Cisco Secure Workload REST APIの最大深刻度脆弱性(CVE-2026-20223、CVSS 10.0)を修正

概要 Ciscoは2026年5月、Secure WorkloadのREST APIに存在する最大深刻度の脆弱性CVE-2026-20223(CVSSスコア10.0)に対するパッチを公開した。この脆弱性は「RESTAPIエンドポイントへのアクセス時における検証と認証の不備」に起因するもので、認証されていない遠隔攻撃者が細工したAPIリクエストを送信するだけで、サイト管理者(Site Admin)の権限でテナント境界を越えた機密情報の読み取りや設定変更が可能となる。影響はSaaS環境およびオンプレミスのCisco Secure Workload Clusterソフトウェアの両方に及び、構成に関わらず対象となる。 影響範囲とパッチ情報 脆弱性の影響を受けるバージョンと対応状況は以下のとおりである。 バージョン3.9以前:パッチは提供されず、修正済みバージョンへの移行が必要 バージョン3.10:3.10.8.3で修正済み バージョン4.0:4.0.3.17で修正済み 本脆弱性を緩和する回避策は存在しないため、該当バージョンを利用している組織は直ちにアップデートを適用することが強く推奨される。CiscoはこのCVEを自社の内部セキュリティテストを通じて発見しており、現時点で野外での悪用事例は確認されていない。 背景と注意点 今回の修正は、Cisco製品における認証バイパス系の脆弱性が相次いで報告されている文脈の中で発表された。直近では、Catalyst SD-WAN Controllerにおいても同様に最大深刻度(CVSS 10.0)の認証バイパス脆弱性CVE-2026-20182が明らかになっており、こちらは脅威アクター「UAT-8616」による実際の悪用が既に確認されている。Cisco Secure Workloadは主にクラウドワークロードのマイクロセグメンテーションや可視化に利用されるプラットフォームであり、攻撃者に管理者権限を奪取されると、ネットワーク内のセグメンテーションポリシーの変更や機密データへの不正アクセスなど、深刻な影響を招く可能性がある。早期パッチ適用と脆弱性管理プロセスの見直しが急務である。

May 24, 2026

Laravel-Langパッケージがサプライチェーン攻撃で侵害、700以上のバージョンに認証情報窃取マルウェア

概要 2026年5月22〜23日、Laravelアプリケーションのローカライゼーションライブラリとして広く使われているLaravel-Langの複数パッケージがサプライチェーン攻撃を受けた。SocketとAikidoのセキュリティ研究者が発見したこの侵害では、laravel-lang/lang・laravel-lang/http-statuses・laravel-lang/attributes・laravel-lang/actionsの4パッケージ合計233バージョン以上が悪意あるコードを含む形で公開され、700以上のGitHubリポジトリが関与していた。なお、これらはPHPフレームワーク本体(Laravel公式)ではなく、コミュニティが保守する多言語化パッケージである。 攻撃の痕跡として、複数のリポジトリで秒単位の間隔で大量のバージョンタグが発行されており、自動化されたスクリプトによる組織レベルの認証情報侵害が強く疑われている。 攻撃手法:Composerオートローダーを悪用した自動実行 攻撃者はGitHubのバージョンタグシステムを悪用し、正規のタグを悪意あるフォークのコミットに向け直す手口を用いた。開発者がComposer経由でパッケージを取得すると、パッケージ内のsrc/helpers.phpがComposerのオートロード設定に登録されており、Laravelアプリケーションの起動時に自動実行される仕組みになっていた。クラスのインスタンス化や特定の関数呼び出しは不要で、vendor/autoload.phpを読み込むだけでペイロードが走る。 初期ドロッパーは難読化された文字コード配列を用いてC2サーバー(flipboxstudio[.]info)と通信し、二次ペイロードをダウンロードする。TLS証明書の検証は無効化されており、一時ディレクトリ(sys_get_temp_dir()/.laravel_locale/)を作業領域として使用する。 マルウェアの窃取能力 ダウンロードされる二次ペイロードは約5,900行のPHP製スティーラーで、15〜17個の専門的な収集モジュールで構成されている。窃取対象は広範にわたる。 クラウド・インフラ系ではAWS IAMロールやメタデータエンドポイント(169.254.169.254)・GCP・Azure・DigitalOcean・Herokuの認証情報、KubernetesサービスアカウントトークンおよびHashiCorp Vault設定が対象となる。CI/CDパイプラインではJenkins・GitLab Runner・GitHub Actions・CircleCI・TravisCI・ArgoCDの設定・シークレットが盗まれる。開発ツールではSSH秘密鍵・Git認証情報・Dockerトークン・.envファイルが対象だ。これに加え、Chrome・Firefox・Edge等のブラウザパスワード、1Password・Bitwarden・LastPassなどのパスワードマネージャーデータ、MetaMaskやElectrumなどの暗号資産ウォレット、VPN設定、Discord・Slack・Telegramのセッショントークンも収集される。 収集したデータはAES-256で暗号化したうえでflipboxstudio[.]info/exfilに送信され、その後スティーラー自身を削除してフォレンジック証拠を消去する。 推奨される対応 影響を受けたパッケージを使用している場合、侵害が疑われるシステムは完全に危険な状態として扱い、既知の正常なイメージから環境を再構築することが推奨されている。加えて以下の順でシークレットをローテーションする必要がある。 クラウド認証情報(AWS・GCP・Azure) Kubernetes / HashiCorp Vault トークン CI/CDシークレット(GitHub Actions・GitLab・CircleCI等) SSH鍵・Dockerトークン データベース認証情報・その他の.env変数 侵害の確認にはcomposer.lockで対象パッケージの該当バージョンが含まれていないかチェックし、ネットワークログでflipboxstudio[.]infoへの通信履歴を確認する。一時ファイルsys_get_temp_dir()/.laravel_locale/やWindows環境ではDebugChromium.exeの存在も侵害指標となる。 まとめと教訓 このインシデントはComposerのオートロード機構という「信頼された実行経路」がサプライチェーン攻撃のベクターになりうることを示している。秒単位での大量タグ発行という異常なリリースパターンを検出できるCI/CDパイプラインの整備や、パッケージのハッシュ検証、最小権限の原則に基づくシークレット管理の重要性が改めて浮き彫りになった。

May 24, 2026

Victoria's SecretがScattered Spiderによるサイバー攻撃でECサイトを停止、Q2業績に約1,000万ドルの影響

概要 大手ランジェリーブランドのVictoria’s Secretは2026年5月23〜24日にかけてサイバーセキュリティインシデントが発生し、ECサイトと一部店舗サービスを緊急停止した。同社は「セキュリティインシデントを確認し、対応措置を講じている」と声明を発表し、外部セキュリティ専門家を起用して調査を進めていることを明らかにした。最高経営責任者(CEO)のHillary Super氏は社内向けに「復旧には時間がかかる」と伝えており、完全な業務正常化には相応の期間を要する見通しだ。なお、約70か国に展開する1,380店舗での実店舗営業は継続されており、物理的な販売活動への直接影響は限定的とみられる。 Scattered Spiderの関与疑惑と攻撃の手口 サイバーセキュリティ専門家の間では、今回の攻撃に脅威アクター「Scattered Spider(別名:UNC3944)」が関与しているとの見方が広がっている。Google Threat Intelligenceのアナリスト、John Hultquist氏はこのグループについて「攻撃的で創造的であり、成熟したセキュリティプログラムを持つ企業に対しても特に効果的に侵入を果たす」と評している。Scattered Spiderはソーシャルエンジニアリングやフィッシングを駆使して内部ネットワークへのアクセスを確立した後、ランサムウェアや恐喝を組み合わせた手口で被害者に圧力をかける手法が特徴だ。グループは近年、英国の小売業者への攻撃から米国の大手チェーンへと標的を移しており、FBIは主要小売企業に対して同グループの活動活発化を警告するインテリジェンス・ブリーフィングを実施している。 相次ぐ小売業へのサイバー攻撃 今回のVictoria’s Secret攻撃は、大手小売・ブランド企業を標的にした一連のインシデントの一部として位置づけられる。直近ではDiorが顧客情報に関するデータ侵害を公表し、Adidasもカスタマーサービスプロバイダーを経由した侵害を発表した。英国でもHarrods、Co-op、Marks & Spencerがそれぞれ攻撃を受けており、Marks & Spencerの損害額は最大3億ポンド(約4億200万ドル)に上る可能性が報じられている。また、Scattered Spiderは過去にカジノ大手のMGM ResortsやCaesars Entertainmentへの攻撃にも関与したとされており、インフラ規模の大きい企業を集中的に狙う傾向がある。 業績への影響と今後の見通し Victoria’s Secretの2024年通期の純売上高は62億ドルに達し、約3万人の従業員を擁する大規模企業だが、今回のECサイト停止により第2四半期の営業利益に約1,000万ドルの影響が見込まれると同社は発表した。復旧作業の長期化が懸念される中、顧客データの流出有無や詳細な攻撃ベクターについては現時点では明らかにされていない。セキュリティ専門家は小売業界全体に対してサプライチェーンリスクの見直しと多要素認証の徹底を呼びかけており、今後も詳細な調査結果の公表が注目される。

May 24, 2026

Verizon DBIR 2026:脆弱性悪用が19年ぶりに認証情報窃取を抜いて最大の初期侵入経路に

概要 Verizonが2026年版データ侵害調査報告書(DBIR)を公開し、サイバーセキュリティの脅威動向に歴史的な転換点が訪れたことが明らかになった。19年間にわたり最大の初期侵入経路であり続けた認証情報の窃取が初めて首位を明け渡し、脆弱性の悪用が全侵害の**31%を占める最大経路として浮上した。一方、認証情報の窃取は13%**へと大幅に低下している。本レポートは3万1,000件以上のセキュリティインシデントと2万2,000件超の確認済み侵害を分析したもので、前年の約1万2,200件から侵害件数がほぼ倍増するという深刻な状況も浮き彫りになった。 脆弱性悪用が急増した背景 脆弱性悪用が急増した主因の一つとして報告書が強調するのが、AIの活用による攻撃の高速化だ。脅威アクターはAIを使ってエクスプロイトを開発し、これまで数ヶ月かかっていた脆弱性の武器化を数時間で完了できるようになっている。調査では、攻撃者が攻撃技術の中央値で15種類のAI支援を組み合わせて利用しており、中には40〜50種類にのぼるケースも確認された。 同時に、防御側のパッチ適用が追いついていないことも大きな要因となっている。脆弱性のパッチ適用にかかる中央値の日数は、前年の32日から43日へと増加した。さらに、CISAの既知悪用済み脆弱性(KEV)カタログに掲載された脆弱性を完全に修正した組織は全体の**26%**にとどまり、前年の38%から大幅に低下した。増え続ける脆弱性カタログに対し、セキュリティチームの優先順位付けが追いついていない現状が示されている。 サプライチェーンリスクとランサムウェアの拡大 サードパーティ経由の侵害も急増しており、前年比60%増となり全侵害の約48%を占めるまでになった。しかし、クラウドアカウントにおける多要素認証(MFA)の未設定といったセキュリティ欠陥を完全に修正したサードパーティ組織は、わずか23%に過ぎない。アクセス権限の設定ミスに至っては、修正完了まで中央値で約8ヶ月を要するとされており、攻撃者にとって格好の標的となっている。 ランサムウェアは全侵害の48%(前年44%)まで拡大した。身代金の支払い中央値は14万ドルを下回る水準まで低下しており、被害を受けた組織の**69%が身代金を支払わなかったことも報告されている。また、認証情報の流出はランサムウェアへの"パイプライン"となっており、ランサムウェア被害組織のうち過去に認証情報漏洩を経験していた組織の50%**は、攻撃の95日以内に漏洩が起きていたことも明らかになった。 シャドーAIと人的要因 生成AIの企業利用におけるリスクも新たな課題として浮上している。法人デバイスから生成AIサービスにアクセスする従業員の**67%が、企業アカウントではなく個人アカウントを使用していることが確認された。定期的にAIを業務利用する従業員の割合は前年の15%から45%**へと急増しており、データ漏洩防止(DLP)の観点から重大なリスクをはらんでいる。 人的要因も引き続き侵害の大きな部分を占めており、全侵害の**62%に人間の関与が見られた。ソーシャルエンジニアリングは全体の16%**を占め、とりわけ音声・テキストを使ったフィッシング(ビッシング・スミッシング)がメールよりも高い有効性を持つとして注目されている。報告書はセキュリティリーダーに対し、実績ある優先度の高いセキュリティコントロールの適用と迅速なパッチ対応、そしてAIをセキュア・バイ・デザインの枠組みに統合することを推奨している。

May 23, 2026

SonicWall Gen6 VPNのMFA回避脆弱性CVE-2024-12802、不完全パッチ適用でランサムウェア攻撃に悪用

概要 SonicWall Gen6 SSL-VPNアプライアンスに存在する認証バイパス脆弱性 CVE-2024-12802 を悪用した攻撃が、2026年2月〜3月にかけて複数組織で確認された。この脆弱性はSonicWallが2025年中に公開したファームウェアアップデートで修正済みとされていたが、Gen6デバイスではパッチ適用後もLDAPの手動再設定が必要であり、この追加手順を省略した環境でMFA(多要素認証)回避が引き続き可能な状態となっていた。SonicWallはアドバイザリを更新して手順の不備を告知しているが、攻撃者はすでにこの隙間を突いてランサムウェア展開を進めていた。 技術的な詳細 CVE-2024-12802 の根本原因は、SonicWallがMicrosoft Active DirectoryのログインフォーマットをUPN(User Principal Name、メール形式)とSAM(Security Account Manager、レガシー形式)で独立して処理する実装にある。MFAの強制はユーザーID単位ではなく各フォーマット単位で適用されるため、MFAがSAM経由のログインに設定されていても、UPN経由での認証を試みることで MFA をスキップできる。この問題はファームウェア更新だけでは解消されず、LDAP設定内のuserPrincipalName参照を削除・再設定するという6つの追加手順が必要である。手順には「既存のLDAP設定削除」「キャッシュされたLDAPユーザーの削除」「SSL VPNのUser Domain設定削除」「再起動後のLDAP再設定(UPN不使用)」「新規バックアップ作成」などが含まれる。通常のパッチ適用ワークフローではこれらの手動ステップが省かれやすく、管理者が修正済みと誤認したまま脆弱な状態が維持される点が問題視されている。なお、Gen7・Gen8デバイスはファームウェア更新のみで完全に修正される。 攻撃の手口と影響 攻撃者はまず自動化ツールを使ってVPN認証情報をブルートフォース攻撃し(場合によっては13回程度の試行で成功)、UPNログイン経路でMFAを回避してネットワークに侵入した。侵入後30〜60分以内に偵察、内部での認証情報の再利用テスト、Cobalt Strikeビーコンの展開、BYOVD(脆弱なドライバーの悪用)によるEDR回避ツールの設置が確認されている。攻撃者グループはランサムウェアグループ「Akira」と関連しており、初期アクセスブローカーとして侵害済み環境の売買も行っていたとみられる。CISAはこの脆弱性のCVSSスコアを9.1(Critical)と評価しており、SonicWall自身のスコア6.5を大きく上回る深刻度として位置づけている。 推奨される対策 Gen6デバイスを運用している組織は、ファームウェアを最新版に更新するだけでなく、SonicWallの公開アドバイザリに記載された6つの手動手順をすべて完了することが必須である。また、Gen6ハードウェアは2026年4月16日にサポート終了(End of Life)を迎えており、今後の脆弱性対応パッチの提供は見込めないため、Gen7またはGen8への移行が強く推奨される。侵害の痕跡を調査する際は、VPNログ内の sess='CLI' の記録、イベントID 238・1080を重点的に確認するとよい。

May 22, 2026

DrupalコアにCVSSスコア20/25の「高度に重大」な脆弱性、認証不要で全データに不正アクセス可能

概要 Drupalセキュリティチームは2026年5月20日(UTC 17:00〜21:00)、コアに存在する「高度に重大(Highly Critical)」な脆弱性に対するセキュリティアップデートを全サポートブランチ向けにリリースした。この脆弱性のCVSSスコアはNISTスケールで25点満点中20点と評価されており、認証不要・アクセス複雑度なしで悪用可能という極めて危険な性質を持つ。セキュリティチームは「公開後数時間から数日以内にエクスプロイトが作成される可能性がある」として、全管理者に即時対応を強く呼びかけた。 脆弱性の詳細 今回の脆弱性はDrupal CMSではなくDrupalコアに存在し、一部の「一般的でないモジュール設定」にのみ影響するため、スコアが最大の25点に達しなかったとされている。それでも攻撃者はページを訪問するだけで(ユーザー操作不要)、以下の被害を引き起こせる。 サイト上のすべての非公開データへの不正アクセス コンテンツの無断改ざんおよび削除 CVE番号はパッチリリースまで非公開とされており、詳細は修正版とともに公開された。Drupal Stewardを利用しているサイトは既知の攻撃ベクタへの追加保護を受けられるが、それでもアップグレードが必須とされている。 影響を受けるバージョンと対応 サポート中のブランチ(即時パッチ適用が必要): Drupal 11.3.x、11.2.x Drupal 10.6.x、10.5.x サポート終了済みだが例外的にパッチ提供: 11.1.x(11.1.9以上へ更新)、10.4.x〜10.0.x(10.4.9以上へ更新) Drupal 8.9.x、9.5.x(手動でのパッチ適用が必要。リグレッションが発生する可能性あり) 影響なし: Drupal 7 アップデート作業自体は数分〜数十秒で完了し、サイトのダウンタイムもほぼ発生しないとされている。セキュリティチームはリリース前の段階でも最新のパッチリリースへ更新しておくよう推奨していた。 今後の対応 Drupalセキュリティチームは、修正バージョンへの即時移行とともに、サポート終了ブランチを使用しているサイトの早期マイグレーションも促している。特にDrupal 8・9系のサイトは10.6以上への移行が強く推奨されており、手動パッチはあくまで一時的な緊急措置と位置づけられている。エクスプロイトが急速に出回る可能性があるため、管理者は今後の公式アナウンスを注視し、速やかに行動することが求められる。

May 21, 2026

VS Code拡張「Nx Console」がサプライチェーン攻撃で侵害、GitHub・AWS・Claude Codeの認証情報を11分間窃取

概要 2026年5月18日、VS Code拡張機能「Nx Console」のバージョン18.95.0が悪意のあるコードを含む状態でVS Code Marketplaceに公開された。Nx Consoleは220万以上のインストール数を持つ人気の拡張機能で、開発者のワークフローに深く組み込まれていることが攻撃者に狙われた。悪意あるバージョンが公開されたのは12:36〜12:47 UTC(わずか11分間)で、Nxチームが迅速に検出・削除したが、その間に6,000件以上のインストールが発生した可能性があるとチームは後日開示している。攻撃の起点は、貢献者のGitHub認証情報の漏洩であった。 攻撃の手口と技術的詳細 攻撃者はまず2026年5月18日03:18 UTCに、窃取した貢献者の認証情報を使ってnrwl/nxリポジトリに対してオーファンコミット(親履歴のない孤立したコミット)をプッシュした。このコミットには498 KBの難読化されたJavaScriptペイロードが含まれていた。続いて12:36 UTCに、侵害されたパブリッシュ用認証情報を使い、悪意あるバージョン18.95.0をマーケットプレイスに公開した。 侵害されたバージョンのmain.jsには、わずか2,777バイトの注入コードが含まれており、ワークスペースを開いた際に自動的に起動する。このコードはGitHub上のオーファンコミットから498 KBの難読化ペイロードをダウンロードし、BunランタイムでJavaScriptを実行する仕組みで、バックグラウンドプロセスとして分離実行することで検出を回避していた。 ペイロードが標的とする認証情報は幅広く、GitHub・npm・AWSの認証情報、HashiCorp Vaultトークン、Kubernetesシークレット、1Passwordボールト、そしてClaude Codeの設定ファイルも含まれていた。Linuxでは/proc/*/memへの直接アクセス、AWSメタデータエンドポイント(169.254.169.254)やECSコンテナエンドポイントも調査の対象とされた。 窃取されたデータはAES-256-GCM暗号化とRSA公開鍵ラッピングで二重に保護された上で、HTTPS・GitHub API悪用・DNSトンネリングという3つの独立した経路で外部に送信された。 巧妙な持続化・回避機能 macOS環境では、~/.local/share/kitty/cat.pyにPythonバックドアが設置され、4096ビットRSA鍵で署名の上、GitHub API検索を通じて1時間ごとにコマンドを受け取るよう設計されていた。また、解析回避のための仕組みも組み込まれており、CPUコア数が4未満の環境やロシア・CISのタイムゾーンを使用する環境では実行をスキップするようになっていた。これにより研究者のサンドボックスを避けながら、本番環境の開発者マシンを効果的に標的にしていた。 さらに深刻なのは、ペイロードにSigstoreの完全な統合機能が含まれていた点だ。これにより攻撃者はFulcio証明書の発行とSLSAプロベナンス生成を使って、悪意あるnpmパッケージを正当な暗号署名付きで公開できる状態にあった。サプライチェーン攻撃の連鎖的な拡大を狙った、非常に高度な準備がなされていたことが分かる。 推奨される対応策 Nxチームはバージョン18.100.0以降への更新と、影響を受けた可能性のある全認証情報のローテーションを強く推奨している。具体的には、クラウドトークン・GitHub PAT・npmトークン・SSHキーをすべて無効化・再発行し、macOSユーザーは~/.local/share/kitty/cat.pyおよび関連するLaunchAgentを削除する必要がある。12:36〜12:47 UTCの間に当該バージョンをインストールした開発者は、該当マシンのすべての認証情報を侵害済みとして扱うべきだ。

May 21, 2026

Pwn2Own Berlin 2026閉幕:47件のゼロデイで総額130万ドル、DEVCOREがMaster of Pwn獲得

大会概要と最終成績 セキュリティ研究者の腕を競う国際的なハッキングコンテスト「Pwn2Own Berlin 2026」が5月14〜16日の3日間にわたって開催された。世界中のセキュリティ研究者・チームが参加し、47件のユニークなゼロデイ脆弱性を悪用して総額1,298,250ドル(昨年比約20%増)の賞金を獲得した。 最終的なMaster of Pwn(総合優勝)には台湾のセキュリティ企業DEVCOREが輝いた。DEVCOREは50.5ポイントと505,000ドルを獲得し、2位のSTARLabs SG(25ポイント、242,500ドル)、3位のOut Of Bounds(12.75ポイント、95,750ドル)を大きく引き離した。初日から主導権を握ったDEVCOREは最終日も安定した成果を維持し、圧倒的な強さを見せた。 注目の攻撃成果 今大会で最高額の賞金を獲得した攻撃のひとつは、Orange TsaiことCheng-Da Tsai(DEVCORE所属)によるMicrosoft Exchangeへの攻撃だ。3つのバグを連鎖させることでSYSTEM権限でのリモートコード実行(RCE)を達成し、200,000ドルを獲得した。複数のバグを組み合わせる「バグチェーン」戦術は今大会全体を通じて多くのチームが採用した手法でもある。 同じく200,000ドルを獲得したのはSTARLabs SGのNguyen Hoang Thachで、VMware ESXiに対してメモリ破壊脆弱性を利用したクロステナントのコード実行を成功させた。DEVCOREのsplitlineはMicrosoft SharePointに対して2つのバグを連鎖させ100,000ドルと10ポイントを獲得。そのほか、Windows 11やRed Hat Enterprise Linuxも複数チームから攻撃を受けた。 今大会で特筆すべき点として、AIコーディングエージェントへの攻撃が挙げられる。OpenAI Codexは3つの独立したチームによって異なる手法で攻略され、Anthropic Claude Codeも攻撃対象となった。LLMカテゴリーが正式な競技対象に加わったことで、AIシステムのセキュリティリスクが広く実証された形となった。 攻撃手法と今後の対応 3日間で確認された主な攻撃手法には、整数オーバーフローを利用した権限昇格、Use-After-Free(解放後使用)メモリ脆弱性、未初期化メモリの悪用、外部からの制御フロー操作などが含まれる。複数の脆弱性を組み合わせるバグチェーン戦術は高難度ターゲットの攻略において特に有効であることが改めて示された。 日程別の賞金額は初日が523,000ドル(24件)、2日目が385,750ドル(15件)、3日目が389,500ドル(8件)で、初日に最も多くのゼロデイが集中した。今大会で発見・実証されたすべての脆弱性は、Zero Day Initiativeの慣例に従い各ベンダーへ通知済みで、90日間の開示猶予期間内にパッチの提供が求められる。エンタープライズ製品からAIシステムまで広範なターゲットでゼロデイが次々と発見された今大会の結果は、業界全体のセキュリティ強化に向けた重要な知見となる。

May 20, 2026

Microsoft Exchange ServerのXSS脆弱性CVE-2026-42897が悪用確認、CISAがKEVに追加し連邦機関に5月29日までの対応を義務化

概要 Microsoftは2026年5月15日、オンプレミスのMicrosoft Exchange Serverに存在するスプーフィング脆弱性(CVE-2026-42897)が野生で活発に悪用されていることを公式に認めた。同日、米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)はこの脆弱性を「既知悪用脆弱性(KEV)カタログ」に追加し、連邦民間行政機関(FCEB)に対して5月29日までの緩和措置適用を義務付けた。CVSSスコアは8.1と高く評価されており、迅速なパッチ適用が強く求められている。この脆弱性は2026年5月のPatch Tuesdayのわずか2日後に悪用が確認されており、攻撃者が新規パッチに対してもすぐに動き出す現状を浮き彫りにした。 脆弱性の詳細と攻撃手法 CVE-2026-42897は、Outlook Web Access(OWA)におけるクロスサイトスクリプティング(XSS)に由来するなりすまし(スプーフィング)脆弱性である。根本原因はWebページ生成時の入力値の不適切な中和にあり、認証されていない外部の攻撃者がネットワーク越しにスプーフィング攻撃を行うことを可能にする。攻撃の成立には受信者側でのユーザー操作が必要となる。具体的には、攻撃者が細工した悪意あるメールをターゲットに送信し、受信者がOWAでそのメールを開いた際に特定の条件が重なると、ブラウザのコンテキスト上で任意のJavaScriptコードが実行される。なおMicrosoftは「特定のインタラクション条件」の具体的内容を開示していない。Exchange Onlineは影響を受けず、オンプレミス環境のみが対象となる。 影響を受けるバージョン 本脆弱性の影響を受けるのは以下のオンプレミス版Exchange Serverのみであり、クラウド版のExchange Onlineは影響を受けない。 Exchange Server 2016(CU23を含む全更新レベル) Exchange Server 2019(CU14 / CU15を含む全更新レベル) Exchange Subscription Edition RTM 対応策と推奨アクション 現時点(2026年5月15日時点)で恒久的なセキュリティ更新プログラムはリリースされておらず、Microsoftは開発中としている。管理者は以下の暫定的な緩和策を即座に適用することが求められる。 Exchange Emergency Mitigation Service(EEMS): Exchange Server 2019以降ではデフォルトで有効化されており、自動的に緩和策が適用される場合がある。 Exchange on-premises Mitigation Tool(EOMT): Microsoftが提供するスクリプトを手動で実行し、既知の脆弱性パターンを遮断する。 Exchangeのゼロデイ脆弱性はメール・認証情報・業務ワークフローへのアクセスを攻撃者に与えうることから、OWAを利用するオンプレミス組織はリスクが特に高い。セキュリティチームは緩和策の適用状況を確認し、Microsoftの恒久パッチリリースを注視する必要がある。

May 18, 2026

Pwn2Own Berlin 2026初日:Edge・Windows 11・AIゲートウェイで24件のゼロデイを実証、52万3,000ドルを授与

概要 2026年5月14日、OffensiveCon会場で開幕したPwn2Own Berlin 2026の初日に、セキュリティ研究者が24件のゼロデイ脆弱性を実証し、合計52万3,000ドルの賞金が支払われた。22エントリーがMicrosoft Edge、Windows 11、各種AIプラットフォームなど広く使われる製品を標的とし、賞金総額100万ドル以上が用意されたコンテストにおいて幸先の良い初日となった。昨年のベルリン大会の初日と比較しても高水準であり、大会3日間の合計では2025年の107万8,750ドルを超えるペースとなっている。 最大の成果:DEVCOREによるEdgeサンドボックスエスケープ 最高額となる17万5,000ドルを獲得したのは、DEVCOREリサーチチームのOrange Tsai(Cheng-Da Tsai)氏だ。同氏はMicrosoft Edgeに対して4つのロジックバグを連鎖させたエクスプロイトでサンドボックスエスケープを達成した。メモリ破壊を用いず純粋にロジックの欠陥だけを組み合わせた点が技術的に高く評価されており、17.5 Master of Pwn ポイントも獲得。DEVCOREチームは初日終了時点でチームトータル20万5,000ドルを積み上げ、リーダーボード首位に立っている。2位はIBM X-ForceのValentina Palmiotti氏で7万ドルを獲得した。 Windows 11への攻撃と他の成果 Windows 11は初日だけで3チームによる権限昇格に成功した。AngelboyとTwinkleStar03(DEVCORE)がそれぞれ3万ドルを獲得し、独立したルートでヒープベースのバッファオーバーフローやUse-After-Free、アクセス制御の不備を利用した攻撃も実証された。Marcin Wiązowski氏とGMOサイバーセキュリティの河根謙太郎氏もそれぞれ3万ドルを獲得した。IBM X-ForceのPalmiotti氏はNVIDIA Container Toolkitに対するエクスプロイトで5万ドル、Red Hat Linux for Workstationsで2万ドルを獲得した。NVIDIA Megatron Bridgeに対してはSatoki Tsuji氏とhaehae氏がそれぞれ2万ドルを獲得し、過剰に許可されたアローリストとパストラバーサルの欠陥を突いた。 AI製品が新たな主要標的に 今大会の特徴として、AIゲートウェイやAI開発ツールが重要なカテゴリとして設けられた点が挙げられる。LiteLLM(AIゲートウェイ)はk3vg3n氏がSSRF(サーバーサイドリクエストフォージェリ)とコードインジェクションを組み合わせたフルチェーン攻撃で4万ドルを獲得し、AIインフラへのシステム完全制御を実証した。OpenAI Codexに対しては2チーム(Compass SecurityとDoyensecのmaitai氏)がそれぞれ4万ドルを獲得した。LM StudioはSTARLabs SGが4万ドルを得た。Chromaデータベースもhaehae氏が攻略し2万ドルを獲得している。AIサービスの急速な普及を反映し、脆弱性研究の対象が従来のOSやブラウザから生成AIインフラへと拡大していることを示す結果となった。 今後の影響 発見されたゼロデイ脆弱性はイベント終了後、TrendMicroのZero Day Initiativeを通じてベンダーに通知され、ベンダーは90日以内にパッチを提供する必要がある。Pwn2Own Berlin 2026は5月16日まで3日間にわたって開催されており、残る2日間でさらなる脆弱性実証が行われる見込みだ。初日の成果は、エンタープライズ環境で広く使われるOSやブラウザだけでなく、急速に採用が進むAIツール・ゲートウェイにも深刻なゼロデイリスクが存在することを改めて浮き彫りにした。

May 18, 2026