが、現時点での野外悪用は確認されていない。Ivantiはパッチ適用に加えて、管理者アカウントの確認と認証情報のローテーションも推奨している。 インターネット上の露出状況 セキュリティ企業Shadowserverの調査によると、インターネットに公開されているEPMMインスタンスが850件以上確認されており、地理的にはヨーロッパに508件、北米に182件が集中している。これらの露出したインスタンスが攻撃者にとっての標的となる可能性が高く、パッチ未適用の組織にとって早急な対応が求められる状況だ。 Ivanti製品の脆弱性問題と今後の対応 今回のCVE-2026-6973は、Ivanti製品が抱える継続的な脆弱性問題の最新事例に過ぎない。CISAの記録によれば、これまでにIvantiの製品に関する脆弱性33件が実際の攻撃での悪用が確認されており、そのうち12件はランサムウェア攻撃に利用されている。2026年1月にIvantiは2件のコード注入ゼロデイ(CVE-2026-1281・CVE-2026-1340)を開示しており、4月にはCISAがCVE-2026-1340について連邦政府機関へ4日以内のパッチ適用を義務付けていた。EPMMを利用している組織は最新のパッチを直ちに適用するとともに、管理者アカウントの認証情報ローテーションを実施し、不審なアクセスログを精査することが強く推奨される。

May 9, 2026

Linuxカーネルの新ゼロデイ「Dirty Frag」、競合状態不要で主要ディストリビューションのroot奪取が可能に

概要 セキュリティ研究者のHyunwoo Kim氏は2026年5月7日、Linuxカーネルに存在する新たなローカル権限昇格(LPE)脆弱性「Dirty Frag」を公開した。この脆弱性はカーネルの暗号アルゴリズムインターフェース(algif_aead)に約9年前から潜んでいたとされており、Ubuntu 24.04.4、RHEL 10.1、CentOS Stream 10、AlmaLinux 10、openSUSE Tumbleweed、Fedora 44など主要なLinuxディストリビューションすべてに影響する。権限を持たないローカルユーザーがroot権限を取得できるPoC(概念実証コード)もすでに公開されており、早急な対応が求められる状況だ。なお、今回の早期開示はKim氏ではなく第三者が独自にエクスプロイトを公開したことでエンバーゴが破られたことによるものとされている。 技術的な詳細 Dirty Fragは、2つの独立したカーネル脆弱性を連鎖させることで成立する。 xfrm-ESP Page-Cache Write(CVE-2026-43284):2017年1月のコミットに由来するIPSecサブシステムの欠陥 RxRPC Page-Cache Write(CVE-2026-43500):2023年6月に導入されたRxRPCサブシステムの欠陥 2つの脆弱性を組み合わせることで、カーネルが所有していないメモリ領域へのページキャッシュ書き込みプリミティブが実現する。Dirty PipeやCopy Failと同じバグクラスに属するものの、タイミングウィンドウに依存しない決定論的なロジックバグであることが最大の特徴だ。競合状態(race condition)を必要とせず、失敗時にカーネルパニックを引き起こさないため、攻撃の信頼性が非常に高い。また、Copy Failに対して有効とされてきたalgif_aeadのブロックリスト緩和策を適用済みの環境でも、この連鎖攻撃は依然として機能することが確認されている。 パッチと緩和策 CVE-2026-43284(xfrm-ESP)はコミット f4c50a4034e6 で修正されたが、CVE-2026-43500(RxRPC)については公開時点でパッチが提供されていない。各ディストリビューションの公式パッチを待つ間の暫定的な緩和策として、脆弱なカーネルモジュールを無効化する方法が案内されている。 sudo sh -c "printf 'install esp4 /bin/false\ninstall esp6 /bin/false\ninstall rxrpc /bin/false\n' > /etc/modprobe.d/dirtyfrag.conf" ただし、このモジュール無効化はIPsec VPNおよびAFS分散ファイルシステムを利用不能にする副作用がある。IPsecを業務で使用している環境では影響を十分に評価したうえで対応する必要がある。ユーザーは各ディストリビューターのセキュリティアドバイザリを監視し、正式なカーネルアップデートが公開され次第、速やかに適用することが推奨される。

May 9, 2026

Linux向けQuasar RATの新亜種、開発者認証情報を窃取しソフトウェアサプライチェーンへの侵害を狙う

概要 Trend Microの研究者が、以前には報告されていなかったLinux向けマルウェア「Quasar Linux RAT(QLNX)」を新たに発見した。このリモートアクセス型トロイの木馬は、開発者やDevOps環境を主要ターゲットとしており、パッケージレジストリやクラウドインフラへのアクセス権を持つ認証情報を幅広く窃取することを目的としている。攻撃者はこれらの認証情報を悪用してソフトウェアの発行パイプラインへの不正アクセスを確立し、悪意のあるコードを正規パッケージに混入させるサプライチェーン攻撃を試みる。 窃取対象となる認証情報と機能 QLNXが標的とする認証情報の範囲は非常に広く、開発環境に存在する主要なシークレット情報を網羅している。具体的には .npmrc(NPMレジストリ)、.pypirc(PyPI)、.git-credentials(Git)、.aws/credentials(AWS)、.kube/config(Kubernetes)、.docker/config.json(Docker)、.vault-token(HashiCorp Vault)、Terraform認証情報、GitHub CLIトークン、および .env ファイルが対象となっている。58種類のコマンドをサポートする本マルウェアは、認証情報収集のほかにもキーロギング、ファイル操作、クリップボードモニタリング、ネットワークトンネリングといった多彩な事後侵害機能を備え、ホスト全体の完全な制御を可能にする。 高度な隠蔽・永続化機構 QLNXが特に危険視される理由のひとつが、その検出困難な隠蔽・永続化技術にある。マルウェアはメモリ上でのファイルレス操作を実行するほか、カーネルスレッド(kworker、ksoftirqd)に偽装してプロセスを隠蔽する。さらにeBPF(Extended Berkeley Packet Filter)を活用したユーザーランドとカーネルレベルを組み合わせた二重層のrootkitアーキテクチャを採用しており、標準的な監視ツールからプロセス・ファイル・ネットワークポートを隠す。永続化手法も7種類に及び、systemd、crontab、.bashrcへのシェルインジェクションを使用するほか、PAM(Pluggable Authentication Module)のインラインフックを通じてプレーンテキスト認証情報を傍受する機能も持つ。C2通信にはRaw TCP、HTTPS、HTTPの複数プロトコルを使い分ける。 サプライチェーンへの影響と対策の重要性 パッケージメンテナーの開発環境にQLNXが侵入した場合、攻撃者はNPMやPyPIなどの発行パイプラインを掌握し、多数のダウンストリームプロジェクトに影響を及ぼす悪意あるパッケージを配布できる状態となる。初期侵入ベクトルはいまだ特定されていないものの、一度感染するとその影響はオープンソースエコシステム全体に波及しうる。開発者はシークレット管理ツールの活用や定期的な認証情報のローテーション、異常なプロセスや通信の監視強化を通じてリスクを低減することが求められる。

May 9, 2026

PAN-OSのゼロデイRCE脆弱性CVE-2026-0300、4月9日から約1ヶ月間にわたり国家支援型攻撃者に悪用

概要 Palo Alto Networksは2026年5月6〜7日、PAN-OSのUser-ID認証ポータル(Captive Portal)に存在するバッファオーバーフロー脆弱性CVE-2026-0300を公開した。CVSSスコアは9.3/8.7と評価されており、認証なしに特別細工したパケットを送信することでroot権限での任意コード実行が可能となる。影響を受けるのはインターネットに公開されたPA-SeriesおよびVM-Seriesファイアウォールで、Prisma Access・Cloud NGFW・Panoramaは対象外だ。CISAはこの脆弱性をKnown Exploited Vulnerabilities(KEV)カタログに追加し、連邦政府機関に対して2026年5月9日深夜までに対処するよう命じた。 悪用の経緯と攻撃者の手口 Palo Alto Networksの調査によれば、最初の悪用試行は2026年4月9日に観測された。当初の試みは失敗に終わったが、4月16日には攻撃者がリモートコード実行に成功し、nginxワーカープロセスへのシェルコード注入を達成した。さらに4月29日には2台目のデバイスにも追加ペイロードが展開された。公開は5月6〜7日であるため、ゼロデイとして約1ヶ月間悪用され続けたことになる。 攻撃者はPalo Alto NetworksによりCL-STA-1132というクラスターとして追跡されており、国家支援型の脅威アクターと疑われている。使用されたツールはEarthWormとReverseSocks5で、これらは「制限されたネットワークを横断する隠密通信路の確立」とSOCKS v5プロキシ機能の実現に用いられた。過去にChina nexusグループとの関連が報告されているオープンソースツールであることも注目点だ。侵害後にはActive Directoryの列挙が行われたほか、カーネルクラッシュメッセージの消去・nginxクラッシュログの削除・コアダンプの除去といった痕跡隠滅工作も確認されている。複数週にわたる断続的なセッションで低い活動ノイズを維持し、検知を回避する高度な手口が見られた。 影響範囲とパッチ提供スケジュール Shadowserver Foundationのデータによると、インターネット上に公開されているPAN-OS VM-Seriesファイアウォールは5,400台以上に上り、アジアに2,466台、北米に1,998台が集中している。パッチは2段階で提供予定で、第1波(2026年5月13日頃)では12.1.4-h5・11.2.7-h13・11.2.10-h6・11.1.4-h33・11.1.6-h32・11.1.10-h25・11.1.13-h5・10.2.10-h36・10.2.18-h6が、第2波(5月28日頃)では12.1.7・11.2.4-h17・11.2.12・11.1.7-h6・11.1.15・10.2.7-h34・10.2.13-h21・10.2.16-h7が順次リリースされる予定だ。 推奨される緩和策 パッチ適用までの暫定対策として、Palo Alto Networksは以下を強く推奨している。まず、User-ID認証ポータルへのアクセスを信頼済みゾーンのみに制限するか、不要な場合は機能を無効化することが最優先だ。加えて、信頼されていない入力ポイントのインターフェース管理プロファイルでResponse Pagesを無効化することも有効とされる。Advanced Threat Preventionのライセンス保有者は、脅威コンテンツバージョン9097-10022のThreat ID 510019を有効化することで追加の防御が得られる。CISAの命令を踏まえ、特に政府機関・重要インフラ事業者は対応を急ぐ必要がある。

May 9, 2026

ShinyHuntersがCanvas LMSを大規模侵害、約330校のログインポータルを改ざんし身代金を要求

概要 サイバー犯罪グループ「ShinyHunters」が、米国の学校・大学で広く使用されている学習管理システム(LMS)「Canvas」(開発元:Instructure)を標的にした大規模な侵害・恐喝キャンペーンを実施した。攻撃者はInstructureのシステムの脆弱性を突き、約330の教育機関のCanvasログインポータルを改ざん。「影響を受けた学校がデータの公開を阻止したい場合は、サイバーアドバイザリー企業に相談した上で、私たちに非公開で連絡してほしい」という警告メッセージを約30分間表示させた。改ざんはWebインターフェースだけでなく、Canvasモバイルアプリにも及んだ。身代金支払いの期限は2026年5月12日と設定されており、期限内に交渉がなければ盗んだデータを公開すると脅している。 流出したデータと被害規模 ShinyHuntersは今回の改ざん前から、8,809校・大学・教育プラットフォームから合計2億8,000万件にのぼる学生・職員レコードをすでに窃取したと主張しており、その規模の大きさが際立つ。流出したとされるデータには、ユーザーレコード、プライベートメッセージ、履修情報、Canvasのデータエクスポート機能やAPIを通じてアクセスされた各種情報が含まれるとされている。ユーザーレコードや履修情報など、学生・職員に関する個人情報が大量に流出しているとみられ、フィッシング詐欺などへの二次被害が懸念されている。 ShinyHuntersの手口と背景 ShinyHuntersは2018年から活動するサイバー犯罪グループで、SaaS環境、とりわけSalesforceを標的にすることで知られる。これまでにGoogle、Cisco、PornHub、Match Groupなどを被害企業として名乗りを上げており、過去には大規模なデータ侵害を繰り返してきた実績がある。攻撃手法としては、SSOプラットフォームを狙ったボイスフィッシング(ビッシング)やデバイスコードビッシングを用いて認証トークンを詐取し、接続された企業サービスを乗っ取る手口が特徴的だ。 対応状況 Instructureは攻撃を受けてCanvasをオフラインにし、対応にあたっている。BleepingComputerがInstructureに対してコメントや通知の取り組みについて問い合わせたが、記事執筆時点では返答がなかったとされる。影響を受けた教育機関や学生・教職員は、フィッシング被害への警戒を高めるとともに、パスワードの変更や不審な連絡への注意が求められる。

May 9, 2026

DAEMON Tools公式インストーラーがサプライチェーン攻撃でバックドア配布、100か国以上に影響

概要 Kasperskyの研究者は2026年5月、広く普及しているWindowsの仮想ドライブ管理ツール「DAEMON Tools」の公式インストーラーがサプライチェーン攻撃によって改ざんされていたことを明らかにした。攻撃は2026年4月8日以降に開始され、バージョン12.5.0.2421〜12.5.0.2434のLiteエディションが配布するインストーラーに悪意のあるコードが混入した。改ざんされたファイルは正規のデジタル証明書で署名されていたため、一般的なセキュリティチェックをすり抜けることができた。影響は100か国以上に及び、数千件の感染が試みられたとされる。 技術的な詳細 攻撃者は DTHelper.exe、DiscSoftBusServiceLite.exe、DTShellHlp.exe の3つのバイナリを改ざんした。システム起動時にこれらの悪意あるバイナリが起動すると、攻撃開始の12日前(2026年3月27日)に登録されたC2ドメイン env-check.daemontools[.]cc へHTTP GETリクエストを送信し、cmd.exe 経由でシェルコマンドを実行する。 マルウェアの感染チェーンは多段階構造になっている。第1段階の envchk.exe(.NET製)はホスト名、MACアドレス、実行中プロセス、インストール済みソフトウェア、システムロケールなどの詳細な端末情報を収集する。第2段階の cdg.exe/cdg.tmp はシェルコードローダーとして機能し、ペイロードを復号して軽量バックドアを起動する。さらに標的を絞った攻撃では「QUIC RAT」と呼ばれる高機能なリモートアクセスツール(RAT)が展開される。QUIC RATはHTTP、UDP、TCP、WSS、QUIC、DNS、HTTP/3といった複数のC2通信プロトコルをサポートし、notepad.exe や conhost.exe などの正規プロセスにペイロードをインジェクションする機能を持つ。 被害範囲と攻撃者の特徴 数千件の感染試行が確認された一方で、第2段階以降のペイロードを実際に受け取ったホストは約12台に限られており、攻撃者が高価値標的を選別していたことを示唆している。標的となったのは主にロシア、ベラルーシ、タイの小売・科学・政府・製造セクターだった。第1段階の情報窃取ツールはロシア、ブラジル、トルコ、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア、中国でも広く確認された。 攻撃者の帰属については、第1段階のペイロード内に中国語の文字列が含まれていたことから中国語話者の脅威アクターが関与している可能性がKasperskyにより指摘されているが、既知の脅威グループへの正式な帰属は確定していない。 対応と推奨事項 開発元のAVB Disc Softは報告を受けてから12時間以内に修正版となるバージョン12.6.0.2445をリリースした。今回影響を受けたのはLiteエディションの特定バージョンのみで、Ultra・Proの各エディションへの影響は確認されていない。Kasperskyは2026年4月8日以降にDAEMON Toolsがインストールされていたマシンについて、侵害の痕跡(IoC)の確認と異常なセキュリティ関連アクティビティの調査を推奨している。該当バージョンを使用していたユーザーはただちにアンインストールのうえシステムの完全スキャンを実施し、最新版へ更新することが求められる。

May 8, 2026

GitHub MCP ServerにシークレットスキャンがGA、依存関係スキャンもプレビュー公開

概要 GitHubは2026年5月5日、GitHub MCP(Model Context Protocol)Serverに2つのセキュリティスキャン機能を追加した。一つ目は、2026年3月のパブリックプレビューを経て正式GA(一般提供)となったシークレットスキャン機能で、コミットやPRを作成する前にコード内の認証情報・シークレットの漏洩をAIコーディングエージェントから直接検出できる。二つ目は、DependabotとGitHub Advisory Databaseを活用した依存関係脆弱性スキャン機能で、こちらはパブリックプレビューとして公開された。いずれもGitHub Copilot CLIおよびVisual Studio Code上のMCP互換ツールから利用可能だ。 シークレットスキャン(GA) シークレットスキャンは、開発者がAIエージェントに対して「現在の変更にシークレットが含まれていないかスキャンして」といった自然言語の指示を出すだけで実行できる。技術的には既存の「push protection customization」設定に準拠しており、リポジトリや組織レベルで設定したカスタマイズがそのまま反映される。利用にはGitHub Secret Protectionが有効なリポジトリが必要。 セットアップはGitHub Copilot CLIとVS Codeそれぞれで対応している。Copilot CLIでは/plugin install advanced-security@copilot-pluginsでGitHub Advanced Securityプラグインを追加し、VS CodeではCopilot Chatのadvanced-securityエージェントプラグインをインストール後に/secret-scanningコマンドで利用できる。従来の事後的な検出から開発フローの早い段階での予防的アプローチへの転換を実現するものだ。 依存関係スキャン(パブリックプレビュー) 依存関係スキャンはdependabotツールセットの一部として機能し、AIエージェントが変更した依存関係の情報をGitHub Advisory Databaseと照合することで、影響を受けるパッケージ・深刻度・推奨される修正バージョンを含む構造化された結果を返す。Dependabotアラートが有効なリポジトリで利用でき、ローカル環境でDependabot CLIを実行して変更前後の依存関係グラフを比較するより詳細な検証も可能だ。 Copilot CLIではcopilot --add-github-mcp-toolset dependabotコマンドで有効化でき、VS CodeではMCP Serverの設定ヘッダーに"X-MCP-Toolsets": "dependabot"を追加するか、Copilot Chatのツールセットセレクターから選択する。「このブランチで追加した依存関係に既知の脆弱性がないかスキャンして、コミット前にアップグレードすべきバージョンを教えて」といったプロンプトが推奨されている。 セキュリティをAI開発フローに組み込む意義 これら2つの機能は、AIを活用したコーディング体験(IDE・CLIのエージェント)にセキュリティ検査をシームレスに統合するという方向性を示している。コードを書くAIエージェントが、書いたコードの安全性も同時に検査できる環境を整えることで、シフトレフトセキュリティの実践をより低摩擦で実現することが狙いだ。GitHubはGitHub Advanced Securityプラグインの活用を推奨しており、今後もMCP Serverを通じたセキュリティ機能の拡充が期待される。

May 8, 2026