概要

Docker Hubにおいて、個人アカウントを組織(Organization)に変換する際の処理に重大な脆弱性(CVE-2026-105445、深刻度Critical)が存在したことが明らかになった。攻撃者は個人アクセストークン(PAT)を発行したアカウントを組織に変換し、別のユーザーをそのオーナーとして指定するだけで、トークンの秘密情報を失効・ローテーションすることなく、また対象ユーザーの同意や通知を一切経ずにPATの所有権をそのユーザーへ移してしまうことができた。この結果、攻撃者は移管後のトークンを使い、レジストリ上で標的ユーザーとして振る舞うことが可能になっていた。

悪用の仕組みと影響

Dockerの説明によれば、再割り当てされたPATは「トークンのスコープ内でレジストリレベルの標的ユーザーとして動作した」とされ、攻撃者は被害者が管理するリポジトリやアクセス可能な組織に対して、イメージのpull・push・削除を行える状態にあった。これはコンテナサプライチェーンへのリスクに直結する内容であり、正規のメンテナーになりすまして改ざんしたイメージを配布される、あるいは意図せずイメージを削除されるといった被害につながりかねないものだった。

発覚から修正までの経緯

この不具合の起点は2024年8月26日、組織変換機能がPATを再割り当てする仕様になった時点まで遡る。問題が報告されたのは2026年9月30日で、Dockerは同日のうちに約4時間で修正を本番環境に展開したという。その後10月2日に影響を受けた可能性のあるユーザーへの通知を行い、10月8日には移管されたPAT群を無効化した。Dockerは移管トークンを用いた約30万件のpush処理を調査し、リスクの高い公開イメージについても分析を行ったが、実際の悪用の痕跡は見つからなかったとしている。

今後の対応

Dockerはこの一件を受け、組織変換時にPATを移管する処理そのものを廃止し、今後は組織オーナーの指定前に対象ユーザーの明示的な同意を必須とするようプロセスを改めた。実害が確認されなかったとはいえ、認証基盤の設計不備がサプライチェーン全体に波及し得ることを改めて示す事例であり、コンテナレジストリを利用する開発者やCI/CDパイプラインの運用者にとっては、アクセストークンの権限範囲や有効期限を定期的に見直す重要性を再認識させる出来事と言えるだろう。