AnthropicとMeta、最大100億ドル規模のコンピュート貸与で初期交渉 最大のライバル同士が異例の提携へ
概要 Meta PlatformsがAnthropicに対し、最大100億ドル規模のクラウド計算能力を2年間にわたって貸与する初期交渉を進めていると、2026年7月17日にNew York TimesおよびCNBCが報じた。AnthropicがChatGPTの競合であるClaudeを開発する一方、Metaも独自の大規模言語モデルLlamaを開発しており競合関係にある。もし合意に至れば、Metaが最大のAIライバルであるAnthropicにインフラを提供するという異例の構図が生まれることになり、AIインフラを巡る争奪戦の中でも屈指の大型契約として注目を集めている。交渉はまだ非常に初期段階にあり、最終的な契約に至る保証はない。両社はコメントを控えている。 交渉の背景 Anthropicは提案を6月に持ちかけ、現在Metaが検討している段階だという。背景にはAnthropic自身のクラウド能力不足があり、これによりClaudeの利用に上限が設けられるなど、最先端モデルへのアクセスに制約が生じていた。一方のMetaは、広告事業に依存した収益構造の多角化を図っており、2026年には最大1,450億ドルという巨額の資本支出を計画してAIインフラへの投資を進めている。すでにAWS出身の幹部Dave Brownを迎え入れるなど、CoreWeaveやNebiusといった新興クラウド企業と競合する形で独自のクラウド事業への参入を目指す動きを見せていた。CEOのMark Zuckerbergも2026年5月の株主総会で、クラウドコンピューティング事業への参入を検討していると述べていた。なおMetaは同時期に8,000人規模の人員削減も実施しており、経営資源の再配分を進めている最中でもある。 契約条件と交渉の難航点 報道によれば、合意に至った場合はAnthropicがMetaに対して月次で支払いを行う形になる見込みで、契約期間は2年間、両社とも契約を早期に打ち切ることが可能な柔軟な内容になるとみられる。ただし、契約条件は今後も変更される可能性があり、Metaにはこれまで計算能力を外部に販売してきた実績がないため、交渉が複雑化しているとも伝えられている。 なお、Anthropicが大手インフラ企業から大規模に計算能力を調達する動きはこれが初めてではない。2026年5月には、Elon Musk率いるSpaceXがAnthropicとの間で、月額12億5,000万ドル規模とされる契約を結び、テネシー州メンフィスにあるColossus 1データセンターの計算能力へのアクセスを提供している。SpaceXはAnthropicとGoogleの双方にGPUを販売しているとも報じられており、AI業界における計算資源の貸し借りが企業間の競合・協業の垣根を越えて広がっている実態がうかがえる。 業界への影響 今回の交渉が象徴するのは、AI業界における競争構図の急速な曖昧化だ。GoogleはMetaにGeminiモデルを提供しつつも供給量を制限しているとされ、SpaceXは複数のAI企業にGPUを供給するなど、各社は競合相手であっても不足する計算資源を融通し合う関係を築きつつある。慢性的な計算能力不足がAI業界全体を覆う中、モデル開発企業とインフラ企業という単純な二分法はもはや通用しなくなりつつあり、MetaとAnthropicの交渉はその最新かつ最大級の事例として今後の展開が注視される。