概要
英国政府は2026年10月8日、暗号資産決済プラットフォーム「Cryptomus」に対して経済制裁を発動した。ロシア政府とその金融機関に利益をもたらす支払いを処理し、同国の金融制限回避を支援していたことが理由とされる。制裁により英国内の銀行が保有するCryptomus関連資産は凍結され、英国企業が同社に対してサービスを提供することも禁止された。制裁対象にはCryptomusに加え、同様のネットワークに関連するとされるVexPay、TokenSpot、Tsunami Payments Serviceも含まれている。
Cryptomusの実態と犯罪活動との関わり
Cryptomusは2022年に設立された暗号資産決済プラットフォームで、これまで「Certa Payments」「Xeltox Enterprises」など複数の名称で事業を展開してきた。カナダ当局による罰金処分を受けた2025年以降は「Heleket」の名称で活動を継続しているという。ブロックチェーン分析企業TRM Labsの調査によれば、同プラットフォームは設立以来70億ドルを超える取引を処理し、その中には児童性虐待素材の販売者、テロ資金調達ネットワーク、人身売買作戦に関連する資金も含まれていたとされる。別のブロックチェーン分析企業Chainalysisの分析でも、Cryptomusはランサムウェア、薬物取引、ダークネット市場、詐欺、サイバー犯罪サービスへの支払いを流す主要な経路として機能しており、2025年後半には単一月間で900を超える違法な取引相手が記録されたと報告されている。
ロシアとの関係と規制の空白
Cryptomusはロシアの暗号資産取引所や犯罪サービス販売サイトにとって主要な決済プロセッサーの役割を果たしていたとされる。同社の事業許認可は、紛争地域である西サハラに拠点を置くとされる実体不明の規制当局「WS Management and Advisory Corporation」が発行したものだった。また親会社Certa Paymentsの唯一の株主は、複数の関連企業を統括する25歳のウクライナ人女性であったことも明らかになっている。こうした実態の不透明さが、長年にわたり規制の網をかいくぐる要因になっていたとみられる。
カナダの罰金措置との比較と今後の見通し
カナダは2025年10月、Cryptomus関連事業者に対しCAD1億7600万ドルの罰金を科していたが、ブロックチェーン分析家のRichard Sandersは「罰金は暗号資産決済プロセッサーの運営を止めないが、制裁はそれを止める」と述べ、資産凍結と取引禁止を伴う英国の措置の方がより実効性が高いと指摘した。Sandersはまた、今回の制裁が「Five Eyes諸国の一国が、別のFive Eyes加盟国に登記された暗号資産企業を制裁する初めての事例」になるとも述べており、同盟国間であっても資金洗浄インフラに対する取り締まりが及ぶ可能性を示す動きとして注目されている。今後、同種のプラットフォームに対する国際的な制裁の連鎖が広がるかどうかが焦点となる。