Uber、Delivery Heroを148億ドルで買収へ モビリティ・デリバリー展開国がほぼ倍増

概要 Uber Technologiesは、ドイツを拠点とするフードデリバリー大手Delivery Heroを総額148億ドル(1株41.50ユーロ相当)の現金対価による買収に合意したと発表した。取引が完了すれば、Uberのモビリティ・デリバリー事業の展開国は現在からほぼ倍増し、ヨーロッパ、中東、ラテンアメリカ、アジアを含む100カ国近くに広がる見込みで、中国を除く世界最大級のフードデリバリープラットフォームが誕生することになる。 取引の仕組みと株主動向 今回の買収は単純な買い付けにとどまらず、Delivery Heroが両社の事業が重複する14市場の事業をSSW Partnersに16億ドルで売却する副次的な取引も同時に進められる点が特徴だ。取引の成立には規制当局の承認に加え、株主の50%以上の同意が条件となる。もともとUberはDelivery Heroの筆頭株主であり、Delivery Hero株の17%を保有するProsusもすでに保有株の売却に同意しているなど、主要株主の支持を取り付けた状態でのスタートとなる。 業界への影響と競争環境 この買収により、UberはDoorDashやJust Eatといった競合に対抗できるより強固な体制を築くことになる。フードデリバリー業界ではここ数年、収益性向上を狙った再編・統合の動きが加速しており、今回の大型買収はその流れを象徴する動きといえる。Uber CEOのDara Khosrowshahi氏は、統合後の事業体について「モビリティとデリバリーの両方を提供する市場数をほぼ倍増させ、実績あるプラットフォームを拡大することで長期的に大きな価値を生み出すと確信している」とコメントしている。 今後の展望 取引はまだ完了しておらず、各国の規制当局による審査と株主の承認プロセスを経る必要がある。特に複数市場にまたがる大型統合案件であることから、独占禁止法上の審査が焦点になるとみられる。承認が得られれば、Uberはモビリティとデリバリーを一体で提供する事業者として存在感を大きく高めることになり、フードデリバリー市場の勢力図に大きな変化をもたらす可能性がある。

July 19, 2026

NVIDIAフアンCEOが来日、トヨタ・ファナックなど日本のロボティクス大手と提携拡大 新モデル「Cosmos 3 Edge」も投入

概要 NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが来日し、東京で富士通の時田隆仁社長、そしてファナック、安川電機、川崎重工業といった日本を代表する産業用ロボットメーカーの経営陣とともに、「フィジカルAI(physical AI)」分野での大規模な提携を発表した。フィジカルAIとは、あらかじめプログラムされた動作をなぞるだけでなく、周囲の状況を自律的に認識・判断し、工場や家庭、病院などで人と安全に協働できるロボットを実現する技術領域を指す。今回の発表の柱となったのが、エッジ向けに最適化した新しい物理AIモデル「Cosmos 3 Edge」と、トヨタ自動車との提携拡大である。フアンCEOは「日本は近代的な製造業を発明した国だ。今こそインテリジェント産業の時代に向けてそれを再発明する好機にある」と述べ、日本を物理AI時代の中核パートナーと位置付けた。 Cosmos 3 Edgeと物理AI連合 新モデル「Cosmos 3 Edge」は40億パラメータ規模で、エッジコンピューティング環境での動作に最適化されているのが特徴だ。ロボットが自らの周囲を認識し、リアルタイムで推論を実行できるほか、NVIDIA Jetson、RTX GPU、DGXシステムなど多様なハードウェア上で動作する。開発者はこのモデルを特定のロボットや車両、センサー、環境向けにおよそ1日でカスタマイズできるとされ、これまで数週間〜数カ月を要していた物理AIの現場適応を大幅に短縮する狙いがある。 この基盤モデルを軸に、ファナックや安川電機、川崎重工業に加え、富士通、日立製作所、NEC、ソニーグループ、ソフトバンクなど複数の日本企業が参加する「Cosmos Coalition」も始動した。富士通は複数メーカーの機器を横断して制御する協調プラットフォームの開発を主導し、クボタは農業機械の自動化、ホンダR&Dやロボットベンチャーのグルーブエックスはロボット開発にそれぞれCosmosを活用する計画だ。川崎重工業はNVIDIA Holoscan IGXとIsaacロボティクスを用いて、手術支援ロボットや病院内搬送ロボットの開発にも取り組むという。 トヨタとの提携拡大 自動車分野では、トヨタ自動車との10年来のパートナーシップがさらに拡大した。従来の自動運転技術開発に加え、今回はNVIDIA Omniverse、Isaacロボティクスプラットフォーム、Nemotron大規模言語モデルを組み込み、静岡県の実証都市「Woven City」でのプロトタイプ開発から車両組立ラインまで幅広く活用する。特にOmniverseを使って組立ラインのデジタルツインを構築することで、エンジニアは実際のラインを変更する前に新しい生産レイアウトや工程を仮想空間でシミュレーションできるようになり、車種切り替えに伴うコストやダウンタイムの削減につながるとしている。このほか、レベル2++の自動運転にはNVIDIA DRIVE AGXとDriveOSを採用し、安全基準MISRAに準拠したコード生成にはMegatron-LMで訓練したCode Assistantを活用するなど、開発から製造、走行まで一気通貫でNVIDIAの技術が組み込まれる形となった。Woven by Toyotaは都市交通向けのマルチモーダル視覚言語モデルも独自に開発しているという。 日本の「フィジカルAI」エコシステムと今後の展望 今回の一連の発表を支えるのが、理化学研究所(RIKEN)に導入される2基のスーパーコンピューターだ。「AI for Science」向けの新システム「RIKYU」はNVIDIA GB200 NVL4プラットフォーム上で1,600基のBlackwell GPUを搭載し、生命科学や材料科学、研究室の自動化などの分野で基盤モデル開発を後押しする。また量子コンピューティングとHPCを統合した「ROQUO」は540基のBlackwell GPUを備え、和光・神戸の量子コンピューター実機と接続される。三菱ケミカルなどが参加する量子化学計算の実証では、CPUのみの計算に比べ13.4倍の高速化を達成したと報告されている。さらにみずほ銀行が国内金融機関最大級のオンプレミスAI基盤をDGX B200で構築するなど、製造業やロボティクスにとどまらず金融やヘルスケアの分野でもNVIDIAの技術導入が進んでいる。中国市場向けの先端半導体輸出規制が引き続き焦点となる中、NVIDIAが日本という成熟した製造業国家との関係を一段と深めている点は、同社の事業戦略上も重要な意味を持つと見られる。

July 17, 2026

TSMC、AI需要でQ2純利益77%増の過去最高益、アリゾナに追加1000億ドル投資へ

概要 台湾積体電路製造(TSMC)は7月16日、2026年第2四半期の決算を発表し、純利益が前年同期比77.4%増の7065.6億台湾ドル(約220億ドル)に達し、5四半期連続で過去最高益を更新したことを明らかにした。売上高も前年比36%増の1兆2700億台湾ドル(約402億ドル)となり、アナリスト予想の1兆2640億台湾ドルを上回った。市場予想(LSEGスマート予想の6326億台湾ドル)も大きく上回る結果となり、好調な業績はNvidiaやAppleなど主要顧客からのAI半導体需要の急拡大が牽引した。 同社はこの好調な業績を背景に、米アリゾナ州への追加投資として新たに1000億ドルを投じる方針も発表した。これによりアリゾナ州における累計投資額は2650億ドルに達する見通し。CEOのC.C.魏氏は、今後さらに4つの工場が同地に建設される可能性があると示唆しており、米国内での先端半導体生産能力の大幅な拡大が進むことになる。 技術的な詳細 第2四半期の売上高構成をみると、AI半導体を含む高性能コンピューティング(HPC)分野が全体の66%を占め、スマートフォン向けが22%で続いた。また7ナノメートル以下の先端プロセスがウェハ売上高の77%を占め、TSMCの技術優位性が業績を押し上げている構図が鮮明になった。6月単月の売上高は4426.8億台湾ドルと過去最高を記録している。 アリゾナ州への追加投資は、2ナノメートル世代の先端製造施設および先端パッケージング設備の拡充に充てられる見込み。TSMCは2026年通期の設備投資見通しも従来の520億〜560億ドルから600億〜640億ドルへと上方修正し、今後3年間の累計投資額は過去3年間を上回る規模になるとしている。 今後の見通し TSMCは第3四半期の売上高について446億〜458億ドル、営業利益率56〜58%になるとの見通しを示した。同社CFOは2ナノメートルプロセスの急速な量産立ち上げが業績を牽引していると説明しており、AI需要を背景とした高水準の成長が当面続く見込みだ。旺盛な需要に対応するための積極的な設備投資と米国内生産拠点の拡大は、地政学的なリスク分散と先端半導体のサプライチェーン強化という観点からも注目される。

July 17, 2026

TSMC、6月売上高が前年比67.9%増の単月最高を記録 AI半導体需要が押し上げ、四半期決算発表を控え期待高まる

概要 世界最大の半導体受託製造(ファウンドリ)企業であるTSMC(台湾積体電路製造)は、6月の売上高が前年同月比67.9%増の4426.8億台湾ドル(約138億米ドル)に達し、単月として過去最高を記録したと発表した。第2四半期全体の売上高もおよそ1兆2700億台湾ドルとなり、アナリスト予想の1兆2640億台湾ドルを上回る見通しで、前年同期比では36%増と四半期としても過去最高となる公算が大きい。上半期(1〜6月)の累計売上高も前年比35.6%増の2兆4000億台湾ドルに達しており、TSMCの成長ペースが年間を通じて加速していることを裏付けている。同社は7月16日(木)に第2四半期決算を発表する予定で、収益性や利益率、2ナノメートル世代の量産進捗などの詳細が明らかになるとして市場の期待が高まっている。発表を受けてTSMCの株価は約1%上昇した。 AI半導体需要が成長を牽引 TSMCのウェイ・チェチアCEOは、AI関連需要について「非常に堅調」と表現しており、その背景には自律的に判断・行動する「エージェント型AI」への進化に伴う演算能力需要の急拡大があるとされる。同社の先端プロセス技術(7ナノメートル以下)は第1四半期時点でウエハ売上高の74%を占め、うち3ナノメートル世代単独で25%を占めるなど、最先端プロセスへの需要集中が鮮明になっている。さらに、NvidiaがTSMCの先端チップパッケージング能力のうち約60%を2026年向けに確保しているとも報じられており、AIアクセラレータ向け需要が生産能力配分にも大きな影響を与えていることがうかがえる。 今後の見通し TSMCはこれまで、2026年通期の売上高が米ドルベースで30%超の成長になるとの見通しを示しており、設備投資額は520億〜560億米ドルの範囲で製造能力拡大に充てる計画としている。今回発表された6月および第2四半期の実績は、こうした強気の通期ガイダンスと整合する内容であり、AIインフラ投資の拡大が当面続くとの見方を裏付けるものとなった。7月16日に予定される正式な決算発表では、利益率の動向や2ナノメートル世代の立ち上げ状況など、より詳細な経営指標が示される見込みで、AI半導体サプライチェーン全体の先行きを占う材料として注目が集まっている。

July 16, 2026

ニューヨーク州、大規模AIデータセンター新設を1年凍結 全米初の州レベル規制に

概要 ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は7月14日、消費電力50メガワット以上の大規模データセンターの新規建設を1年間停止する行政命令に署名した。州環境保全局(DEC)はこの期間、対象となる新規施設への許可を発行しない。米国の州としてAIデータセンターに一時禁止措置を導入するのはニューヨーク州が初めてで、対象は10件超のプロジェクトに及ぶとみられる。ホークル氏は「進歩は、電気料金の上昇や水資源の枯渇、騒音公害と引き換えにあってはならない」と述べ、AIブームに伴うデータセンター建設ラッシュが電力網や水資源、地域社会に与える影響への懸念を表明した。 背景にある懸念 今回の措置の背景には、AI向けデータセンターの急増による電力網への負荷、水の大量消費、電気料金の上昇に対する住民の不安がある。世論調査では、州民の3分の2がデータセンターの増加によって電気料金がさらに上がることを懸念しているという結果も出ている。ホークル氏は「AIは働き方や学び方、コミュニケーションの取り方、ビジネスのあり方を変えつつある」としつつも、電力網へのリスクを抑え、土地の改変を最小限にするための「ガードレール」が必要だと強調した。この1年間の凍結期間中に、州はエネルギー需要や水の使用量・水質、大気質などを評価する環境影響アセスメントを実施し、規制の枠組みを整備する方針だ。 業界への影響と反発 データセンター業界を代表する団体Data Center Coalitionは、今回の凍結措置により「数千億ドル規模」の投資が他州に流出し、ニューヨーク州の雇用や税収が失われかねないと警告している。実際、州は今後、データセンター事業者に電力網支援費用の負担を求めたり、税優遇措置を撤廃したりする可能性も示唆しており、業界にとっては逆風となりそうだ。さらに、20メガワット以上を対象に1年間の一時停止を課すより厳しい法案も州議会で審議されており、今後さらに規制が強化される可能性もある。なお、データセンター開発を積極的に後押ししてきたトランプ政権の方針とは対立する形となっており、連邦と州の政策のずれも今後の焦点となりそうだ。 今後の展望 AI需要を背景に、2030年までに新設されるデータセンターの4分の1近くが500メガワット超の規模になると見込まれており、電力インフラへの負荷は今後さらに増す見通しだ。ニューヨーク州の今回の動きは、他州でも同様の規制を求める議論を後押しする可能性がある一方、同様の州レベルでの一時禁止提案はこれまで他州では成立してこなかった経緯もあり、11月の知事選でホークル氏の対立候補であるブルース・ブレイクマン氏がこの全州一律の凍結に反対し、地域ごとの個別協議を主張するなど、政治的な争点にもなりつつある。1年間の凍結明けにどのような規制枠組みが示されるかが、全米のAIインフラ政策の試金石となりそうだ。

July 16, 2026

AI半導体株が総崩れ、時価総額1兆ドル超消失でTSMC・ASML決算に市場の視線

概要 AIブームを牽引してきた半導体関連株が急速に売り込まれ、Reuters の試算では時価総額で約1兆3000億ドルが失われる「チップ株の暴落」が発生した。マイクロン、インテル、AMD、サムスン電子、SKハイニックスなど主要企業の株価が軒並み下落し、フィラデルフィア半導体指数は10.8%下落、VanEck半導体ETFは直近10営業日で13%安、iシェアーズ半導体ETFも週間で8%下落するなど、指数レベルでも急落が鮮明になっている。下落の背景にあるのは需要そのものの減退ではなく、AIインフラ投資の投資対効果への懐疑論、ドットコムバブル期に匹敵するとも指摘される割高なバリュエーション、そしてFRBのタカ派姿勢が強まったことへの警戒感が重なった結果だとされる。 TSMCとASMLの決算に集まる注目 こうした市場の動揺のさなか、7月15日発表予定のASML、16日発表予定のTSMCの決算はこれまで以上に重要度が高まっている。TSMCは6月単月の売上高がNT$4426.8億と前年同月比68%増、前月比でも6.2%増加し、2026年上半期の累計売上高はNT$2兆404億(前年同期比35.6%増)に達するなど、ファンダメンタルズ自体は極めて強い。市場関係者はNvidia向けチップの需要を支えるCoWoSなど先端パッケージング技術の採算性に注目している。ASMLについてもLSEGの予想によれば、第2四半期の純利益は前年比8.8%増の26億1000万ユーロ、売上高は14%増の88億ユーロに達し、通期売上高ガイダンスは360億〜400億ユーロへ上方修正される可能性がある。アナリストのMehdi Hosseini氏は、ASMLの生産能力は2027年末まで実質的にすべて予約済みとの見方を示しており、好決算とガイダンス引き上げが見込まれている。 ASMLの供給制約と中国リスク ASMLにとって最大の焦点は、AIチップ製造に不可欠な最先端EUV露光装置(1台あたり約3億ドル、製造に約1年を要する)の供給制約だ。同社は2026年に低NA型EUV装置を60台出荷する計画で、これは2025年実績比25%増にあたり、2027年には最大80台まで生産能力を引き上げる方針を示している。JPモルガンのアナリストは理論上110台までの製造が可能と指摘する一方、ASML自身は「理論上90台」との見解を示しており、既存装置のアップグレードや組立・設置の迅速化といった対応策の検討も進めている。一方で中国市場は2026年売上の最大20%を占めるが、これは自動車・産業用・電子製品向けチップに使われる旧世代のDUV装置が中心で、最先端EUV装置は現時点でも中国向けに販売されていない。しかし、同盟国に対中輸出管理の足並みを揃えるよう求める米国の新たな法案がASMLを名指ししており、中国向けの最後の販売チャネルが絶たれかねないリスクとして警戒されている。 見方が分かれるアナリスト評価と今後の展望 ASMLの評価をめぐってはアナリストの見解が分かれている。Morningstarのハビエル・コレオネロ氏は、同社が掲げる2030年の売上目標440億ユーロについて「過度に保守的」だとし、自身は600億ユーロの達成も十分あり得るとの強気の見方を示す一方、KBCのトーマス・クーヴルール氏は2027年予想利益に対する株価収益率が49倍と割高であるとして「ホールド」を維持している。TSMC(Nvidia向けチップ生産)、サムスン電子、SKハイニックス、さらにはインテルの巻き返しやイーロン・マスク氏が構想する「TeraFab」計画といった潜在的な設備投資需要も、ASMLの見通しを支える材料として挙げられている。今回の株安が一時的な調整にとどまるのか、AI投資バブルの転換点となるのかは、15日・16日に相次いで発表されるASMLとTSMCの決算内容とガイダンスが大きな判断材料になるとみられている。

July 15, 2026

ソフトバンクG孫社長「2040年に100兆規模のAIエージェントが働く社会に」、電力・データセンター投資を強化へ

概要 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は2026年7月14日、法人向けイベントでの講演の中で、2040年までに自律的に仕事をこなす「AIエージェント」が100兆個規模で稼働する未来像を提示した。孫氏は、AIエージェントの普及によって社会や産業の「景色が変わる」と表現し、企業活動や働き方が今後大きく様変わりするとの見通しを示した。 インフラ投資への言及 講演の中で孫氏は、これほど大規模なAIエージェントが稼働するためには、それを支える電力供給とデータセンターといったインフラの拡充が不可欠になると指摘した。ソフトバンクグループとして、こうした需要の急拡大を見据え、電力・データセンター分野への投資をさらに強化していく方針を明らかにした。AIエージェントが実際に「働く」ためには膨大な計算資源と電力が必要になるため、AIモデルの開発競争だけでなく、それを支える物理的なインフラ整備が今後の競争力を左右する要素になるとの認識がうかがえる。 今後の展望 孫氏がたびたび語ってきた「群戦略」やAI投資への積極姿勢の延長線上にある発言として、今回の2040年ビジョンは位置づけられる。100兆個という規模はソフトバンクグループが以前から言及してきたAIエージェントの数値目標と重なるものであり、法人顧客に向けて、AIエージェントの本格的な普及を見据えた事業展開への協力を呼びかける狙いがあるとみられる。今後、電力・データセンター投資の具体的な規模や計画が明らかになるかが注目される。

July 15, 2026

Anthropic、非公開市場での評価額が1.2兆ドルに急騰しOpenAIを逆転

概要 Anthropicの株式が非公開の二次市場(セカンダリーマーケット)で評価額1.2兆ドルに達し、約9,080億ドルとされる競合OpenAIの評価額を初めて上回ったことが明らかになった。この数字は、5月に実施されたシリーズHラウンドでの評価額9,650億ドルからわずか1カ月半ほどでの急騰であり、過去1年間では実に550%という驚異的な伸び率となる。3カ月前の評価額が1兆ドルだったことを踏まえても、その後の上昇ペースは異例の速さだ。 市場の需給が生む「フロス」 今回の評価額急騰の背景にあるのは、業績や収益の伸びというよりも、極端な需給の逼迫だという指摘が多い。ある取引プラットフォームの幹部は「Anthropicはベンチャーのセカンダリー市場がこれまでに見た中で最も引く手あまたの企業だ」と語っている。あるブローカーは「誰も売ろうとしない」状態だと述べており、取引が成立すること自体が稀になっている。需要が供給を大幅に上回るあまり、一部の買い手は自宅とAnthropic株式の交換を持ちかけたとも報じられている。 こうした投資熱の高まりを受け、多くの取引は特別目的事業体(SPV)を経由する形で行われている。しかしAnthropic自身はこうした間接的な投資ルートに対して公式に注意喚起をしており、セカンダリー株式は取締役会の議席や確実な出口(イグジット)を伴わない、流動性の低い少数株主持分に過ぎないと警告している。詐欺のリスクも依然として高いとされ、投資家には慎重な判断が求められている。 IPOを控え、評価額の真価が問われる Anthropicは6月にIPO(新規株式公開)を非公開で申請しており、数カ月以内の上場が見込まれている。今回の1.2兆ドルという評価額が、企業の実力を反映した正当な水準なのか、それとも公開市場の厳しい審査には耐えられない非公開市場特有の「フロス(泡)」に過ぎないのかは、この上場によって初めて明らかになる見通しだ。AI業界の勢力図を左右しかねないOpenAIとの評価額逆転劇は、IPOに向けた注目をさらに集めることになりそうだ。

July 13, 2026

Apple、元従業員の引き抜きを巡りOpenAIを企業秘密窃取で提訴

概要 Appleは2026年7月10日、カリフォルニア北部地区米国連邦地方裁判所にOpenAIを提訴した。訴状でAppleは、OpenAIのハードウェア事業が「違法な依存関係によって根本的に腐敗している」と主張し、400人超の元Apple従業員がOpenAIに移籍する中で、組織的な企業秘密の窃取が行われたと訴えている。両社は2024年にChatGPTをSiriの代替として統合する提携を結んでいたが、OpenAIが独自のハードウェア事業に参入して以降関係が悪化しており、今回の提訴は大手テック企業と生成AI企業の間で異例の法廷闘争に発展した。 具体的な告発内容 訴状で名指しされている主な被告は2人。1人はOpenAIの最高ハードウェア責任者Tang Tan氏で、Appleに24年在籍しiPhoneやApple Watch、iPodの製品設計を担っていた人物だ。Appleは、Tan氏が採用面接で「Appleの機密プロジェクトコード名」を使用したほか、応募者に「実際のApple機器部品」を面接に持参するよう指示したと主張している。もう1人はAppleに8年在籍した上級システム電気エンジニアのChang Liu氏で、退職時にApple支給のラップトップを返却せず、機密のハードウェア技術文書をダウンロードしたとされる。訴状はさらに、OpenAIが採用候補者に対して「調査を回避する方法」を指導しながら、機密情報の共有を奨励していたとも主張している。Appleは、盗用された情報には未発表技術の技術仕様やエンジニアリングプレゼンテーション、proprietaryなプロジェクトデータが含まれると説明している。 背景にある提携関係の悪化 両社の関係は2024年の協業開始から一転して対立へと転じた。当初AppleはChatGPTをiPhoneのSiriの代替機能として統合するためにOpenAIと提携していたが、その後OpenAIは元Appleのリードデザイナーであるジョニー・アイブ氏を迎え入れ、同氏の企業io Productsを約65億ドルで買収してAI連動デバイスの開発を本格化させた。この動きはiPhoneの競合となり得る製品開発への懸念をAppleに抱かせたとみられる。Appleは2026年2月の時点でOpenAIに懸念を伝えたが、応答がなかったと主張しており、これが今回の提訴に至る一因になったとされる。OpenAIのCFOであるサラ・フライアー氏は、2026年末までにコンシューマー向けハードウェア製品を投入する意向を示しており、OpenAIは「従来の製品とインターフェースを超える新しいインタラクション方法」を模索しているという。 両社の反応と今後の見通し Appleは声明で「我々のチームの努力と革新を守ることは極めて重要だ」と述べ、企業秘密保護のために法的措置に踏み切った姿勢を強調した。一方でOpenAI広報のドリュー・プサテリ氏は「OpenAIは他社の企業秘密には関心がなく、革新的な技術の構築に注力している」とコメントし、Appleの主張を退けている。今回の訴訟は、生成AI企業が既存のスマートフォン・PCメーカーの人材やノウハウを取り込みながらハードウェア市場に参入する動きが本格化する中で、人材の流動性と企業秘密保護の境界線を巡る先例となる可能性がある。訴訟の行方次第では、AI企業による人材獲得競争や技術開発戦略に一定の制約が生じることも考えられ、今後の審理の展開が注目される。

July 13, 2026

中国DRAM大手CXMT、43億ドル規模のIPOへ サムスン・SKハイニックスに挑む

概要 中国安徽省合肥市に本拠を置くDRAMメーカー、長鑫存儲技術(ChangXin Memory Technologies、CXMT)が、上海証券取引所のテック企業向け市場「科創板(Star Market)」への上場を計画していることが明らかになった。7月15日にブックビルディング(価格協議)を行い、7月16日から申込を開始する見通しで、調達額は少なくとも295億元(約43億米ドル)に達する見込み。実現すれば、SMICの上場に次ぐStar Market史上2番目の規模のIPOとなり、2026年の中国A株市場でも最大級の新規上場となる。2016年に中国政府の支援を受けて設立されたCXMTは、いまや世界第4位のDRAMメーカーとされ、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジーという既存3強に真っ向から挑む構えを見せている。 業績の急拡大 CXMT躍進の背景には、驚異的な業績の伸びがある。通期売上高は前年比156%増の約86億ドルに達し、2024年の約33億ドル、2023年の約12億ドルから急拡大した。純利益も初めて黒字に転じ、10億ドル規模に達したという。直近の四半期でも売上高が前年同期比719%増となり、前年同期に28億3000万元の赤字だった純利益は330億元の黒字に転換した。同社はサムスンやSKハイニックスが高帯域幅メモリ(HBM)へシフトする過程で手薄になったDDR4など汎用メモリ市場を積極的に取り込み、世界シェアを7.67%まで伸ばした。価格面でも世界大手との差は5~10%以内に縮まっているとされる。主要顧客にはテンセントやバイトダンス(DDR5サーバー向けメモリの発注を開始)、アリババクラウド、レノボ、シャオミ、OPPO、vivoなどが名を連ねる。さらに、アップルがCXMT製メモリの調達に向けて米政府の承認を得ようとロビー活動を行っているとも報じられており、米国企業との取引拡大の可能性も注目されている。 資金使途とHBMを巡る攻防 IPOで調達した資金の使途としては、生産能力の拡張・増強に75億元(約11億ドル)、DRAM技術のアップグレードに130億元(約19億ドル)、次世代技術の研究開発に90億元(約13億ドル)が充てられる計画とされる。CXMTは3D IC技術を用いたカスタムメモリ市場を次の成長の突破口と位置づけているが、HBMをはじめとする先端製品では依然として韓国勢に2~3年遅れているとの指摘もある。AI・データセンター需要の拡大を背景に、中国の半導体市場は2026年に前年比93%増の8121億ドル規模、メモリチップ市場は263%増の4496億ドル規模へと急成長するとの予測もあり、CXMTの上場はこうした市場拡大の波に乗る動きといえる。今回のIPOの成否は、米国の輸出規制下で自国半導体産業の自立を急ぐ中国にとって、大きな試金石となりそうだ。

July 12, 2026