NISTがGoogle DeepMind・Microsoft・xAIのAIモデルをリリース前にセキュリティ評価へ、国家安全保障リスク審査を拡大
概要 米国標準技術研究所(NIST)傘下のAI標準・イノベーションセンター(CAISI)は2026年5月5日、Google DeepMind・Microsoft・xAIとの間でフロンティアAIモデルの国家安全保障テストに関する合意を締結したと発表した。この合意により、3社はリリース前の未公開モデルを政府の科学者に提供し、セキュリティリスクの評価を受けることになる。CAISIはすでにOpenAIおよびAnthropicとの同様の合意を2024年(バイデン政権下)に締結しており、今回はその枠組みを主要な大手AI企業全体に拡大した形となる。 CAISIのChris Fall所長は「独立した厳密な測定科学は、フロンティアAIとその国家安全保障への影響を理解するうえで不可欠だ」と述べ、評価の独立性と厳密性を強調した。今回の合意はトランプ政権が昨年7月に示した「AIモデルを国家安全保障リスクの観点から審査する」との公約の実現でもある。 評価の枠組みと手法 CAISIが実施する評価は、モデルのリリース前と公開後の両フェーズをカバーする。特筆すべきは、開発企業が安全ガードレールを部分的あるいは完全に取り除いたバージョンのモデルを政府に提供することが認められている点だ。これにより、制約のない状態でのモデルの潜在的リスクを測定することが可能となる。評価は機密環境(クラシファイド環境)で行われ、生物・化学兵器への悪用可能性や重要インフラに対するサイバー攻撃リスクが主要な評価項目となっている。 CAISIはこれまでに40件以上のAIモデル評価を完了しており、未公開モデルの審査実績も積み重ねている。過去にはDeepSeekの中国製モデルを評価し、精度・セキュリティ・コスト効率のいずれにおいても課題があることを特定した。省庁横断の調整機関として2024年11月に設立されたTRAINSタスクフォースが、政府全体にわたる評価活動を統括している。 政策的背景と業界への影響 今回の動きは、強力なAIモデルに関する国家安全保障上の懸念が高まる中での政策的転換でもある。トランプ政権は当初、AI規制の緩和による技術革新の加速を方針としていたが、AnthropicのMythosモデルの悪用リスクが国家安全保障当局者の懸念を招いたことを受け、より積極的な監視体制へと舵を切った。 なお、国防総省(DoD)はAnthropicとは別ルートで7社のテック企業と機密AIシステムに関する合意を締結しているが、Anthropicはトランプ政権との倫理的対立を理由に除外されている。DoDは2026年3月にAnthropicを安全保障上のリスク企業として指定しており、CAISIへの参加がすなわち国家との関係維持を保証するわけではないことを示している。 業界アナリストのNick Patience(The Futurum Group)は、政府との連携状況が「AIの調達における必須指標」になりつつあると指摘し、未承認のベンダーは連邦政府との取引を目指す企業にとって「大きな感染リスク」となりうると警告している。