概要

米国土安全保障省(DHS)は10月20日、2018年の連邦調達サプライチェーン安全保障法(FASCSA)に基づき、中国・杭州DeepSeek Artificial Intelligence社が提供するAI製品を連邦民間機関のITシステムから排除するよう命令した。命令は同日付の連邦官報(Federal Register)に掲載され、各機関に対してDeepSeek製品を調達対象および承認済みベンダーリストから即座に除外し、既存システムからの撤去を求めている。なお今回の措置はあくまで連邦政府機関を対象としたものであり、民間企業や個人消費者によるDeepSeek製品の利用を制限するものではない。

例外申請の手続きとCISAの役割

業務上の都合などでDeepSeek製品の排除が困難な機関は、命令発出から60日以内に例外申請を提出できる。申請には正当な理由とあわせて、具体的なリスク低減策の提示が求められ、米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)が内容を審査したうえで書面により承認または却下を行う。また、技術的制約により対応が難しい機関向けには、CISAが技術支援を提供する体制も整えられている。

背景にあるセキュリティ上の懸念

DeepSeekは大規模言語モデルやチャットボット、API、コーディング・推論向けAIツールなどを手がけ、低コストで高性能なモデルとして急速に利用が広がった一方、セキュリティ面の懸念も繰り返し指摘されてきた。2025年2月にセキュリティ企業NowSecureが公表した調査では、同社のiOSアプリに暗号化されていない通信や脆弱な暗号方式、安全性の低いデータ保存方法、さらにByteDanceとのデータ共有といった問題が確認されている。DHSは、中国政府がユーザーの会話履歴や個人情報にアクセスできる可能性、および政府の機微な情報が中国側に渡るリスクを今回の排除命令の根拠として挙げた。

各国の対応と今後の見通し

DeepSeekを巡っては、ドイツがアプリストアからの削除を要請するなど、他国でも同様の警戒感に基づく対応が先行していた。今回のDHSの命令は、こうした国際的な動きと歩調を合わせる形で、米国政府が中国製AI製品に対する調達規制を一段と強化したものと言える。今後、他の連邦機関や関連法制においても同様の排除・制限措置が広がるかが焦点となりそうだ。