AnthropicがAlibabaによる過去最大のClaude蒸留攻撃を告発——2,880万回の不正アクセス、米政府に規制強化を要請

概要 Anthropicは2026年6月24日、中国テック大手Alibabaとその傘下のAI研究部門Qwenが、「過去最大規模の蒸留攻撃(distillation attack)」をClaudeモデルに対して実施したと告発した。Anthropicは米上院議員らへの書簡およびホワイトハウス当局者への報告を通じてこの事実を明らかにし、米国のAI優位性を守るための規制強化を強く求めた。攻撃は2026年4月22日から6月5日にかけて行われ、約25,000の偽装アカウントを用いたClaudeとの交換回数は2,880万回以上に達した。 攻撃手法:「敵対的蒸留」とは 今回の攻撃で使われた「敵対的蒸留(adversarial distillation)」は、高性能なAIモデルに大量のプロンプトを送り、その回答パターンや推論構造を収集することで、自社の低性能モデルを改善・強化する手法だ。通常、蒸留は自社システム内で合法的に行われるが、本件では他社のモデルに許可なくアクセスして知的財産を抽出している点が問題とされている。Anthropicは書簡の中で「これらの攻撃は違法かつ組織的に、産業規模で実施されている」と断言し、AlibabaがR&D投資を回避しながら最先端の能力を獲得しようとしていると批判した。 標的とされた機能と安全上のリスク 攻撃が集中したのは、Anthropicの最新モデル「Mythos Preview」が持つ高度な機能群、特にソフトウェアエンジニアリングと自律的な推論(agentic reasoning)の領域だ。これらはAnthropicの競争優位の根幹をなすと同時に、商業的価値の高い機能でもある。AnthropicはさらにIPの窃取にとどまらないリスクも指摘している。敵対的蒸留によって開発されたモデルは「安全ガードレールを欠くことが多い」とし、こうしたモデルの普及が安全保障上の脅威につながりうると警告した。 政府への働きかけと米中AI競争の文脈 Anthropicはホワイトハウスや米上院議員に詳細を報告し、規制強化を求めた。これを受け、上院のBill HagertyとAndy Kimは国防関連法案の修正案として、米国のAIモデル出力を不正利用した中国企業を「ブラックリストへの登録や制裁対象とする」条項の追加を提案している。米当局者は、こうした不正蒸留による損害はシリコンバレー各社に数十億ドル規模の損失をもたらしていると推計している。 今回の告発は突発的な事件ではない。Anthropicは2026年2月にもDeepSeek、Moonshot、MiniMaxの3社による「産業規模の蒸留キャンペーン」を確認・公表しており、その後も攻撃の規模と巧妙さが増していると述べていた。今回のAlibabaによる攻撃は、それをさらに上回る過去最大の事例として記録された。AIの知的財産保護と米中間の技術覇権争いが交錯するこの問題は、今後の規制の在り方に大きな影響を与えることが予想される。

June 26, 2026

AppleとTeslaの製造データが流出――Tata Electronics、脅威グループ「World Leaks」によるサイバー攻撃を公式確認

概要 AppleやTeslaの主要製造サプライヤーであるインドのTata Electronicsが、「数週間前」に自社システムの一部でサイバーインシデントが発生したことを公式に認めた。同社は「事業運営への影響はなく、各ビジネスは通常通り稼働している」と述べたが、身代金要求の有無や顧客への通知状況については詳細な回答を避けた。Reutersの報道では、実際に身代金の要求があり、iPhone組み立て施設の従業員にも侵害が通知されたとされている。 流出データの内容 攻撃を主張する脅威グループ「World Leaks」は、ハッカーフォーラムに630GB超・約20万4,300件のファイルを公開したと表明した。セキュリティ研究者Rajshekhar Rajahariaがサンプルを確認したところ、Apple向けサプライヤー仕様書やTesla向け製造ドキュメントと見られるデータのほか、PCB設計図、部品仕様、SDKファイル、Outlookのメール会話、SAPシステム関連情報が含まれていたとされる。ただし、複数メディアは内容の真正性と完全性を独自に確認できていないと注記している。AppleおよびTeslaはいずれも取材に対して回答していない。 攻撃者「World Leaks」の背景 World Leaksは2025年初頭にランサムウェアグループ「Hunters International」がリブランドした組織であり、システムの暗号化を行う従来型のランサムウェア攻撃とは異なり、データ窃取と恐喝(エクストーション)に特化した手口を採る。過去にはDellやNikeへの攻撃も関与が指摘されており、製造業・医療・テクノロジー・エネルギーなど幅広いセクターを標的にしている。 Tata Electronicsとサプライチェーンへの影響 Tata Electronicsは2020年にタタグループの傘下として設立され、現在は7万5,000人以上の従業員を擁するインド有数のテクノロジー製造企業に成長している。2023年からはiPhoneの組み立てを手がけ、Teslaには半導体部品を供給するほか、QualcommやASMLとも取引がある。インドが中国依存からの脱却を目指すサプライチェーン多様化の流れの中で重要な役割を担う企業であるだけに、今回の事案はグローバルなサプライチェーンセキュリティに対する懸念を改めて浮き彫りにした形だ。主要顧客の機密設計情報が外部に流出した可能性があることから、製造業における取引先を含めたサイバーセキュリティ対策の重要性が一層高まっている。

June 26, 2026

CISAがLantronix EDS5000のCVSS 9.8脆弱性CVE-2025-67038を既知悪用脆弱性カタログに追加、連邦機関に緊急パッチを命令

概要 米サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)は、Lantronix EDS5000シリーズのデバイスサーバーに存在する重大な脆弱性CVE-2025-67038が実環境で積極的に悪用されていることを確認し、同脆弱性を「既知悪用脆弱性(KEV)」カタログに追加した。CISAは連邦民間行政機関(FCEB)に対し、2026年6月26日までのパッチ適用を義務付けた。CVSSスコアは最高値に近い9.8であり、悪用に成功した攻撃者は管理者(root)権限で任意のOSコマンドを実行できる。 脆弱性の技術的詳細 この脆弱性はLantronix EDS5000シリーズのHTTP RPCモジュールに存在するコードインジェクション欠陥で、認証失敗時の処理に起因する。具体的には「ユーザー名がサニタイズなしでコマンドに直接連結される」設計上の欠陥があり、攻撃者は細工したユーザー名を送信するだけでroot権限のOSコマンドを実行させることができる。認証を必要とせず外部から悪用可能なため、インターネットに公開されたデバイスは特に危険な状態にある。 この脆弱性は2026年4月、Forescout Research Vedere Labsのセキュリティ研究者たちによってBRIDGE:BREAKと名付けられた脆弱性コレクションの一部として開示された。BRIDGE:BREAKはLantronixだけでなく、Silexのシリアル-IPコンバーターにも影響を与えた一連の調査報告であり、産業用・業務用のネットワーク機器に潜む構造的な問題を浮き彫りにした。現在のところ、実際の悪用に使われている具体的な手法の詳細は公開されていない。 関連する脅威動向 CISAは同時に、Ubiquiti UniFi OSに存在する3件の脆弱性(CVE-2026-34908、CVE-2026-34909、CVE-2026-34910)についても実環境での悪用を確認したと発表した。これらの脆弱性はコモディティマルウェアの展開に利用されており、ネットワーク機器を狙った脅威が広範に拡大していることを示している。KEVカタログへの追加はFCEBへの法的拘束力を持つ対応義務を意味するが、民間企業や組織においても速やかなパッチ適用と資産管理の見直しが強く推奨される。

June 26, 2026

NGINX Open Sourceにリモートコード実行を許す重大脆弱性2件、F5がパッチ公開

概要 F5は2026年6月18日、NGINX Open Sourceに存在する2件の重大な脆弱性にパッチを公開した。いずれもCVSSスコア9.2と評価されており、認証なしのリモート攻撃者がリモートコード実行(RCE)を達成できる可能性がある。対象となるNGINX Open Sourceのバージョンは、CVE-2026-42530が1.31.0〜1.31.1(1.31.2で修正)、CVE-2026-42055が1.31.1および1.30.0〜1.30.2(それぞれ1.31.2、1.30.3で修正)であり、Gateway Fabric、Instance Manager、Ingress Controller、F5 WAF製品も影響を受ける。公開時点では野放しの悪用は確認されていないものの、F5製品の脆弱性は過去に急速に武器化された事例があるため、速やかなアップデートが強く推奨されている。 脆弱性の技術的詳細 CVE-2026-42530(CVSS 9.2)は、HTTP/3 QUICモジュール(ngx_http_v3_module)に存在するuse-after-free脆弱性だ。セッションレベルのポインタが単方向ストリームよりも長く生存するライフタイムの不一致が根本原因であり、HTTP/3が有効な構成でリモートの未認証攻撃者がこの欠陥を突くことができる。ただし悪用にはASLR(アドレス空間配置のランダム化)が無効化またはバイパス可能な状態であることが条件となる。緩和策としてHTTP/3を無効化することで攻撃経路を遮断できる。 CVE-2026-42055(CVSS 9.2)は、HTTP/2プロキシおよびgRPCモジュールに存在するヒープベースのバッファオーバーフローだ。HPACKのvarintエンコーダが予約された4バイトではなく5バイトを出力してしまい、割り当て済みメモリ領域の外に書き込みが発生する。悪用の前提条件として、proxy_http_version 2またはgRPCパスの有効化に加え、ignore_invalid_headers offの設定とlarge_client_header_buffersが2MBを超えることが必要となる。回避策としてはignore_invalid_headers offディレクティブを削除するか、large_client_header_buffersを2MB未満に縮小することが有効だ。 推奨される対応 F5は各CVEのドキュメントで脆弱性を修正した具体的なバージョンを案内している。パッチ適用が即座に困難な場合は、各脆弱性に対応した設定ベースの緩和策を暫定的に適用することが重要だ。F5製品の脆弱性は過去にも迅速に悪用コードが出回った実績があるため、対応の優先度を高く設定するべきだろう。

June 25, 2026

国際共同作戦「Operation Endgame」がSocGholish・Amadey・StealCのインフラを解体、2,700万件の認証情報と4,700万ドルの暗号資産を回収

概要 オランダ・カナダ・ドイツ・米国・ベルギー・デンマーク・フランス・英国の法執行機関と、Microsoft・Bitdefender・Bitsight・ESETなどの民間企業が連携した国際共同作戦「Operation Endgame」の拡大フェーズが完了した。今回の作戦ではSocGholish(FakeUpdates)、Amadey、StealCの3種のマルウェアインフラを同時に解体し、326台のサーバーと142ドメインを無効化。感染したWordPressサイト約15,000件を修復するとともに、2,700万件の盗まれたログイン情報と4,700万ドル相当の暗号資産を回収した。2026年5月時点で全世界の感染コンピューターは14万台以上に上っており、Microsoftだけで1万8,000台以上の被害端末を特定・修復したという。 解体されたマルウェアの技術的詳細 **SocGholish(FakeUpdates/GhoLoader)**は2017年以来活動するJavaScriptベースのダウンローダーで、主にWordPressサイトに悪意あるコードを注入し、正規のブラウザアップデートに偽装してユーザーにマルウェアをダウンロードさせる手法を用いる。DNSプロバイダーへの不正アクセスで正規ドメインの配下に悪意あるサブドメインを作成する「ドメインシャドーイング」技術も活用しており、Evil Corp(2007年から活動するロシアのサイバー犯罪組織)をはじめLockBit・RansomHubとの関連も確認されている。今回の作戦では106台のサーバーを停止し、感染サイト14,971件を直接クリーンアップした。 Amadeyは2018年10月から稼働するC++製モジュラー型バックドアで、最新バージョンは5.87。マルウェア・アズ・ア・サービス(MaaS)モデルで1ライセンス600ドル・リビルドごとに50ドルで販売されており、53の異なるボットネットクラスターから配布される。システム情報収集・ファイルダウンロード・スクリーンショット取得・SOCKS proxy・VNCセッション・クリップボード監視・RDP有効化など多機能な攻撃能力を持ち、LummaやVidar・RedLineなどの情報窃取マルウェアの二次配布にも利用されていた。 StealCは2023年1月に初登場した情報窃取特化型マルウェアで、最新バージョンは2.2.1(2026年6月時点)。月300ドルまたは6か月1,000ドルのサブスクリプション制で提供され、認証情報・Cookie・オートフィルデータ・クレジットカード情報・閲覧履歴を幅広く窃取する。 背景と今後の展望 Operation Endgameは2024年に発足した継続的な国際サイバー犯罪対策の枠組みで、今回はその拡大フェーズとして位置づけられる。Infobloxの調査によれば、2026年に入ってクラウド顧客の55%がSocGholishのインフラへの到達を試みるトラフィックを記録しており、これらのマルウェアが広範かつ活発に利用されていた実態が浮き彫りになった。オランダ国家ハイテク犯罪ユニットのMaikel Rollman氏は「この作戦により、サイバー犯罪者が感染したコンピューターシステムへアクセスする手段を剥奪した」と述べた。今回の作戦で200件を超えるC2ドメインとIPアドレスがブラックリスト登録され、当局はWordPressサイト管理者に対してパスワード変更・多要素認証の有効化・不審なアカウントの削除・ソフトウェアの最新化を推奨している。

June 25, 2026

Squidプロキシに29年来の脆弱性「Squidbleed」(CVE-2026-47729)、HTTPリクエスト平文が漏洩の恐れ

概要 広く使われているオープンソースのWebキャッシュプロキシ「Squid」に、1997年から存在していた脆弱性「Squidbleed」(CVE-2026-47729)が2026年6月22日に公開された。CVSSスコアは6.5(中程度)で、ヒープオーバーリードによって同一プロキシを利用する他ユーザーのHTTPリクエストや認証情報が平文で漏洩する可能性がある。名称はOpenSSLの重大脆弱性「Heartbleed」に類似したメモリ露出の性質にちなんで命名された。 技術的な仕組み 脆弱性はSquidのFTPディレクトリリストパーサー(FtpGateway.cc)に存在する。攻撃者が制御するFTPサーバから不正なファイルリスト行を送り込むと、パーサーのポインタがメモリバッファの境界を越えて読み込みを続ける。Squidは使い終わったバッファをゼロクリアせずに再利用するため、直前に処理した別ユーザーのHTTPリクエストデータがそのままメモリに残り、攻撃者に漏洩してしまう。これによりセッショントークン、認証情報、APIキーなどが窃取される恐れがある。なお、標準的なHTTPS通信(TLSトンネル)は影響を受けず、平文のHTTP通信またはSquidがTLSを終端する構成に限定される。 影響範囲と緩和策 最もリスクが高いのは、企業ネットワーク、学校、公共Wi-Fiなど、複数ユーザーが同一プロキシを共有する環境だ。攻撃の成立にはプロキシからアクセス可能なFTPサーバの制御が必要であるものの、FTPとポート21はSquidのデフォルト設定で有効化されているため、悪用のハードルは低い。 緩和策としては、FTP機能が不要な場合にFTPサポートを完全に無効化することが最も効果的だ。修正パッチは2026年4月にSquid version 8へマージされ、同年6月リリースのversion 7.6に搭載された。パッチの適用時はFtpGateway.ccにNUL終端チェックが含まれていることを確認されたい。 発見の経緯 脆弱性はセキュリティ企業Calif.ioの研究者チームが発見した。注目すべきは、AnthropicのClaude Mythosモデルを活用してパーサーのバグを検出した点であり、AIを活用した脆弱性探索の実例として広く注目されている。29年にわたって見過ごされてきた脆弱性を機械学習モデルが検出したことは、AIを用いたセキュリティ研究の有効性を示す事例として業界に与える影響は大きい。

June 24, 2026

WhatsApp経由のVBScriptキャンペーン、ManageEngine RMMを悪用して遠隔操作を確立

概要 Kasperskyの研究者が、WhatsAppを介して悪意のあるVBScriptファイルを配布するマルウェアキャンペーンを発見した。攻撃者はまずWhatsAppアカウントを侵害し、被害者の連絡先リストにある人物に対して偽のビジネス文書を送り付ける。ファイルは「Financial Reports.vbs」「Account Statement.vbs」「Outstanding Payment List.vbs」といった名称で、請求書や債務通知・銀行明細書を装っている。メッセージが既知の連絡先から届くように見えるため、被害者は疑わずにファイルを開いてしまう。文書名はポルトガル語・フランス語・ドイツ語・マレー語など複数言語で作成されており、マレーシア・ブラジル・インド・メキシコ・シンガポール・英国・スペイン・台湾・オーストラリア・ロシア・ベトナムを含む世界10カ国以上のユーザーが標的となっている。特にマレーシアが被害の約80%を占めている。 多段階の感染チェーン 攻撃は複数のステージで構成される巧妙な感染チェーンを採用している。まず初期のVBScriptがWindows Script Host(WScript.exe)によって実行され、C:\Users\Public\Documents\ 配下に Temp_<ランダム文字列> という名前の隠しワークディレクトリを作成する。次にcurl・bitsadmin・certutil・PowerShellのいずれかを使って攻撃者のインフラから2つの追加スクリプトをダウンロードする。 2つ目のスクリプトはWindowsのUAC(ユーザーアカウント制御)設定をレジストリで改ざんし、ConsentPromptBehaviorAdmin の値を0に設定することで管理者操作の確認ダイアログを無効化する。その後、ManageEngine Endpoint Centralの展開パッケージを含むZIPアーカイブをダウンロードし、setup1.vbs が正規のEndpoint Centralエージェントをサイレントインストールする。インストールされたRMMソフトウェアは攻撃者が管理するサーバーに接続するよう設定されており、これにより攻撃者は被害者のマシンに対する永続的なリモート管理権限を獲得する。スクリプト内には大量の難読化・ジャンクコード・文字列連結・偽のWindows Updateコメントが含まれており、セキュリティソフトによる検知を回避するよう設計されている。 正規ツールの悪用とLiving-off-the-Land戦術 このキャンペーンの特徴は、マルウェアを直接配布するのではなく、ManageEngine Endpoint Centralという正規のIT管理ツールを遠隔操作の手段として悪用する点にある。正規のRMMソフトウェアはセキュリティソフトのホワイトリストに登録されていることが多く、悪意のある通信として検出されにくい。攻撃者の目標は、データ窃取・ラテラルムーブメント(横展開)・さらなるネットワーク侵害など、継続的なアクセスを通じた多様な攻撃活動の実施と見られる。 攻撃インフラと帰属 確認された攻撃者のインフラには、temu.baskwms[.]top・invoice.msopsa[.]top・qse.shoppes[.]help などのドメインや、C2サーバーIPアドレス 202.61.160[.]201・202.61.160[.]202・38.55.151[.]63 が含まれる。ファイルの配信にはAliyun OSS・AWS S3・Backblaze B2などのクラウドストレージも利用されている。複数のVBSバリアントが記録されており、キャンペーンが活発に続いていることを示している。 帰属については、スクリプト内に中国語(簡体字)のコメントが埋め込まれていること、ValleyRATやGh0st RATとのインフラの重複が確認されていることから、中国語話者の攻撃者が関与している可能性が低〜中程度で示唆されている。ただし確定的な帰属には至っておらず、研究者らは引き続き調査中としている。本キャンペーンは2026年6月時点でも活動中であり、ユーザーには見覚えのない実行ファイルやスクリプトファイルの開封を避けるよう注意が呼びかけられている。

June 24, 2026

北朝鮮ハッカーがMastra AIのnpmパッケージ145件を侵害——Microsoftが国家支援型サプライチェーン攻撃と断定

概要 2026年6月17日、AIエージェントフレームワーク「Mastra」のnpmパッケージ群が大規模なサプライチェーン攻撃を受けた。攻撃者は正規のコントリビューターアカウント「ehindero」を乗っ取り、88分以内に140件以上のパッケージへ悪意ある依存関係を注入した。@mastra/core 単体で週間918,000件以上のダウンロード数を誇るエコシステム全体が影響を受ける規模であり、Microsoftは「高い確信度」でこの攻撃を北朝鮮の国家支援脅威アクター「Sapphire Sleet(別名:BlueNoroff)」に帰属すると断定した。 攻撃の手口 攻撃の核心は、正規の日付ライブラリ「dayjs」を模倣したタイポスクワットパッケージ「easy-day-js」の悪用だ。攻撃者はまず2026年6月16日午前7時5分(UTC)に「sergey2016」というユーザー名でこのパッケージを一見無害なライブラリとして公開。翌6月17日午前1時1分(UTC)に悪意ある変更を加えた後、侵害したアカウントを使って対象パッケージの依存関係にこれを注入していった。 実行チェーンは多段階で構成されている。パッケージのインストール時に postinstall フックが起動し、難読化されたペイロードがTLS検証を無効化した状態で攻撃者のC&Cインフラ(IPアドレス:23.254.164.92)から第2段階のペイロードをダウンロード。マルウェアはデタッチされたバックグラウンドプロセスとして実行された後、自身を削除してフォレンジック回避を図る。最終段階のマルウェアはブラウザ履歴の収集、MetaMask・Phantom・Binance Walletを含む166種類の暗号資産ウォレット拡張機能の探索を行い、Windows(レジストリキー)、macOS(LaunchAgents)、Linux(systemdサービス)それぞれに最適化した手法で永続化を確立する。 アカウント侵害の入り口はソーシャルエンジニアリングだった。攻撃者はLinkedIn上で採用担当者を装い、対象の開発者を通話に誘い込んで不審なリンクをクリックさせる手法を取った。 背景と脅威アクターのプロファイル Sapphire Sleetは暗号資産窃取を主目的とする北朝鮮の国家支援グループであり、金融セクターや開発者コミュニティを繰り返し標的にしてきた。2026年4月には人気HTTPクライアントライブラリ「axios」のnpmサプライチェーン攻撃も同グループが実行したとされており、今回のMastra攻撃は手口が酷似している——クリーンなデコイバージョンの事前公開、postinstallドロッパーの活用、暗号資産ウォレットへの執着という3点が共通している。AIツールや開発者向けインフラを標的にする戦術の洗練度が増しており、今後も類似した攻撃が継続する可能性が高い。 推奨される対処法 侵害されたパッケージを利用していた場合は、直ちに安全なバージョンへロールバックし、クラウド認証情報・LLM APIキー・暗号資産ウォレットのシードフレーズをすべてローテーションすることが急務だ。侵害の痕跡がシステム上に残っていないか監査も必要になる。再発防止の観点では、パッケージ署名検証とSLSAプロビナンス証明の義務化がサプライチェーンセキュリティの強化策として挙げられている。今回の攻撃は、オープンソースのAIフレームワークエコシステムが国家レベルの攻撃者にとって魅力的な標的となっていることを改めて示した事例となった。

June 23, 2026

AI自律エージェントが脆弱性発見を加速、2026年のCVE総数が66,000件超へ

概要 インシデント対応・セキュリティチームの国際フォーラムFIRST(Forum of Incident Response and Security Teams)は、2026年のCVE(共通脆弱性識別子)登録件数が約66,000件に達するとの予測を発表した。この数字は年初の予測を大きく上回るもので、AnthropicのMythosやOpenAIのGPT-5.4-Cyberといった自律型AIエージェントがソフトウェアの脆弱性を独自に発見・報告するようになったことが主な要因とされている。 AIエージェントによる脆弱性発見の実例 この傾向を示す具体的な事例として、MozillaがAnthropicのProject Glasswingを活用したケースが挙げられる。同プロジェクトはFirefox 150のリリースに向けた検証プロセスで271件のバグを検出・修正したとされ、AI自律エージェントが実際の製品開発サイクルに組み込まれた形で大量の脆弱性を発見できることを示した。GitHub Security AdvisoriesやVulnCheckなどのプラットフォームもCVEカタログの拡張・補完(バックフィル)を進めており、登録件数の増加に寄与している。 人間の検証能力がボトルネックに FIRST CEOのChris Gibsonは「信頼できるネットワークと情報共有が、2026年の脆弱性嵐を乗り切る鍵となる」と述べ、コミュニティ間の連携強化を訴えた。最大の課題はCVEの登録数ではなく、人間のセキュリティアナリストによる検証・トリアージ・パッチ適用のスピードが追いつかないことにある。AIが生成した一時的なアプリケーションや短命なコードに存在するバグがCVEデータベースの外に大量に蓄積される問題も新たに浮上しており、ソフトウェア全体の量的増大が作業負荷をさらに増加させている。研究者はこの状況を「大雨と洪水」に例え、多くのCVEは実質的なノイズである一方、実際に悪用されるリスクを持つ脆弱性は限られたグループに集中すると指摘する。 攻防AIの速度競争と今後の展望 防御側でもAIの活用が進んでおり、攻撃型AIと防御型AIの「速度競争」が2026年後半の焦点になると見られている。開発段階での脆弱性除去にAIを活用する取り組みが拡大しており、パッチ適用の上流化による負荷軽減が期待される。実装チームは作業量の倍増に備える必要があるが、パッチ適用チームへの負荷は比較的安定して推移するとの見方もある。AIによる脆弱性発見の民主化が進む一方、その成果を安全に処理・対処するための体制整備が業界全体の急務となっている。

June 22, 2026

Fortinet FortiSandboxの重大脆弱性3件が実際の攻撃に悪用、CVSS 9.1で認証バイパスやRCEが可能

概要 脅威インテリジェンス企業Defusedは2026年6月16日、Fortinet FortiSandboxに存在するCVSSスコア9.1の重大脆弱性3件が実際の攻撃で悪用されていることを確認したと発表した。対象となるのはCVE-2026-39813(JRPC APIにおけるパストラバーサルによる認証バイパス)、CVE-2026-39808(認証なしのOSコマンドインジェクション)、CVE-2026-25089(WebUIにおけるOSコマンドインジェクション)の3件で、いずれも未認証の攻撃者がユーザー操作なしにリモートから特権昇格やコード実行を行える低複雑度の攻撃が可能となる。FortiSandboxは他のFortinet製品が脅威判定を依存するプラットフォームであるため、侵害された場合の影響は特に大きい。 各脆弱性の詳細 CVE-2026-39813はFortiSandboxのJRPC APIに存在するパストラバーサル脆弱性で、認証なしの攻撃者が特別に細工したHTTPリクエストを送ることで認証をバイパスできる。CVE-2026-39808はOSコマンドインジェクション脆弱性で、未認証の状態でリモートコード実行が可能となる。これら2件は2026年4月14日に修正パッチが提供された。CVE-2026-25089はFortiSandbox本体に加えFortiSandbox CloudおよびFortiSandbox PaaSのWebUI全体に影響するOSコマンドインジェクションで、2026年6月9日に修正された。つまり、脆弱性の悪用が確認されたのはパッチ公開からわずか1週間後のことであった。なお、Defusedの分析によれば、CVE-2026-25089向けのエクスプロイトコードはAIを用いて開発された形跡(いわゆる「バイブコーディング」)があり、動作に不具合を抱えている可能性があるという。 背景とFortinet製品を狙う攻撃の傾向 Fortinetの製品はランサムウェアグループや国家支援型サイバー諜報活動において繰り返し標的とされており、CISAは現在26件のFortinet CVEが実際の攻撃に悪用されていることを把握し、そのうち13件はランサムウェア組織による悪用が確認されている。FortiSandboxはこれまで比較的攻撃対象として目立っていなかった製品だが、今回の悪用確認はその状況が変化しつつあることを示す。また、AIによる脆弱性調査や悪用コード開発の加速が、攻撃者の公開済み脆弱性への対応スピードを高めていることも懸念される。 推奨される対応策 Fortinetはすべての影響を受けるバージョンに対してパッチを提供済みであり、各組織は速やかにFortiSandboxを最新バージョンへアップグレードすることが強く推奨される。あわせて、多要素認証(MFA)の有効化とセキュリティ認証情報の定期的な更新も実施すべきとされている。パッチ適用が即座に困難な場合は、FortiSandboxへのネットワークアクセスを信頼済みの送信元に限定するなど、緩和策を検討する必要がある。

June 22, 2026