KioxiaとSanDisk、332層QLC NANDで業界最高密度を実現する第10世代技術を発表

概要 KioxiaとSanDiskは、FMS 2026(Future of Memory and Storage)にて第10世代のQLC 3Dフラッシュメモリ技術を発表した。両社が共同開発した本世代は332層の積層構造を採用し、第8世代と比較して最大60%のビット密度向上を達成、37 Gb/mm²を超える業界最高水準の密度に到達した。AIトレーニングやハイパースケールデータセンターにおけるストレージ需要が急速に拡大する中、容量・性能・電力効率を同時に高める技術として位置付けられている。 技術的な詳細 新世代のQLC NANDは、332層アーキテクチャと最適化されたフロアプラン設計により高密度化を実現しているほか、CMOS直接ボンディング技術(CBA)を採用することでチップ面積あたりのビット数をさらに押し上げている。インターフェース面では、QLCとして業界初となる4.8 Gb/sのToggle DDR6.0プロトコルに対応し、データ転送速度を大きく引き上げた。加えて、電力分離型低タップ終端(PI-LTT)技術によりI/Oのデータ転送時における電力効率も改善されており、高速化と省電力化を両立させている点が特徴だ。 背景と今後の展望 QLC(Quad-Level Cell)方式は1セルあたり4ビットを記録することで大容量化に適する一方、書き込み耐性や速度面でTLCなどに劣る側面があるため、これまでは主に大容量ストレージ用途で採用が進んできた。今回の第10世代技術は、層数の積み増しとインターフェースの高速化を両輪で進めることで、AIトレーニング用データセットの保存や大規模データ処理基盤といった、容量と性能の両方が求められる用途への適用を見据えたものとみられる。KioxiaとSanDiskは、両社共同のフラッシュメモリ技術としてこれまで世代を重ねてきており、今回の発表は次世代インフラを支える基盤技術としての位置づけを強調している。

August 8, 2026

Samsung重工業とMousterian、テキサス州向け係留型浮体式データセンターの設計契約を締結

概要 Samsung重工業(Samsung Heavy Industries)とMousterian Corporationは、テキサス州向けに係留型の浮体式データセンターを開発するための設計契約を締結した。両社は基本設計・詳細設計・製作設計を共同で担当し、次段階としてEPC(設計・調達・建設)契約の締結を見込んでいる。パイロットサイトはヒューストン近郊の既存のコンバインドサイクルガスタービン発電所に隣接する場所に設置される予定で、既存の電力インフラを活用できる立地が選ばれた。陸上の適地不足や電力供給の制約を回避する新たなデータセンター建設手法として、AIインフラの急拡大を背景に注目を集めている。 技術的な詳細 各施設は50MWのIT負荷容量を持つ設計で、飲料水を一切消費せず排水も発生しない非蒸発冷却技術を採用する。従来の空冷式チラーやファンを排除することで、水消費と騒音の両方を低減し、係留された構造物を取り囲む水を冷却源として利用する仕組みになっている。この水上施設は米国船級協会(American Bureau of Shipping)によって分類される予定で、海事分野の基準をデータセンターインフラに適用する点も特徴だ。浮体式であることにより、土地開発をめぐる競合を避けられるほか、必要に応じて施設を移動できる可動性も備え、AI向けの大規模IT容量を工場生産的に短期間でスケールさせられるとされている。 規制上の課題と今後の展望 Samsungは、サーバーメーカーのSupermicroとの提携により2028年の稼働開始を目標としているが、テキサス州の規制動向が計画に影響を及ぼす可能性がある。同州のグレッグ・アボット知事は最近、監査が完了するまでERCOT(テキサス電力信頼性評議会)への新規データセンター接続承認を一時停止した。現在ERCOTに寄せられている接続申請は474GW超に上り、そのうち約9割をデータセンターが占め、ピーク需要の5倍に達しているという。こうした需要急増を背景とした規制強化により、浮体式データセンターのような新形態のインフラ整備計画も、スケジュールの見直しを迫られる可能性がある。

August 8, 2026

テスラとスペースX、テキサスに世界最大級の半導体工場「Terafab」建設へ 初期投資168億ドル

概要 テスラとスペースXは、テキサス州グライムズ郡(ヒューストン北西約1時間)に半導体製造拠点「Terafab」を共同で建設すると正式発表した。第一段階の投資額は168億ドルで、これは本年3月に発表されていた当初想定の250億ドルから縮小された金額となる。イーロン・マスク氏は同施設について「地球上で最も大きく、最も価値のある建物になるだろう」と述べており、延べ床面積は1億平方フィート(約930万平方メートル)超を計画している。将来的な拡張フェーズも予定されており、投資規模はさらに拡大する見込みだ。 生産体制と規模 Terafabはロジック・メモリチップの製造からパッケージング、テストまでを一拠点で完結させる統合施設として計画されている。生産対象は、エッジコンピューティングや推論用途のチップ、テスラのヒューマノイドロボット「Optimus」や自動運転タクシー「Cybercab」向けのチップ、さらにスペースXが構想する宇宙ベースのデータセンター向け高性能チップと幅広い。両社は年間1テラワット超のコンピュート能力を生み出すことを目標に掲げており、施設名の「Terafab」もこの目標に由来するとみられる。稼働にあたってはグライムズ郡およびブラゾス郡を中心に最低3,000人の雇用創出が見込まれ、地元教育委員会からも歓迎の声が上がっている。インテルも同プロジェクトへの貢献を表明している。 インフラと環境面の対応 用水についてはスペースXが、2018年に閉鎖された石炭火力発電所の旧冷却水源であったギボンズクリーク貯水池からの取水にコミットすると表明しており、地下水への依存を避ける方針を示した。テキサス州知事室も地元学区との連携を強調するなど、地域社会との協調を前面に打ち出した発表となっている。 今後の展望と留意点 テスラの半導体調達は目下、サムスンとTSMCとの既存契約で当面まかなわれる見通しで、サムスンは現行のAI5チップを生産中、AI6チップについても165億ドル規模の契約が既に結ばれている。Terafabはこれらに続く長期的な自社生産基盤という位置づけになる。一方でスペースXのIPO関連の開示文書では、Terafabは両社間の拘束力ある合意を伴わない「一般的な枠組み」に過ぎないと記載されており、対外的な発表内容と規制当局向け文書との間に温度差がある点は注視が必要だ。スペースX単独でも将来的に最大1,190億ドルを追加投資する可能性が報じられており、今後の具体的な建設スケジュールや投資規模の確定が焦点となる。

August 8, 2026

AMD、モデル重みをシリコンに焼き込むTaalasを買収 推論特化チップでNvidiaに対抗

概要 AMDは2026年8月6日、カナダ・トロント拠点のAI推論チップスタートアップTaalasの買収に合意したと発表した。買収額は非公表で、取引は規制当局の承認を経て2026年第4四半期に完了する見込みという。Taalasは、AIモデルの重みを汎用メモリに読み込むのではなく、シリコンチップに直接焼き込むという独自のアプローチで推論処理を高速化する技術を持つ。AMD人工知能グループの上級副社長Vamsi Boppana氏は、顧客が用途に応じて最適な計算ソリューションを柔軟に選べるようにするという同社の戦略の一環だと位置づけている。Taalas共同創業者兼CEOのLjubisa Bajic氏も、AMDの規模とリソースを得ることで「モデル中心のハードウェア設計」というアプローチのグローバル展開を加速できると期待を示した。 技術的な詳細 Taalasのチップは「Model-Specific Integrated Circuits(MSIC)」と呼ばれるアーキテクチャを採用し、HBMのような外部メモリに依存する従来のGPU設計とは根本的に異なる構造を持つ。チップ内部は、モデルの重みを格納するマスクROMの「recall fabric」と、KVキャッシュや微調整用アダプタを扱うSRAM fabricの2領域で構成される。TSMCの6nmプロセスで製造された試作チップ「HC1」は、Meta社のLlama 3.1 8Bモデルにおいて1ユーザーあたり毎秒16,960トークンという速度を達成しており、2月の発表時点でNvidia製GPU比48倍の速度だったとされる。次世代の「HC2」は200億パラメータ規模のモデルに対応し、1兆パラメータ級のモデルを扱うには50チップが必要になる見込みだ。一方で最大の弱点は柔軟性の欠如で、一度製造したチップは特定のモデル専用となり、大幅なモデル変更には再製造が必要になる。ただしTaalasは、更新の際に変更が必要なのは「配線層2層のみ」であり、フルスクラッチでの再設計に比べコストを抑えられると説明している。 背景と今後の展望 この買収の狙いは、AIエージェントやコーディング支援ツールなど、高速な推論性能が求められるプレミアム推論サービス市場でのシェア獲得にある。Taalasの技術は、AMDのラックスケールシステム「Helios」やInstinct GPU、EPYC CPU、ROCmソフトウェアといった既存のAIプラットフォーム全体に統合される計画で、プロンプト処理をGPUが担い、トークン生成をTaalasのアクセラレータが担う、といった役割分担型の分散アーキテクチャが構想されている。急成長するAI推論市場でNvidiaへの対抗軸を増やす動きであると同時に、カナダの人材と技術エコシステムへのAMDのコミットメントを示す取引でもあるとされている。

August 8, 2026

Samsung、AIデータセンター向け次世代メモリ3技術を発表 zHBMはHBM5比8倍性能を目指す

概要 Samsungは8月4日から米カリフォルニア州サンタクララで開催された「Future of Memory and Storage(FMS)2026」において、AIデータセンター向けの次世代メモリ技術3種、zHBM・zNAND-O・V10 BV-NANDを発表した。いずれも先進的なウェハー接合(wafer bonding)技術を基盤としており、大規模AIトレーニングにおけるメモリ帯域幅のボトルネック、発熱、電力効率という3つの課題への対応を狙う。SamsungはzHBMとzNAND-Oについて業界初のコンセプトモデルを披露したとしている。 zHBM:メモリをアクセラレータの真上に積層 zHBMは、HBM(High Bandwidth Memory)を根本的に再設計したアーキテクチャである。従来のHBMはAIプロセッサの隣に水平配置されるのが一般的だが、zHBMは次世代ウェハー接合技術を用いてメモリをAIアクセラレータの真上に垂直積層する。これによりメモリとプロセッサ間の物理的距離を最小化し、データ転送の遅延を大幅に削減する狙いだ。 性能面では、HBM5比で最大8倍の性能向上、同じ実装面積で10倍以上のメモリ密度、エネルギー効率は3倍改善、熱抵抗は50%以上削減されるとしている。また、カスタマイズ可能なIP層を備え、特定のAIワークロード向けにロジックを追加できる点も特徴として挙げられている。ただし、これらの数値の詳細な算出根拠は現時点で公開されていない。 zNAND-OとV10 BV-NAND:NANDにもウェハー接合を適用 zNAND-Oは、SamsungのV-NAND技術をベースにしたエッジAI向けの高性能NANDソリューションで、4層および8層構成の開発が進められている。高い空間効率と改善されたI/O性能、低レイテンシを特徴とし、リアルタイムのデータ処理を要するエッジAI用途を想定する。 一方のV10 BV-NAND(Bonding V-NAND)は、業界で初めてウェハー接合技術をNANDフラッシュに適用したアーキテクチャで、400層を超える積層数を実現したプロトタイプとして披露された。ウェハー接合では、メモリセルとペリフェラル(周辺)ロジックを別々のウェハーで製造し、後から貼り合わせる製法を採る。これにより、従来の単一ウェハー上に全層を積み上げる方式に比べ高密度化がしやすくなる。前世代のV9と比較して、ストレージ密度は約58%向上したほか、読み書き性能やI/O性能も改善されたという。 今後の見通し 今回発表された3技術はいずれもコンセプトモデルやプロトタイプの段階であり、量産・製品化の具体的な時期は明らかにされていない。生成AIの普及に伴いAIアクセラレータの計算能力は急速に向上している一方、メモリからのデータ供給が追いつかない「メモリウォール」問題が業界共通の課題となっている。Samsungは今回の技術群を通じて、演算性能の向上にメモリ側の帯域・密度・熱特性を追随させる方向性を示した形で、HBMやNANDの次世代開発競争は今後さらに激化するとみられる。

August 8, 2026

Unitree Robotics、上海STAR市場のIPO価格を決定 評価額90億ドルで中国本土初のヒューマノイドロボット上場企業に

概要 中国のヒューマノイドロボット企業Unitree Robotics(本社:杭州、正式名称:杭州宇樹科技/Yushu Technology)は8月6日、上海証券取引所のイノベーション企業向け市場「科創板(STARマーケット)」で実施するIPOの価格を1株150.8元(約22.34ドル)に決定したと発表した。この価格は企業価値換算で約610億元(約90億4000万ドル)に相当し、当初目標としていた最大500億元を大きく上回る水準となった。新規発行株式数は4045万株で、発行後の総株式数の約10%にあたる。調達額は約61億元(約9億400万ドル)となり、中国本土市場に上場する初のヒューマノイドロボットメーカーとして大きな注目を集めている。株式の申込期間は8月10日に開始される予定。 IPO条件と資金使途 調達資金の内訳は、ロボットのモデル開発(AI・ソフトウェア関連)に約20億2200万元(全体の48%)、ロボット本体のハードウェア開発に約11億1000万元、新製品の研究開発に約4億4500万元、製造拠点の拡充に約6億2400万元が充てられる計画で、ソフトウェアとハードウェアの両面から次世代ロボットの開発体制を強化する狙いがある。目論見書では、中国のAI企業DeepSeekが戦略的投資家として参加していることも明らかになっており、中国AI業界内での連携の強さを示す動きとして注目されている。 業績とヒューマノイド事業の急成長 Unitreeは2025年、世界で5500台以上のヒューマノイドロボットを出荷し、出荷台数で世界首位となった。同社の事業構成は急速に変化しており、2023年時点では売上の75.78%を四足歩行ロボットが占めていたのに対し、2025年にはヒューマノイドロボット事業の売上が8億6780万元に達し、全体の51.78%を占めるまでに拡大した。2025年通期の売上高は17億元と前年から4倍以上に急増し、2026年第1四半期も前年同期比68.5%増の4億2280万元を記録するなど高い成長率を維持している。同社は2026年上半期の売上高を10億5200万11億2800万元(前年同期比3545%増)と見込んでいる。一方で、研究開発費とマーケティング費用の増加により調整後利益は前年比52.6%減の4030万元にとどまっており、急成長の裏で収益性には課題も残る。株価水準は2025年売上高ベースで株価売上高倍率(PSR)約36倍に達しており、市場の高い成長期待を織り込んだ評価となっている。共同創業者のChen Li氏は、身体性を備えたAI(エンボディードAI)が成熟したと言える基準について、「未知のシナリオの80%において、音声やテキストによる指示だけでタスクの80%を完了できること」と述べている。 米中摩擦という逆風 Unitreeのロボットは走行やダンス、アクロバティックな動作のデモンストレーションで知られ、米国での販売承認も取得済みだが、同社の売上に占める米国向けの比率は13.3%にのぼる。目論見書では、米中間の関税や調達制限、輸出規制が今後の海外展開に影響を及ぼすリスクが明記されている。米国はすでに外国製のヒューマノイド型・四足歩行型ロボットに対する規制を導入しており、これに対し中国政府も特定の米国企業を対象とした輸出規制で応じるなど、両国間の緊張が高まっている。こうした地政学的リスクは、中国本土初のヒューマノイドロボット上場企業として高い評価を得たUnitreeの今後の国際展開における不確実性として残っている。

August 7, 2026

Bending Spoons、ノーコードプラットフォームAirtableを現金12.8億ドルで買収へ

概要 イタリアのアプリ開発企業Bending Spoonsは8月4日、ノーコード型のスプレッドシート・データベースプラットフォームであるAirtableを、現金12億8000万ドルで買収することで合意したと発表した。現金・現金同等物を含む株式価値ベースでは約22億5000万ドルとなる。Bending Spoonsは7月に評価額180億ドルで上場したばかりで、今回の買収は上場後初の大型案件となる。買収は年内の完了を見込んでいる。 買収の背景と条件 Airtableは2013年創業で、これまで複数ラウンドを通じて14億ドル以上を調達してきた。2021年のピーク時には評価額110億ドルに達したが、2026年初頭の二次市場での評価額は40億ドルまで下落しており、直近の純現金を考慮した実質的な企業価値は22億5000万ドルとされる。今回の買収額は、かつての評価額から大きく下がった水準での取引となる。 Airtableは2026年6月時点で年間経常収益(ARR)が4億8000万ドルに達し、前年比20%以上の成長を記録している。50万以上の組織が利用しており、Fortune 100企業の80%が顧客に含まれるなど、企業向け基盤としての地位を確立している。 両社の狙い Bending Spoonsはこれまでにも、メモアプリのEvernote、ファイル転送サービスのWeTransfer、イベント管理のEventbrite、動画共有プラットフォームのVimeoなど、成熟したソフトウェア企業を次々と買収し、自社の運営ノウハウを投入して収益性を改善する戦略を取ってきた。Bending Spoons創業者のLuca Ferrari氏は、Airtableについて「チームのデータ整理と業務管理のあり方を再構築してきた先駆的なブランド」と評価し、買収を通じてAirtableの「革新を加速させる」との意向を示している。 今後の見通し 今回の買収が完了すれば、Bending Spoonsの買収先ポートフォリオにAirtableが加わり、同社の企業向けソフトウェア領域での存在感がさらに拡大することになる。買収は年内の完了を予定しているが、詳細な統合方針や既存ユーザーへの影響については、今後の発表が待たれる。

August 6, 2026

Apple、OpenAIに仮差止命令を申立て 営業秘密訴訟でOpenAIは内部メッセージを公開し反論

概要 Appleは8月3日、元従業員2名(Tang Tan氏、Chang Liu氏)を通じてOpenAIが自社のハードウェア開発に関する機密情報を不正利用したと主張する訴訟で、連邦地裁に仮差止命令(preliminary injunction)を申し立てた。OpenAIと両氏に対し、Appleの営業秘密へのアクセス、取得、使用、開示を禁じることを求めるもので、Appleは「仮差止命令なしには回復不可能な損害を被る」と主張している。OpenAIは同日中に「Apple is getting this wrong」と題する詳細な公開反論ブログを発表し、内部メッセージやメールの記録を公開して対抗した。審理は2026年10月1日に予定されている。 訴訟の経緯と主張の内容 Appleは7月10日、Liu氏とTan氏がAI関連ハードウェア開発に向けてAppleの機密情報を持ち出す計画を実行したと主張して両氏とOpenAIを提訴していた。Appleの申立によれば、OpenAIの採用プロセス自体がAppleの機密情報を収集する手段として機能していたとされ、この情報が「OpenAIのコンシューマーハードウェア市場への進出」に利用されたと主張している。Appleの申立書では、約400人の元Apple従業員が現在OpenAIに在籍しているとも指摘されている。 申立に先立ち、Apple側はOpenAIに対して(1)機密情報へのアクセス中止、(2)使用・開示の停止、(3)証拠の保全、(4)司法的なフォレンジック検査の許可、(5)システムからの機密情報回収、の5項目を要求していた。OpenAIは最初の3項目には同意したものの、フォレンジック検査と情報回収の2項目については合意に至らなかったため、Appleは今回、これらを含む措置を裁判所に求める形となった。Appleは仮差止命令の申立と併せて、発見手続(ディスカバリー)の迅速化も求めている。 OpenAIの反論 OpenAIは公開ブログで、今回の訴訟を「ずさんで、攻撃的で、奇妙に個人的」と強く批判した。まず訴訟提起に至る経緯について、Appleの外部弁護士が2月にアジア系の姓を混同し、誤った人物にメールを送っていたことを明らかにし、当時のメールのやり取りとApple側弁護士による謝罪の文面を公開した。OpenAI側は、この誤送信の後、具体的な容疑についてApple側から5ヶ月間何の連絡もなかったと説明している。 Chang Liu氏を巡っては、OpenAIは同氏が1月22日にAppleを退職した後も、Apple従業員が同氏にiMessageで社内ファイルの所在や技術情報について繰り返し問い合わせていたことを示すメッセージ記録を公開した。中にはApple従業員が同僚に対し、Liu氏のApple関連iCloudアカウントからAirDropでファイルを転送するよう指示していたやり取りも含まれており、3月5日時点でも同様の問い合わせが続いていたとしている。一方、Tan氏についてはApple在籍24年を経て、Jony Ive氏と共同設立したハードウェアスタートアップio Productsに参画し、同社は2025年7月にOpenAIと合併した経緯がある。OpenAIは「Tanは一貫して、他社の機密情報を使用したり必要としたりしないという方針をチームに明確に伝えてきた」と擁護している。 今後の見通し 仮差止命令に関する公開審問は2026年10月1日に予定されており、それまでにOpenAI側が正式な反論書面を提出するとみられる。Appleが求める即時のアクセス停止やフォレンジック検査が認められるかどうかは、AI業界における人材移動や技術情報の扱いを巡る今後の法的先例としても注目される。両社の主張は真っ向から対立しており、審理では退職前後のやり取りや採用プロセスの詳細がさらに明らかになる可能性がある。

August 6, 2026

GoogleがAI指導体制を刷新、ハサビス氏はDeepMind会長兼Alphabet最高科学責任者に、ジェフ・ディーン氏は27年在籍したGoogleを離れ新会社設立へ

概要 Googleは8月5日、AI部門の指導体制を大幅に刷新すると発表した。Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOはCEO職を退き、DeepMindの会長職とAlphabet全体の最高科学責任者という新たな役職に就く。一方、Googleのチーフサイエンティストとして27年にわたり同社に在籍してきたジェフ・ディーン氏は退社し、機械学習と科学的発見の自動化を掲げる新会社「Discovery Loop」を共同設立する。この発表を受けてAlphabetの株価は一時4〜5%下落し、市場が今回の人事刷新を大きな変化として受け止めていることをうかがわせた。 新体制の詳細 ハサビス氏はDeepMindの会長職にとどまりつつ、Alphabet全体の最高科学責任者としてAGI(汎用人工知能)戦略の策定に集中する。同氏は「AGIは間近に迫っていると感じている。次のステップを正しく踏み出すことが極めて重要だ」と述べ、AGI開発の節目が近いとの認識を示した。また、AI創薬を手がけるDeepMindのスピンオフ企業Isomorphic LabsのCEOも引き続き務め、がんなどの疾病に対するAIの可能性を追求する姿勢を強調している。 DeepMindの新体制では、これまで最高技術責任者(CTO)を務めていたコレイ・カヴコウオール氏が日常運営を統括する。同氏はシニアバイスプレジデントとして、Geminiモデルの開発やフロンティアAI研究などを統括し、Alphabet CEOのサンダー・ピチャイ氏に直接報告する体制となる。 ジェフ・ディーン氏の退社とDiscovery Loop設立 ディーン氏はGoogleのAI研究を長年牽引してきた中心人物の一人で、27年の在籍を経て退社する。同氏とともに、Google シニアフェローのサンジャイ・ゲマワット氏、Geminiの共同リード役だったオリオール・ヴィニャルス氏、Google Brainの共同創設者の一人であるクォック・レー氏の計4名が新会社Discovery Loopに参加する。Discovery Loopは機械学習や科学、工学分野の発見を自動化し、研究や進歩を加速させることを目的とした独立系企業として設立され、Googleは創業投資家およびクラウドパートナーとして関与する。 背景と今後の展望 今回の刷新は、AI開発競争が激化する中でAlphabetがAGI実現に向けた組織体制を再構築する動きと位置づけられる。ハサビス氏がAlphabet全体のAI戦略に軸足を移す一方、GeminiやフロンティアAI研究の現場運営はカヴコウオール氏率いる新体制に委ねられる形となった。同時に、ディーン氏やヴィニャルス氏ら主要人材の社外流出は、GoogleのAI人材が独立した研究組織や新興企業へ移る新たな潮流を象徴する出来事とも受け止められている。市場の反応が示す通り、投資家はこの人事刷新をAlphabetのAI戦略における重要な転換点とみなしており、今後Discovery Loopがどのような成果を上げるか、また新体制下でのGemini開発の行方が注目される。

August 6, 2026

AMD、データセンター売上107%増の好決算も粗利益率が市場予想未達で株価8%超急落

概要 AMDは8月4日、2026年第2四半期決算を発表した。売上高は115億ドルで前年同期比50%増、前四半期比でも13%増となり、アナリスト予想の113億ドルを上回った。非GAAP EPSは1.66ドルで、市場予想の1.62ドルを上回り、前年同期比では246%という大幅な増益を記録した。GAAP純利益も23億ドル(前年比163%増)、GAAP EPSは1.38ドル(同156%増)と、いずれも好調な内容だった。第3四半期のガイダンスも130億ドル前後(±3億ドル)と、コンセンサス予想の125億ドルを上回る強気の水準を示した。しかし、これだけの好決算にもかかわらず、発表後にAMD株は8%超(一部報道では7%)下落し、472.89ドルまで値を下げた。取引量も平均の1.8倍に膨らみ、投資家の反応が大きく分かれる結果となった。 部門別の業績 牽引役となったのはデータセンター部門で、売上高は67億ドルと前年同期比107%増を記録し、全社成長の中心となった。AIチップやサーバー向けプロセッサへの旺盛な需要が背景にある。クライアント部門も31億ドル(前年比23%増)と堅調に推移した一方、ゲーミング部門は7.79億ドルで前年比31%減と落ち込みが目立った。組込み部門は9.77億ドルで前年比19%増だった。Lisa Su CEOは、データセンター売上が2倍以上に伸びたことに言及し、この勢いを維持して通期の成長と利益拡大を実現する考えを示した。 株価急落の背景 好決算にもかかわらず株価が下落した最大の要因は、粗利益率が市場予想に届かなかったことだった。GAAPベースの粗利益率は54%で前年の40%から改善し、非GAAP粗利益率も56%で前年の43%から改善したものの、GAAPベースの数値が市場の期待水準(56%程度)を下回ったことが投資家の失望を招いた。AMDのCFOは、AIインフラシステム「Helios」の立ち上げに伴う近期的なマージン圧力を要因として挙げている。新規に投入するAIアクセラレーターは立ち上げ初期段階では利益率が低く、当面は利益率の大幅な改善が見込みにくい状況にあるという。加えて、決算発表前の時点でAMD株はすでに7.7%上昇しており、好決算そのものは市場の高い期待にすでに織り込まれていたとの分析もある。過去の決算でも、前年第4四半期にEPSが予想を約16%上回りながら株価が17%超下落した例があり、今回も同様のパターンが繰り返された形だ。 今後の見通し AMDは第3四半期の売上高を130億ドル前後(前年同期比約41%増、前四半期比約13%増)、非GAAP粗利益率を約56%と見込んでいる。データセンター向けAI需要は当面高水準が続くとみられるが、Helios立ち上げによる利益率への影響がいつ解消されるかが今後の焦点となる。市場は増収基調そのものよりも、AI関連投資が実際の利益率改善につながる時期に注目しており、次回以降の決算でその進捗が改めて評価されることになりそうだ。

August 5, 2026