概要

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは10月19日、ベルリンでドイツのメルツ首相と会談し、ロボットや製造業向けのAIモデル開発を推進する「フィジカルAI」分野での協力に関する共同宣言に署名した。同社はこれに合わせて欧州向けに約100億ドル規模の投資計画を発表し、そのうち約100億ドルの一部をドイツのAI産業振興に充てるとともに、Agile Robots、Avelios Medical、Mirelo、Reflex Aerospaceといったドイツのスタートアップ4社への出資を明らかにした。

「フィジカルAI」分野での協力

今回の共同宣言には、メルツ首相に加え、ドイツ連邦経済・気候保護省、連邦デジタル・交通省、そしてNVIDIAが名を連ね、物理法則に基づくAIモデル(physics-based AI models)の開発で協力する意向を確認する内容となっている。対象となるのはロボットや産業機器、製造業向けのAI応用で、現実世界の物理的な制約や動作を学習・シミュレーションできるAIモデルの実用化を見据えたものだ。メルツ首相はドイツの中小企業に対し、既存の産業データを最大限に活用してAI導入を加速するよう呼びかけており、今回の協定を製造業大国としてのドイツの強みをAI時代に転換する施策の一環と位置付けている。

独AIスタートアップ4社への出資

NVIDIAが発表した約100億ドル規模の欧州投資計画のうち、一部はドイツのAI産業育成に重点的に振り向けられる見通しで、出資対象として名前が挙がったのはロボティクス企業のAgile Robots、医療ソフトウェアを手がけるAvelios Medical、AIによる音声・映像生成技術を開発するMirelo、衛星製造を行うReflex Aerospaceの4社。分野は産業ロボットから医療、クリエイティブ分野、航空宇宙まで幅広く、NVIDIAが単なる資金提供者としてだけでなく、GPUやソフトウェアスタックを含むAI基盤技術の供給元としてドイツのAIエコシステム全体への関与を強めていることがうかがえる。

今後の展望

NVIDIAは近年、米国外でのAIインフラ投資を積極化させており、今回のドイツとの協定は欧州における製造業・ロボティクス分野へのAI展開を加速させる狙いがある。ドイツ政府が看板産業である自動車・機械製造の競争力維持にAIを不可欠な要素と位置付けていることもあり、政府主導の協力枠組みと民間スタートアップへの直接出資を組み合わせたこの取り組みは、他の欧州諸国が同様の官民連携モデルを検討する際の先例となる可能性がある。