カナダの核融合スタートアップGeneral FusionがSPAC合併でNasdaq上場へ、TIMEのGreenTech最優秀企業にも選出

概要 カナダ・バンクーバーを拠点とする核融合エネルギースタートアップGeneral Fusionは2026年1月、SPAC企業Spring Valley Acquisition Corp. III(Nasdaq:SVAC)との約10億ドル規模のビジネスコンビネーションを通じてNasdaqへの上場を目指すと発表した。実現すれば、世界初の上場純粋核融合企業となる。6月には、TIMEが選出する「2026年世界トップGreenTech企業」にも選ばれ、8,300社超の応募企業の中からトップの評価を受けた。 独自技術:Magnetized Target Fusion (MTF) General Fusionが開発するMagnetized Target Fusion(MTF)技術は、他の核融合アプローチで一般的に使われる超伝導磁石や高出力レーザーを使わない点が特徴だ。既存の産業用素材と機械的な圧縮機構を組み合わせた耐久性の高い設計により、費用対効果の高いエネルギー生産を目指している。現在稼働中のデモンストレーション機「LM26」は2025年初頭に稼働を開始し、商用規模の50%の直径でプラズマの機械的圧縮を実施している。同社は段階的にプラズマ温度を1 keVから10 keVへ引き上げ、最終的には核融合の持続的反応を示すLawson基準の達成を目標としている。 上場と今後の展望 2002年の設立以来、グローバルなエネルギー系ベンチャーキャピタルや業界リーダーから資金調達を続けてきたGeneral Fusionにとって、Nasdaq上場は事業拡大に向けた重要な節目となる。同社は2030年代半ばを目途に商業用核融合発電所の設置を目指しており、上場によって得られる資金をLM26の開発加速と商用化への道筋構築に充てる計画だ。核融合エネルギー分野全体への関心が高まる中、General FusionのTIME受賞と上場計画は、民間主導の核融合開発が新たな段階へ進みつつあることを示している。

June 15, 2026

NvidiaがVera CPUを8月から中国向けに出荷へ——GPU輸出規制下での新戦略

概要 米国の輸出規制によってH200 GPUの中国向け出荷が事実上停止している中、Nvidiaが独自開発のArm系サーバーCPU「Vera」を早ければ2026年8月から中国顧客に提供する方針であることが報じられた。ロイター通信によると、すでに注文受付が開始されており、中国の大手クラウド事業者を中心に強い関心が寄せられている。CPUはGPUと比べて輸出規制の適用範囲外となることが多く、今回の動きは規制環境に適応しながら中国市場での事業基盤を再構築する戦略的な判断とみられる。 顧客・市場の動向 AlibabaとByteDanceは、Nvidiaが2026年3月にVera CPUを発表した時点からすでに協業を進めている。ある大手クラウド事業者は、Vera CPUを2基搭載するサーバーを300台以上発注する計画があるとされており、需要の大きさがうかがえる。 Nvidiaは今年のCPU事業収益として約200億ドルを見込んでおり、CEO Jensen Huang氏はVera CPUをビジネスの転換点として位置づけている。会計年度2027年(2026年内)には400万基のVera CPUを出荷する計画で、実現すれば「世界最大のCPUサプライヤー」となるポテンシャルを持つとしている。 技術・サプライチェーン Vera CPUはArm系アーキテクチャを採用した88コアのサーバー向けプロセッサで、TSMCの3nmプロセスを用いて製造される。メモリはSK Hynixが供給する。 競合のIntelは中国顧客向けに6か月に及ぶ納期遅延を警告しており、AMDも需要が供給を上回り続ける状況を報告している。こうしたサーバーCPU市場の供給制約が続く中、Nvidiaの参入は中国市場に限らず、グローバルでの競争構図を大きく変える可能性がある。 背景と今後の見通し AIワークロードの重心がモデルのトレーニングから推論(インファレンス)へと移行し、エージェント型AIの普及が加速する中、大規模なCPUリソースへの需要が急増している。この潮流はNvidiaにとって、GPU中心のポートフォリオを補完する形でCPU事業を拡大する好機となっている。 輸出規制という制約の中でも中国市場との関係を維持しようとするNvidiaの姿勢は、地政学的緊張が続く半導体産業において、各社がいかに柔軟な製品戦略を求められているかを示す事例といえる。今後、米国政府がVera CPUを規制対象に含めるかどうかが、同社の中国戦略の行方を左右する重要な焦点となる。

June 14, 2026

SpaceX、Nasdaqに上場し時価総額2兆ドルの市場デビュー——イーロン・マスクが世界初の兆万長者に

史上最大のIPOを達成 SpaceXは2026年6月12日、ティッカーシンボル「SPCX」でNasdaqへの上場を果たした。IPOによる調達額は750億ドル(約10.5兆円)に上り、これは株式市場における史上最大規模のIPOとして記録された。同社はイーロン・マスク氏が2002年に設立した民間宇宙開発企業で、Falcon 9ロケットやStarshipの開発、Starlinkブロードバンドサービスの運営などで知られる。長年にわたり非上場を維持してきたが、20年以上の歳月を経てついく公開市場へのデビューを果たした形だ。 初日の株価急騰と時価総額2兆ドル 上場初日の取引でSpaceX株は大幅な上昇を記録し、時価総額は2兆ドル規模に達したと報じられている。これはAppleやMicrosoftといった米国を代表する超大型株と肩を並べる水準であり、航空宇宙・防衛セクターではかつてない規模の企業価値が市場によって認められたことを意味する。好調な株価を受け、同社最大株主であるイーロン・マスク氏の純資産も急増し、世界で初めて純資産が1兆ドルを超えた人物、いわゆる「兆万長者(トリリオネア)」となったと各メディアが伝えている。 宇宙産業と市場への影響 SpaceXの上場は、民間宇宙産業における歴史的な転換点として広く受け止められている。同社はStarlinkを通じた衛星インターネット事業で安定した収益基盤を確立しており、今後のStarship商業運用やNASAとの有人月面探査計画(Artemis)への参加も成長の原動力として期待されている。今回のIPOで得た資金は次世代ロケット開発や火星探査計画の加速に充てられる見通しで、宇宙開発競争における同社の優位性をさらに強化するとみられる。また、競合するBlue OriginやRocket Labなど他の民間宇宙企業にも、投資家の関心を集めるという意味で間接的な恩恵をもたらす可能性がある。

June 13, 2026

半導体株が一日で1.3兆ドル消失——Broadcom決算ミスが連鎖売りを誘発、週明けには急反発

急落の発端——Broadcomの決算ミスと据え置かれたガイダンス 2026年6月3日、Broadcomが発表した2026年度第2四半期決算が半導体セクター全体を揺るがす引き金となった。同社のAIネットワーキング部門の売上高は41億ドルにとどまり、アナリスト予想の48億ドルを約14%下回った。さらにCEOのHock Tan氏が2027年の業績ガイダンスを引き上げず据え置いたことが、市場参加者が期待していた「連続的な上方修正」というシナリオを崩す形となった。 翌6月4〜5日にかけて、この結果が連鎖的な売りを誘発。Broadcom自身の株価は14%超下落し、時価総額で800〜3,000億ドル規模の損失を記録した。フィラデルフィア半導体指数(SOX)は6%超下落し、Nasdaq総合指数も4%の下げとなった。 市場への波及——1.3兆ドルの時価総額が消失 売りはBroadcomにとどまらず、半導体・AI関連銘柄全体に波及した。Intelは11.28%下落して99.17ドル、AMDは10.86%下落して466.38ドルとなった。NvidiaもAI需要の中核銘柄として6%超下落し、単独で約7,400億ドルの時価総額を失った。Micronも約7%下落して1,004ドルとなった。2日間の累計では、半導体・AI関連株全体から消失した時価総額は1.3兆ドルに達した。 背景には、セクター全体のバリュエーションが株価収益率50倍を超える水準まで積み上がり、「AIチップ需要の指数関数的な成長が永続する」という前提で価格付けがされていたという構造的な問題がある。加えて、予想を上回る雇用統計が利下げ観測を後退させたことや、原油価格が1バレル97ドルを超える水準で推移するといったマクロ経済面の逆風も売りを加速させた。 週明けの急反発——「過剰反応」との市場の総括 急落から3日後、主要銘柄は急速に値を戻した。Intelは8.5%上昇し、Micronも9%回復するなど、パニック売りに対する修正が起きた。この反発を後押しした論拠として、Broadcomの実態はむしろ強固という指摘がある。同社のAIチップ売上高は108億ドルで前年同期比143%増という極めて力強い成長を記録しており、「ガイダンスを引き上げなかったから売る」という判断は市場心理によるものだったとの分析が広がった。 AMDのMI300X アクセラレーターはハイパースケーラーへの採用が進んでいる実態に変化はなく、IntelもAlphabet(Google)から製造契約を獲得するなど、個別企業の基礎的な状況は売却を正当化するほど悪化していなかったとされる。 AI需要の長期トレンドは変わらず アナリスト各社は、今回の急落がAI半導体需要の構造的な転換を示すものではないとの見方で一致している。グローバル半導体市場は1兆ドル規模へ向かって成長を続けており、AIチップがその50%超を占める見通しは変わっていない。主要テック企業の2026年のインフラ投資額は3,000億ドルを超える計画で推移しており、今回の株価急落は高水準のバリュエーションの調整局面と位置付けられている。今後の半導体株の行方は、各社の追加決算発表、FRBの金融政策の行方、そして企業によるAI導入の加速ペースによって左右される見込みだ。

June 12, 2026

GitLabが従業員の14%・約350人を削減——「AIエージェント時代」に向けた大規模組織再編

概要 GitLabは2026年6月3日、全従業員の約14%にあたる約350人の削減と22か国からの事業撤退を発表した。同社CEOのビル・ステープルス氏はこの決定を「AIエージェント時代」への対応に向けた戦略的再編と位置づけており、削減によって生み出される経営資源を研究開発とAI製品の強化に集中投資する意向を示した。22か国からの撤退により、同社の地理的フットプリントは約37%縮小する見込みだ。 削減の背景と戦略的意図 ステープルス氏は「エージェントはマシンスケールで動作しており、競合他社を限界にまで追い詰めている」と語り、AI駆動のエージェント型ワークロードが開発者向けインフラに前例のない負荷をかけている実態を強調した。この変化に対応するため、GitLabはいわゆる「gitの世代的な再構築(generational rebuild of git)」と称する大規模なインフラ刷新に着手する。具体的には、未指定のAI研究機関との連携によるインフラ設計、エージェント向けに最適化されたAPI構築、そしてガバナンス機能をプラットフォームへ直接統合することが柱となる。 AI製品への集中投資 削減で得られるコスト節約の大部分は事業への再投資に充てられ、特にGitLab Duo Agent Platformの開発が優先される。同プラットフォームはAnthropicのClaudeモデル、AWS、Google Cloudとの統合を推進しており、エージェント型AIが大量のコードレビュー・CI/CDパイプライン実行・セキュリティスキャンなどを自律的にこなせる環境を整備する。再編コストは3,000万〜3,500万ドルと見込まれており、4四半期にわたって計上される予定だ。 財務状況と見通し 今回の発表と前後して公表されたQ1(2026年度第1四半期)決算では、売上高が2億6,420万ドルと前年同期比23%増を記録し、アナリスト予想の2億5,460万ドルを上回った。グロスマージンは88%、非GAAP営業利益率は前年の12%から14%に改善しており、収益性の向上が確認されている。人員削減は業績の悪化ではなく、急速に変化するAI市場での競争優位性を確保するための先手を打つ戦略的判断と位置づけられている。

June 9, 2026

Apple WWDC 2026開幕——SiriをGemini AIで全面刷新、iOS 27・macOS 27とTim Cook最後の基調講演

概要 Appleは2026年6月8日、年次開発者会議「WWDC 2026」を開幕した。完全オンライン形式・無料参加で6月12日まで開催される今回の基調講演では、GoogleのGeminiモデルを基盤とした新Siriの大規模リニューアルが最大の目玉として発表された。Tim Cook CEOは「よりパーソナライズされたSiriをユーザーに届けることを楽しみにしている」とコメント。また、今回の基調講演はCook氏にとって最後のものとなり、2026年9月からJohn Ternusが後継CEOに就任することが正式に確認された。 新Siri:Gemini統合とAI機能の全面刷新 今回のSiri刷新の核心は、2026年1月に締結されたGoogleとの提携によるGeminiモデルの採用だ。新Siriは独立したアプリとして提供され、「拡張機能(Extensions)」によりテキストと音声の両モードに対応する。Dynamic Island内に「Search or Ask」プロンプトが表示される新インターフェースが導入され、クロスアプリ操作・画面認識・パーソナルコンテキストの活用といった機能が利用可能になる。 さらに、Claude(Anthropic)やGeminiなどサードパーティの大規模言語モデルとの統合も実現した。ユーザーはWriting ToolsやImage Playgroundのデフォルトエンジンとして任意のAIサービスを選択できるようになり、Apple製エコシステムの枠を超えたAI活用が可能となった。 iOS 27・macOS 27:パフォーマンス重視の「Snow Leopard」的刷新 iOS 27・macOS 27・iPadOS 27は、内部では"Snow Leopard的アップデート"と位置づけられており、バグ修正と不要なコードの整理によるパフォーマンス向上が主眼となっている。機能面では、Wallet・Safari・Shortcutsへ拡大されるApple Intelligence、キーボード自動補正の改善、Apple Mapsへの衛星通信接続サポートなどが盛り込まれた。対応デバイスはiPhone 12以降で、iPhone 11は本バージョンからサポート対象外となる。 また、iOS 27は2026年9月に発売予定のApple初の折りたたみiPhone「iPhone Fold」に対応し、2つのアプリを左右に並べて表示できるマルチウィンドウ機能を提供する。 ハードウェアと今後の展望 今回のWWDCはソフトウェアが中心で、ハードウェアの大型発表は見送られた。M5 Max/Ultra搭載Mac StudioやM5 iMacなどのMac新モデルは、世界的なメモリチップ不足の影響で年末まで発売が難しい見通し。Apple TV 4K・HomePod miniの新版やスマートグラス、カメラ搭載AirPods、タッチスクリーン付きスマートホームデバイス「HomePad」なども、改善されたSiriとApple Intelligenceへの依存から秋以降の発表が想定されている。今後6月12日まで開催されるセッションでは、開発者向けの技術的な詳細が順次公開される予定だ。

June 8, 2026

米超党派AI規制法案「Great American AI Act」草案公開、3年間の州法先占と年間1億ドル基金を提案

概要 共和党のJay Obernolte下院議員(カリフォルニア州)と民主党のLori Trahan下院議員(マサチューセッツ州)は2026年6月4日、「Great American Artificial Intelligence Act of 2026」と題した269ページに及ぶ超党派AI規制法案の討議草案(discussion draft)を公開した。この法案は、連邦レベルで統一されたAIガバナンスの枠組みを確立することを目的としており、AI開発から展開・利用に至る幅広い領域を対象としている。現時点では正式な法案提出前の草案段階であり、パブリックコメントを受け付けている。 主要条項 法案の核心は**連邦による州法先占(preemption)**にある。AI「モデル開発」を対象とした州独自の規制について、3年間の連邦先占を定め、各州がバラバラに規制を設けることを一時的に禁止する。一方、雇用・医療・消費者保護などの重要分野におけるAIの「展開・利用」については、引き続き州が規制権限を保持する。この仕組みにより、技術開発段階での統一基準を確保しながら、具体的な応用場面での柔軟な地域対応を残す設計となっている。 資金面では、バイデン政権下のAI安全研究所を改組した「AI標準・イノベーションセンター(Center for AI Standards and Innovation)」に年間1億ドルを配分する条項が盛り込まれた。商務長官Lutnick氏のもとで運営される同センターは、AIの安全基準策定や技術研究を担う中核機関として法的に位置付けられる。また、AI悪用を想定したサイバーセキュリティ強化策として、2035年までのサイバーセキュリティ情報共有法(CISA)再承認も含まれている。さらに、AI導入が労働市場に与える影響を評価する「労働影響アセスメント」の義務化や、AI分野のR&D投資の優先事項を新たに定める条項も設けられている。 業界・政治的反応 テクノロジー業界団体はこの法案を概ね歓迎している。現在、各州が個別にAI規制を整備しており、企業は州ごとに異なるルールへの対応を迫られている。統一された連邦基準は、こうした規制の断片化を解消し、コンプライアンスコストの削減につながると評価されている。一方、批判的な立場からは、州法先占条項が州政府によるAI説明責任メカニズムを骨抜きにするとの懸念が示されている。 今後の見通し 本法案はあくまで「討議草案」であり、正式な議会への提出はパブリックコメントを踏まえた修正後となる見通しだ。近年、欧州でAI法(EU AI Act)が成立したほか、米国内でも複数の州が独自のAI規制を相次いで導入しており、連邦レベルでの包括的なAI規制整備への機運が高まっている。超党派による共同提案という点は政治的な前進を示すものだが、州の権限を制限する先占条項をめぐる議論は、今後の審議過程でも大きな争点となることが予想される。

June 8, 2026

SpaceXが1株135ドルでIPOロードショー開始、修正S-1書類の新文言がTesla合併観測を呼ぶ

IPOロードショーと株価設定 SpaceXは2026年6月、Nasdaq上場(ティッカー:SPCX)に向けてIPOロードショーを正式に開始した。株価は1株135ドルの固定価格に設定され、公開株式数は5億5,560万株、調達額は最大750億ドル規模に上る見通しだ。この規模はアメリカ株式市場における大型IPOとして注目を集めており、イーロン・マスク率いるSpaceXの企業価値は上場を通じて改めて広く問われることになる。 ロードショーに先立ち、SpaceXは6月1日に修正S-1書類を米証券取引委員会(SEC)へ提出した。修正書類では、公開株式の5%を「特定の従業員および経営幹部の友人・家族」に予約する取り決めが明記された。この株式はロックアップ制限の対象外とされており、他の幹部と異なり上場直後から売却が可能となる。IPO価格の135ドルで計算すると、対象者は計37億5,000万ドル相当の株式購入権を得ることになる。 Tesla合併観測を呼ぶ修正S-1の一文 今回の修正書類で市場関係者が最も注目したのは、新たに追加された一文だ。「将来のトランザクション(取引)に関連して、相当額の株式を発行する可能性がある」という表現で、アナリストらはこの文言がSpaceXとTeslaの合併を示唆しているとの見方を強めている。Fortune誌の報道によれば、複数のアナリストが「通常のボイラープレート(定型文)として片付けるには意味が強すぎる」と指摘しており、実現すれば史上最大級の企業合併になり得るという観測もウォール街に広まっている。 マスク氏はSpaceXとTeslaの両社を率いており、両社の技術・インフラが相互補完的であるという見方は以前から存在した。今回の文言追加が具体的な合併計画の存在を示すものかどうか、SECへの開示や今後の発表が注目される。 Cursor買収計画と今後の展望 SpaceXはIPOに加え、AIコーディング支援ツールを提供する「Cursor」を60億ドルで買収する計画も既に明らかにしている。この買収が実行された場合、SpaceX株主は約3.5%の希薄化を受けることになる。Cursorはエンジニアリング生産性の向上を目的としたAIツールとして急速に普及しており、SpaceXがソフトウェア開発能力の強化を重要視していることをうかがわせる。 IPO後のSpaceXが宇宙事業・通信(Starlink)・AI投資・Tesla合併観測という複数の大きなテーマを同時に抱える中、Nasdaq上場は同社の新たな成長フェーズの幕開けとなる可能性がある。市場がこの史上有数のIPOをどう評価するかは、今後数週間で明らかになるだろう。

June 6, 2026

GroqがNvidiaとの200億ドル取引後に6億5000万ドルの資金調達を実施、AI推論ネオクラウドへの転換加速

概要 AIチップスタートアップのGroqが、既存投資家を中心に6億5000万ドルの新規資金調達ラウンドを進めていることが明らかになった。Axiosが報じたところによると、この資金調達は2025年12月にNvidiaとの間で締結された約200億ドル規模の取引の数ヶ月後に行われるものだ。Nvidiaとの取引は完全買収ではなく、技術ライセンス契約と主要人材の採用という形を取ったため、Groqは独立した企業として事業を継続している。 今回の調達では、投資家のDisruptiveとInfinitiumが既存株主が参加を辞退した分を補填する「バックストップ(guarantee)」を約束しており、この仕組みによりラウンドは参加率にかかわらず確実に成立する見通しだ。これはGroqへの継続的な投資家信頼を示すとともに、Nvidia取引後の事業継続に対する確信を示している。 Nvidiaとの取引の背景 2025年12月に成立したNvidiaとの取引は、業界では「not-acqui-hire(完全買収でも人材採用でもない)」と呼ばれる異例の形態を取った。NvidiaはGroqの技術ライセンスを取得し、主要な従業員を迎え入れる代わりに、既存投資家へキャッシュ補償という形で実質的な部分的エグジットを提供した。Jonathan Ross氏ら創業メンバーを含むキーパーソンがNvidiaへ移籍したとされており、現在のGroqはAdam Winter氏(暫定CEO)とMatt Eng氏(CFO)が経営を率いている。 この取引はGroqの投資家にとって一定のリターンを確保しつつ、Groqという法人と独自開発のAIチップ(LPU: Language Processing Unit)技術を存続させるものとなった。Nvidiaにとってはライバルの技術と人材を一部取り込みつつ、Groqブランドを市場に残すという選択でもある。 AI推論ネオクラウドへの事業転換 調達資金は、Groq独自のAIチップとシステムを基盤とした「推論ネオクラウド事業」の拡大に充てられる予定だ。現在のAI市場では、モデルのトレーニングよりも推論(ユーザーがプロンプトを入力してから応答が生成されるフェーズ)の方が市場規模として大きいとされており、Groqはその市場機会を狙う。 同社のLPUはAI推論処理においてGPUよりも高速・低レイテンシという強みを持っており、開発者や企業が推論集約型アプリケーションを構築するためのクラウドインフラとして需要が高まっている。今回の資金調達を経て、GroqはNvidiaへの部分的な依存から脱却し、独立したAI推論インフラプロバイダーとして事業を拡張していく方針だ。 今後の展望 GroqがNvidiaとの複雑な取引を経てもなお6億5000万ドルという大型資金調達に成功するならば、それはAI推論インフラ市場への投資家の強い関心を示すものとなる。今後は同社がAWS、Google Cloud、Azureといった大手クラウドプロバイダーや、CoreweaveなどのAI特化ネオクラウドとどのように競合・差別化を図っていくかが注目される。LPUの性能優位性を活かしたポジショニングと、Nvidia取引後の新経営陣のもとでの事業立て直しが、Groqの次のフェーズを左右するだろう。

June 5, 2026

AnthropicがIPO申請——評価額9,650億ドルでAI企業最大規模の株式公開へ

概要 Anthropicは2026年6月1日、米証券取引委員会(SEC)に機密ドラフト登録書(S-1)を提出し、新規株式公開(IPO)の準備を正式に開始した。直近のシリーズH資金調達後の評価額は9,650億ドルに達しており、約1兆ドル規模での上場が見込まれている。同社はまだ発行株数や公募価格帯を公表しておらず、SECの審査を経て詳細が開示される見込みだ。Claudeを中核に置くAnthropicの上場は、AI業界における歴史的なマイルストーンとして市場関係者の注目を集めている。 資金調達と財務状況 AnthropicはIPO申請直前の2026年5月28日に、シリーズHラウンドで650億ドルの資金調達を完了した。このラウンドを主導したのはAltimeter Capital、Dragoneer、Greenoaks、Sequoia Capitalといった主要投資家だ。年換算売上高(ランレート)は470億ドルに達しており、エンタープライズ向けのClaude活用が収益の主軸となっている。Gray Peak FinancialのCEOは「Anthropicは12〜14カ月でOpenAIを追い越した」と述べており、同社の成長ペースがAI業界でも際立っていることを強調した。 競合他社との比較と業界の動向 今回のIPO申請によりAnthropicの評価額はライバルのOpenAIを上回り、AI企業としては最高水準に位置することとなった。OpenAIも機密IPO申請の準備を進めているとされており、アナリストのGil Luria氏は両社が「資本が尽きる前に上場を急ぐ競争」を繰り広げていると分析する。また、SpaceXも2兆ドル規模での上場を目指して申請済みであり、市場専門家からはこれら大型IPOが同時期に集中することで資本市場の流動性に圧力がかかりうるとの懸念も示されている。 今後の見通し AnthropicのIPOが9,650億ドル前後の評価額で実現すれば、S&P 500の時価総額上位企業に匹敵する規模となり、テクノロジー業界全体への影響は計り知れない。一方でAnthropicは設立以来、消費者向けサービスよりもエンタープライズ分野やソフトウェア開発支援に注力してきており、その収益モデルの堅固さが機関投資家から高く評価されている。AIへの旺盛な投資家需要が続く中、同社の上場条件と市場反応が、後続するOpenAIをはじめとするAI企業のIPO戦略にも大きな影響を与えるものと見られている。

June 4, 2026