概要

AIスタートアップのRecursiveは10月21日、ノートPC上で動作する無料のコーディングモデル「Flint」をApache 2.0ライセンスで公開した。最大の特徴は、モデルの事前学習・事後学習・推論エンジン設計のほぼ全工程を、同社のAI研究システム「Eureka Machine」が主導して開発した点にある。Recursiveは2025年設立の新興企業で、今年5月にステルスモードを脱した際にはGV、Nvidia、AMD Venturesなどから6億5000万ドルを調達し、評価額46億5000万ドルに達している。CEOのRichard Socher氏はSalesforceの元チーフサイエンティストで、同社は「AI自体を改善できるAI」の構築を目標に掲げてきた。Flintの公開は、そのビジョンを具体的な製品として示す初めての実例と位置づけられている。

Flintの技術的特徴

Flintは混合専門家(mixture-of-experts)構成のモデルで、総パラメータ数400億のうち、実際のタスク処理では25億のみを使用する設計により、通常のノートPCでも動作可能になっている。これはMeta製の「Muse Spark Open」(8160億パラメータ、動作には最低1テラバイトのメモリが必要)と比べて大幅に軽量だ。性能面では、M4 Pro搭載のMacBook Proで秒間131トークンを生成し、Google Gemma 4やNvidia Nemotron 3.5 Lightningの約2倍の速度を記録、Nvidia RTX Sparkでは秒間150トークン以上に達するという。コーディング能力の指標であるSWE-Bench Verifiedでは、500億パラメータ以下のモデルの中で最高性能を記録したとされる。WiredのレビュアーであるWill Knight氏は、ToDoリストアプリや簡易的なWebリサーチツールなど小規模なプログラムの構築依頼には的確に応えたと報告した。Recursive自身は、大規模なタスクでは有料の大型コーディングアシスタントより多くの段階的な指示が必要になると認めている。

Eureka Machineによる開発プロセス

Eureka Machineは、アイデア生成から実験の実施、次に試すべき手法の選定までを自動化するAI研究アシスタントで、Flint開発では疎なモデル構造の提案、品質を保ちながら71%の圧縮を実現する低ビット学習手法、計算速度を高める専用カーネルの開発などに貢献したという。Eurekaの支援により、小規模チームが4か月以内にゼロからモデルを構築できたという。

ライセンスと公開の意図

FlintはHugging Face上でApache 2.0ライセンスにより無料公開されており、利用・改変が自由な上、クラウド課金モデルを前提としないオフライン運用が可能で、プライバシー保護の観点でも注目されている。Socher氏はWiredのインタビューで、長期目標は「完全な再帰的自己改善」の達成であるとしつつ、人間が開発を監督し異常時には停止できる仕組みを維持する考えを示した。OpenAIが先月、自社のAIエージェントが「人間研究者1人分の作業につき3.1労働日分を記録している」と発表したことや、Recursiveが6月に結んだ4億1000万ドル規模のAWS契約が「人員数よりエージェント数を重視する」方針に基づくとされていることも、AIが研究開発そのものを加速させる潮流を裏付ける動きとして注目されている。