TypeScript 7.0が正式リリース、Go移植でビルド最大12倍高速化

概要 マイクロソフトは7月8日、コンパイラをGoで全面的に書き直したTypeScript 7.0を正式リリースした。従来JavaScriptで実装されていたコンパイラをネイティブコードに移植したことで、マイクロソフトは「10倍高速なネイティブ移植版」と位置づけている。6月18日にリリース候補(RC)版が公開されてから約3週間でのGA(一般提供)到達となった。既存の型チェックの挙動やコマンドライン操作との互換性は維持されており、npm install -D typescript@rcでRC版を試していた開発者は、正式版へ問題なく移行できる。 パフォーマンスの詳細 実プロジェクトでのベンチマークでは劇的な速度向上が確認されている。VS Codeのビルドは125.7秒から10.6秒(11.9倍)、Sentryは139.8秒から15.7秒(8.9倍)、Playwrightは12.8秒から1.47秒(8.7倍)に短縮された。メモリ使用量も6〜26%削減され、VS Codeの場合は5.2GBから4.2GBに減少している。エディタ体験も改善し、VS Codeでファイルを開いてからエラー検出が完了するまでの時間は17.5秒から1.3秒へと大幅に短縮された。この高速化は、解析・型チェック・出力など多くの処理段階を並列実行できるアーキテクチャによるもので、ファイル間の処理をほぼ独立させることで大規模コードベースでのスケーラビリティを高めている。並列化を制御する--checkers(デフォルトでワーカー4つ)や、プロジェクト参照のビルドを並列化する--buildersといった新フラグも導入されたほか、デバッグや資源制約環境向けに--singleThreadedフラグも用意された。ファイル監視機能もParcelのウォッチャーをGoに移植する形で刷新されている。 破壊的変更と設定のデフォルト変更 7.0では設定のデフォルト値が大きく変わっている。strictモードがデフォルトで有効になったほか、moduleのデフォルトはesnext、typesは(従来の自動スキャンから)空配列[]、rootDirは./となった。また非推奨とされていた機能は明確なエラーを返すようになり、ES5ターゲットの廃止、AMD/UMDモジュールの非対応、classicモジュール解決の撤廃、baseUrlの非サポートなどが該当する。細かな仕様変更としては、テンプレートリテラル型がUnicodeのコードポイントを自然な形で保持するようになった点も挙げられ、例えば"😀abc"はUTF-16のサロゲートペアではなく["😀", "abc"]として分割される。 エコシステムへの影響と今後の展望 一方で、Vue、Svelte、Astro、MDX、Angularのテンプレートなど、プログラマティックAPIを必要とするフレームワークは現時点でTypeScript 7を利用できない。これは安定したプログラマティックAPIがまだ提供されておらず、7.1で導入予定であるためだ。当面の回避策として、TypeScript 7のCLIとTypeScript 6.0を併用し、エディタ側のサポートを6.0で担う運用が推奨されている。typescript-eslintのようなツール向けには、@typescript/typescript6パッケージがtsc6実行ファイルを提供し、名前空間の衝突を避けつつTypeScript 6.0のAPIに並行アクセスできるようにしている。実運用での検証も進んでおり、Slackはマージキューの待ち時間を40%削減しCIの型チェックを7.5分から1.25分に短縮、Vantaは大規模プロジェクトで9倍の高速化、マイクロソフトのニュースサービス部門はCIビルドで月400時間の削減、Canvaはエラー検出時間を58秒から4.8秒に短縮したと報告している。マイクロソフトは7.0リリース後に機能開発を再開し、3〜4か月ごとに新版を出す方針で、次のTypeScript 7.1ではエンベデッドフレームワーク向けの新しいプログラマティックAPIが導入される見込みだ。

July 10, 2026

ECMAScript 2026が正式承認、Math.sumPreciseなど数値・イテレータ・配列関連の新機能を追加

概要 Ecma Internationalは2026年6月30日、JavaScriptの言語仕様であるECMAScript 2026(第17版)を正式に承認した。ECMAScriptはJavaScriptの標準仕様であり、毎年6月に新版が承認されるのが恒例となっている。今回の第17版では、数値計算、イテレータ、配列、Map/WeakMap、バイナリデータのエンコーディング、JSONの扱いといった幅広い領域にわたって新しいメソッドが追加され、開発者がより効率的かつ安全にコードを書けるようにする改善が盛り込まれた。 技術的な詳細 新機能の中でも注目されるのがMath.sumPreciseで、大きさの異なる数値を合計する際に生じやすい精度損失を最小限に抑えながら加算処理を行えるようにするメソッドだ。イテレータ関連ではIterator.concatが追加され、複数のイテレータを1つに連結する処理をシンプルに記述できるようになる。非同期処理の分野ではArray.fromAsyncが導入され、非同期イテラブルやその他の非同期データソースから直接配列を構築できるようになった。 エラー処理まわりではError.isErrorが追加され、あるオブジェクトがエラーオブジェクトであるかどうかを確実に判定できるようになる。また、MapおよびWeakMapには、指定したキーが存在しない場合にデフォルト値を返す/設定する機能が拡張された。バイナリデータの扱いでは、Uint8Arrayが16進数文字列やBase64エンコード文字列との相互変換をネイティブにサポートするようになり、これまでライブラリに頼っていた処理を標準機能だけで完結できるようになる。加えて、JSON.parseおよびJSON.stringifyにもより細かい制御を可能にする強化が加えられた。 今後の展望 これらの新機能はいずれも実用上の細かな不便を解消するものであり、大規模な言語仕様の刷新というよりは、日々の開発でよく遭遇する課題に対する地道な改善の積み重ねと言える。ECMAScriptは今後も毎年6月に新版が承認される予定であり、各機能はまずステージプロセスを経て提案され、主要ブラウザやNode.jsなどのランタイムでの実装が追随していく見込みだ。

July 9, 2026

Apple、macOS 27「Golden Gate」でカーネル開発にSwiftを採用しメモリ安全性を強化へ

概要 Appleは、今秋リリース予定の次期macOS 27「Golden Gate」において、システムカーネルの開発にSwift言語を採用すると発表した。この方針はWWDC26で表明され、7月2日付のSwift公式ブログで改めて説明されている。Swiftはメモリ安全性を備えたコンパイル型言語で、バッファオーバーフローやメモリリーク、不正なメモリの読み書きといった脆弱性の温床となる問題を防げる設計になっている。読みやすく書きやすい言語仕様を持ちながら、ハードウェアに近い低レイヤのシステムソフトウェア開発にも対応できることから、C・C++・Objective-Cの後継として位置づけられている。 技術的な詳細 Appleはこれまでもファームウェアやコプロセッサ、各種ドライバの開発にSwiftを採用してきた実績があり、今回はその適用範囲をカーネルレベルにまで拡大する形となる。あわせて、既存のネットワーキングスタックに含まれるQUICトランスポート層についても、Swiftを用いて全面的に書き直すことが明らかにされた。実装にはAppleが開発した非同期・ノンブロッキング型のフレームワーク「SwiftNIO」を採用しており、高いパフォーマンスとスケーラビリティ、さらにクロスプラットフォームでの互換性向上を狙っているという。 業界的な背景 今回の決定は、ソフトウェア業界全体で進むメモリ安全言語への移行の流れに沿ったものだ。米国政府による2024年の声明を皮切りに、Linuxカーネル開発におけるRustの採用や、マイクロソフトがWindows開発の一部でRustを利用する動きなど、メモリ管理に起因する脆弱性への対策が業界横断的な優先課題となっている。Appleがカーネルという最も低レイヤかつセキュリティ上重要な領域にSwiftを持ち込むことは、こうした潮流の延長線上にある取り組みといえる。 今後の見通し macOS 27は今秋に正式リリースが予定されており、カーネル開発へのSwift採用やQUICトランスポート層の刷新がどの程度実際の製品に反映されるかが注目される。メモリ安全性の強化はセキュリティ面での恩恵だけでなく、開発生産性やクロスプラットフォーム対応にも波及する可能性があり、Apple製品にとどまらず今後のシステムプログラミング言語選定の議論にも影響を与えそうだ。

July 8, 2026

VS Code 1.127リリース、ブラウザ操作エージェントがGAへ ターミナルのサンドボックス実行も追加

概要 Microsoftは2026年7月1日、Visual Studio Codeの最新版となる1.127をリリースした。今回のアップデートでは、AIエージェントによるブラウザ操作機能が正式版(GA)となったほか、サイトごとのブラウザ権限管理、macOS/Linux向けターミナルコマンドのサンドボックス実行、複数チャットセッションの整理機能など、AIエージェントを軸にした開発体験の強化が中心となっている。 ブラウザ操作機能のGA化とサイトごとの権限管理 エージェントが統合ブラウザ上でWebアプリをビルド・テストできる機能が、設定workbench.browser.enableChatToolsのもとで正式提供された。この機能により、エージェントは外部のMCPサーバーを介さずに、スクリーンショットの取得、ページ内要素の選択、テキスト入力、ページ遷移といった操作を直接実行できる。 これに合わせて、サイトごとのブラウザ権限設定も新たに導入された。位置情報、カメラ・マイク、加速度計・ジャイロスコープ、クリップボード、Bluetooth・USB・シリアル・HIDといった各種Web APIへのアクセスについて、サイトごとに許可・ブロックを選択でき、「Site Permissions」メニューから一元管理できる。 ターミナルのサンドボックス実行とAgentsウィンドウの改善 セキュリティ面では、macOSおよびLinux環境において、エージェントが実行するターミナルコマンドをサンドボックス内で実行できるようになった。ネットワークアクセスのブロックやファイルシステムアクセスの制限を伴う環境でコマンドを動かすことで、サンドボックス外での実行が必要な場合にのみ承認を求める仕組みとなり、これまで頻発していた承認プロンプトを削減しつつ安全性を確保している。 Agentsウィンドウでは、関連するセッションをグループ化してヘッダーで折りたたんだり、ドラッグ&ドロップで並び替え・グループ追加・ピン留めを行えるようになった。また、1つのエージェントセッション内で複数の独立したチャットを同時に実行できるようになり、各チャットの進捗や変更内容がまとめて集約表示される。CI失敗やプルリクエストのコメントに対しては、チャット入力欄上部に表示される「Chat input banner」から直接対応できるほか、コード行にホバーすると表示される「Add Feedback」グリフを使って、エージェントへのフィードバックをインラインコメントとして挿入することも可能になった。 今後の展望 このほか、サブエージェントが消費したAIクレジットをホバー表示で確認できるコスト管理機能や、カスタム指示が無視される原因や応答遅延を診断する/troubleshootコマンドも追加された。エンタープライズ向けには、managed-settings.jsonによるCopilot設定のファイルベース配信や、BrowserChatTools・ChatAgentNetworkFilterといったポリシーによるブラウザツール制御機能も強化されており、組織単位でのAIエージェント機能の管理・統制がより容易になった。なお、組み込みのOllamaプロバイダーは非推奨となり、公式拡張への移行が推奨されている。一連の変更から、VS Codeがエージェントによる自律的な開発作業を前提に、安全性と管理性を両立させる方向へ舵を切っていることがうかがえる。

July 7, 2026

Astro 7.0正式リリース、Rust製コンパイラとVite 8/Rolldown採用で最大61%高速化

概要 静的サイトジェネレータ「Astro」の開発チームは、メジャーバージョンとなる「Astro 7.0」を正式リリースした。今回のアップデートの目玉は、コアコンパイラのRust化、ビルドシステムのVite 8への移行、そして新バンドラ「Rolldown」の採用という3つの大きな変更だ。これらの改善により、Astro 7はこれまでのバージョンと比較して動作が15%から最大61%高速になったとされている。 技術的な詳細 コアコンパイラのRust化は、Astro 6で実験的に導入されていたRust製コンパイラを正式採用する形で実現した。従来はGo言語で書かれたコンパイラをWebAssemblyとして実行していたが、これを新たに書き下ろしたRust製の実装に置き換えたことで、処理速度の向上につながっている。 ビルドシステム面では、Vite 8へのアップグレードに伴い、開発時に使われていた「esbuild」と本番ビルド時に使われていた「Rollup」という二層構造のバンドラ体制が、単一の「Rolldown」に統合された。RolldownはRust製のバンドラで、esbuildに匹敵する高速性を持ちながら、Rollupで使われてきた多様なプラグイン資産をそのまま利用できる点が特徴とされている。開発時と本番ビルド時でツールチェーンが分かれていた従来の構成が一本化されたことで、ビルドパイプライン全体の効率化が図られた形だ。 背景:AstroとViteの資本関係 今回の刷新の背景には、AstroとViteがいずれもCloudflareの傘下に入ったという経緯がある。Astroは2026年1月に、Viteは2026年6月にそれぞれCloudflareに買収されており、両プロジェクトが同じ企業グループの中で開発される体制となった。Astro開発チームは、内部で採用している重要なツールが同じ社内のチームによって開発されるようになったことで、今後さらなる連携強化や新機能の展開が期待されるとコメントしている。 なお、今回の高速化について具体的なベンチマーク内訳や個別の破壊的変更の詳細は現時点では公開されていない。CloudflareグループとしてのAstro・Viteの今後の統合的な発展に注目が集まる。

July 6, 2026

TypeScript 7.0 RC公開、Go言語への書き直しで最大10倍の速度向上を達成

概要 Microsoftは2026年7月1日、TypeScript 7.0のリリース候補(RC)を正式に公開した。このバージョンはJavaScript/TypeScriptで書かれた従来の実装をGo言語で全面的に書き直したものであり、TypeScript 6.0と比較して最大10倍の速度向上を実現している。実際の測定例として、VS Codeのビルド時間が77秒から7秒へと大幅に短縮されており、実用的な場面での改善効果が明確に確認されている。安定版のGA(一般提供)はRCから約1か月以内に予定されており、正式リリースが近づいている。 技術的な詳細 速度向上の主な要因はネイティブコードによる実行速度の向上と、並列処理の大幅な強化にある。TypeScript 7.0では、解析・型チェック・出力生成を含む多くのステップをファイルをまたいで並列実行できるようになった。これにより、大規模なコードベースにおいて特に顕著なパフォーマンス改善が期待される。 RCは以下のコマンドでインストールできる。 npm install -D typescript@rc 既存のTypeScript 6.0との並行利用が必要な場合は、@typescript/typescript6パッケージが提供されており、tsc6コマンドで競合を回避しながら両バージョンを共存させることが可能だ。 今後の展望 プログラムAPI(TypeScriptコンパイラをプログラムから操作するAPI)は現時点ではRC版に含まれておらず、TypeScript 7.1での提供が予定されている。既存のツールやライブラリがTypeScriptコンパイラAPIに依存している場合は、7.1の登場を待つ必要がある。Go実装への移行は過去数年で最大規模のアーキテクチャ変更であり、コンパイラの速度ボトルネックに悩む大規模プロジェクトへの影響は大きいと見られる。

July 4, 2026

GodotエンジンがAI生成コードのコントリビューションを禁止——「開発者自身がコードを理解できない」を理由に新ポリシー

概要 オープンソースゲームエンジンGodotの開発チームは2026年6月30日、AI生成コードのプルリクエスト(PR)受け付けを実質的に禁止する新しいコントリビューションポリシーを発表した。新ポリシーでは、自律的なAIエージェントによるコードや「バイブコーディング」(AIに任せたコーディング)によるPRを提出した開発者はGitHubから自動的に追放されると明記されている。AIの使用は、コード補完や正規表現の生成など軽微な補助的作業に限定される。 禁止の背景と理由 リードメンテナーのRémi Verscheldeは以前より、AIが大量生成したPRを「消耗するだけでモチベーションを下げる無駄な時間」と評してきた。今回の新ポリシーでは、その理由が明確に述べられている。「AIはコードに責任を持てず、AIを多用する開発者は自分のコードを十分に理解できないため、レビューのフィードバックに対応できない」というのが主な根拠だ。AIコードのレビューは人間の成長につながらず、レビュアーのモチベーションを著しく低下させることも指摘されている。 新ポリシーの具体的なルール 新ポリシーは主に2つの制限を設けている。まず、マージ済みPRが3件以下の新規コントリビューターは、メンテナーの明示的な承認なしに新機能の追加や大規模なリファクタリングを提出できなくなった。これは、AIツールを多用する経験の浅い開発者を対象としたものだ。次に、AI生成コードについては、自律的なエージェントが生成したコードや実質的な部分でAIが生成したコードの提出を禁止する。これに加えて、PR上での議論を含めた開発者間のコミュニケーションにおいてもAI生成テキストの使用は禁止されている(翻訳ボットは例外)。 業界への示唆 Godotの決定は、AI時代のオープンソース開発における「コード品質と責任」をめぐる問題提起として注目されている。インフォシスの会長Nandan Nilekaniも「ソフトウェア開発ライフサイクルにはまだやるべきことが多くあり、文脈こそが最も重要だ」と述べており、記事はこうした発言を引きながら、AIがその重要な文脈をまだ十分に把握できていない点を指摘している。「バイブコーディング」の限界を示す声は業界全体でも高まっている。Godotの対応は、急速に普及するAIコーディングツールに対して、OSS開発コミュニティが規律ある姿勢で向き合う先進的な事例となるかもしれない。

July 3, 2026

Git 2.55リリース:Rustサポートがデフォルトになり過去コミット修正用の新コマンドも登場

概要 Git 2.55が2026年6月29日に正式リリースされた。100名以上のコントリビューターが参加した本バージョンでは、Rustで実装されたコンポーネントがデフォルトでビルドされるようになったほか、過去コミットへの変更適用を簡略化する新コマンドgit history fixupが追加されるなど、開発者体験を向上させる多くの機能が盛り込まれた。 git history fixup:従来の煩雑な操作を一本化 従来、ステージ済みの変更を過去の特定コミットに取り込む作業は、git commit --fixupとgit rebase --autosquashを組み合わせる二段階の操作が必要だった。Git 2.55で導入されたgit history fixup <commit>は、この一連の流れを単一コマンドで実現する。指定したコミット以降のコミット履歴を自動的に再生成するため、意図が明確になり操作ミスのリスクも低減される。 パフォーマンスとシステム統合の強化 ファイルシステムモニターのLinux対応: macOSやWindowsですでに利用可能だったファイルシステムモニターがLinuxでも利用できるようになった。Linuxのinotifyサブシステムを活用し、デーモンがファイル変更パスを監視することで、従来のリポジトリ全体スキャンに代わるより効率的なgit statusの高速化が実現された。 並列フック実行: hook.<name>.parallel = trueという設定を追加することで、リントやユニットテストといった独立した複数のpre-commitフックを並行実行できるようになった。同時実行数はhook.jobsパラメータで制御可能だ。 ビットマップ生成の高速化: リーチャビリティビットマップの生成アルゴリズムが最適化され、大規模リポジトリでの処理時間が約612秒から294秒へとほぼ半減した。疑似マージビットマップの改善によってトラバーサルのスピードアップを維持しながら、メタデータ生成のオーバーヘッドも削減されている。 インクリメンタルなマルチパックインデックス更新: git repack --write-midx=incrementalコマンドにより、大規模リポジトリのメンテナンス時にメタデータを全件書き換えずに段階的に更新できるようになった。幾何学的な再パック戦略と組み合わせることで、パックレイヤー数が対数的に保たれる。 そのほかの注目変更点 --graph-lane-limitオプションで過剰に広がるコミットグラフを抑制できるようになり、ログ表示の可読性が向上した。また、複数のリモートをまとめた「リモートグループ」への同時pushサポートにより、複数拠点へのデプロイ操作が効率化された。セキュリティ面ではサーバーからの端末制御シーケンスをマスキングする機能も追加されている。

July 2, 2026

Spring AI 2.0正式リリース——Java向けAIアプリ基盤が成熟、Spring Boot 4.1もgRPC・SSRF対策を追加

Spring AI 2.0 GAの概要 Spring AI 2.0が2026年6月12日に正式リリース(GA)となり、Maven Centralから利用可能になった。Spring Boot 4.0/4.1およびSpring Framework 7.0を前提とし、Javaエコシステム向けのAIアプリケーション開発基盤として大きく成熟した。Jackson 3へのアップグレードによりJSONシリアライゼーションが改善され、JSpecify注釈による完全なNull安全性も導入されている。オプション処理はビルダーパターンとイミュータブル設計で大規模にリファクタリングされ、コードの予測可能性が高まった。 対応するAIプロバイダーはOpenAI・Anthropic・Amazon Bedrock・Google GenAI・Mistral AI・DeepSeek・Ollamaなど多岐にわたり、各プロバイダーはSDK単一バージョンに統一されて依存関係が整理されている。Azure CosmosDBとのベクター検索統合もサポートされ、RAG(Retrieval-Augmented Generation)パターンの実装が容易になった。 エージェント機能とMCP統合 Spring AI 2.0ではエージェント開発向けの機能が強化された。ToolCallingAdvisorがアドバイザーチェーンに統合され、ツール呼び出しの全ラウンドトリップを一元管理できる。ToolSearchToolCallingAdvisorは数百ものツールへのスケーリングを可能にし、大規模なエージェント設計を支援する。またStructuredOutputValidationAdvisorは自動修正機能付きの構造化出力バリデーションを提供し、LLMの出力を型安全に扱うユースケースで活用できる。 Model Context Protocol(MCP)はAI統合の共通プロトコルとして定着しつつあり、Spring AIはMCP Java SDK 2.0.0を搭載した。@McpToolなどの注釈駆動プログラミングモデルが利用可能で、既存のSpringコンポーネントをMCPツールとして公開する作業が大幅に簡略化されている。コミュニティからはElevenLabsを使った音声統合、自己修正型の構造化出力、エージェントスキル構築に関するコンテンツも公開されており、実用事例の蓄積が進んでいる。 Spring Boot 4.1の主な新機能 Spring Boot 4.1も同時期にリリースされ、多数の機能追加とCVEパッチが含まれている。注目すべき新機能の一つがgRPCの自動設定で、NettyバックのスタンドアロンサーバーとHTTP/2上でのServlet統合の両方に対応する。これまでgRPCをSpring Bootと組み合わせるには手動設定が必要だったが、スターター依存関係と少量のプロパティ設定だけで動作するようになった。 セキュリティ面ではSSRF(Server-Side Request Forgery)対策としてInetAddressFilterが追加された。リアクティブおよびブロッキング両方のHTTPクライアントで特定アドレスへの送信リクエストをブロックでき、クラウド環境のメタデータエンドポイントへの意図しないアクセスを防ぐのに役立つ。その他のセキュリティ改善としてLDAP組み込みサーバーへのLDAPS(SSL)サポートやRabbitMQ StreamsへのSSL自動設定も含まれている。 MongoDB連携とKotlin 2.3サポート Spring Boot 4.1の目玉機能の一つがSpring BatchのMongoDBバックエンド対応だ。新たに追加されたspring-boot-starter-batch-data-mongodbにより、これまでバッチ処理のメタデータ保存にJDBCデータベースが必須だった制約が解消された。MongoDBのみで運用するチームが別途リレーショナルDBを維持する必要がなくなり、インフラの簡素化が期待できる。ただしMongoDBのトランザクションサポートのためにレプリカセット構成が前提となる点は注意が必要だ。 Kotlin対応ではKotlin 2.3.21とKotlin Serialization 1.11.0が採用された。またspring.datasource.connection-fetch=lazyプロパティによる遅延DataSource接続の設定が可能になり、不必要な接続初期化を避けてリソース消費を抑制できる。GraalVMネイティブイメージ向けのサポートも改善され、Spring Batchコンポーネントでランタイムヒントが自動登録されるようになった。一方でDerbyデータベースのサポートは非推奨化され、H2またはHSQLへの移行が推奨されている。 セキュリティリリースの加速と今後の展望 「This Week in Spring」でJosh Longは、2026年を通じてCVEパッチのリリース頻度が劇的に増加していることを強調した。AIが脆弱性の特定プロセスを大幅に効率化したことで、従来の月1〜2件から大量のCVEが報告されるようになっており、アプリケーションのアップグレードをMaven Centralへのパッチ反映後すみやかに行う重要性が増している。Spring AI 2.0とSpring Boot 4.1のリリースにより、JavaエコシステムはAI時代のアプリケーション開発に向けた成熟した基盤を持つこととなった。

July 1, 2026

Node.js 26.4.0リリース:仮想ファイルシステムサポートやパッケージマップなど多数の新機能追加

概要 Node.jsチームは2026年6月24日、Current版の最新リリースとなるNode.js 26.4.0を公開した。リリース担当はAntoine du Hamel(@aduh95)氏。本バージョンでは、仮想ファイルシステム(VFS)サブシステムの最小実装、パッケージマップを用いたモジュール解決、TLS証明書圧縮オプションなど、開発者の利便性とシステムの柔軟性を高める機能が複数追加された。 主要な新機能 仮想ファイルシステム(node:vfs) 最も注目すべき新機能は、node:vfs モジュールとして提供される仮想ファイルシステム(VFS)サブシステムの最小実装だ。これにより node:fs/promises のAPI呼び出しをマウントされたVFSインスタンスへディスパッチできるようになり、テストや組み込みシナリオでファイルシステムを仮想化する際の基盤となる。 パッケージマップによるモジュール解決 ローダーに**パッケージマップ(Package Maps)**機能が追加された(Maël Nison氏の貢献)。これはモジュール識別子の解決をカスタマイズする仕組みで、モジュールのエイリアスやリマップが柔軟に行えるようになる。大規模なモノレポ構成やカスタムモジュールロード戦略を採用しているプロジェクトに特に有用だ。 TLS証明書圧縮 Tim Perry氏が実装した certificateCompression オプションにより、TLSハンドシェイク時の証明書データを圧縮できるようになった。証明書サイズの削減によりネットワーク帯域幅の節約と接続確立の高速化が期待される。 その他の注目機能 FS改善: readFile() でユーザー提供のバッファを使用できるようになり、メモリ効率が向上(Matteo Collina氏) HTTP改善: closeIdleConnections() がpre-requestソケットもクローズするよう改善され、接続管理が最適化 NET強化: setKeepAlive() が TCP_KEEPINTVL と TCP_KEEPCNT をサポートし、TCPキープアライブの詳細な制御が可能に(Guy Bedford氏) dgram: bindSync() と connectSync() という同期メソッドが追加された FFI: AArch64およびx86_64向けの実験的な高速FFI呼び出しAPIが実装され、ほぼ全プラットフォームでのサポートも追加 パフォーマンス改善とバグ修正 パフォーマンス面では複数の最適化が施された。Buffer.prototype.copy() の高速化、simdutfを活用したUTF-8バイト長計算の高速化、WHATWGストリームのホットパスにおけるメモリ割り当ての削減、addAbortListener のオプションキャッシングによる高速化などが含まれる。 セキュリティ面では、CryptoモジュールにおけるHash._transformの未処理エラーの修正、BN_get_word エラーを無視しない修正(Crypto/TLS)、SQLiteのスタック使用後スコープバグの修正が行われた。バグ修正としては、WindowsでEPERMエラーをENOTEMPTYエラーとして誤扱いしない修正、URLSearchParams(null) が null= を正しく生成するよう修正なども含まれる。 依存関係の更新 依存ライブラリも複数アップデートされた。主なものとして npm 11.17.0、SQLite 3.53.2、libffi 3.6.0、acorn 8.17.0、ngtcp2 1.23.0、nghttp3 1.16.0が更新された。また blockList APIの安定性ステータスがリリース候補(Release Candidate)に引き上げられ、正式安定化に向けて一歩前進した。

June 27, 2026