概要
対話型AIチャットボットサービスを提供するCharacter.AIが、連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。資産と負債の規模はいずれも5000万~1億ドルの範囲とされる。同社は資産の一部とテクノロジーの非独占永続ライセンスをディズニーに2000万ドルで売却することに合意しており、前CEOのKarandeep Singh Anandを含む元従業員の一部もディズニーに移籍するという。2021年後半の創業からわずか5年、一時はユニコーン企業として急成長を遂げたAIスタートアップの経営破綻は、消費者向けAI事業の持続可能性に改めて疑問を投げかけている。
急成長と資金調達の軌跡
Character.AIは、Googleの研究者でTransformer論文の共著者でもあるNoam Shazeerと、同じくGoogle出身のDaniel De Freitasが2021年後半に設立した。サービス開始後の成長は急速で、2022年9月には1億5000万ドルのシリーズA調達でユニコーンの地位を獲得し、その時点でボットとのメッセージ交換数は5カ月間で20億件を突破し、ユーザーの平均利用時間は2時間を超えていた、2023年5月には初週のアプリダウンロード数が170万件に達するなど勢いを増した。2024年10月時点の月間アクティブユーザーは2000万人にのぼり、Lightspeed、SV Angel、Greycroft、a16zなどから総額1億9300万ドル以上を調達している。しかし2024年8月、Googleが27億ドルでモデルのライセンス契約を結ぶと同時に両創業者がGoogleに復帰し、同社は創業者を欠いた体制での経営を余儀なくされた。
訴訟・規制問題と収益化の壁
経営悪化の背景には、法的・規制的な課題と事業構造上の問題が重なっている。2024年10月には、14歳の少年が自殺した事案でプラットフォームのチャットボットとの関わりが問題視され訴訟に発展、同年12月にはテキサス州が子どものプライバシーと安全性を巡る調査を開始した。これらの訴訟は2026年初頭までに複数が和解に至ったものの、ブランドイメージと経営体力の双方に打撃を与えた。CEOのColin Adamsは、同社が「法的、規制的、運営上の重大な課題」に直面したとして、利害関係者の価値を最大化するために破産手続きを選択したと説明している。加えて、ユーザー数の増加に比例してAI推論コストが増大する一方で、無料利用が中心の消費者向けサービスでは収益化が難しいという、生成AIスタートアップに共通する構造的な課題も経営を圧迫した。なお、2024年8月に暫定CEOとなった最高法務責任者のDominic Perellaに続き、2025年6月には元Brex・Meta幹部のKarandeep Singh AnandがCEOに就任し、AI動画生成機能やフィード機能の追加でてこ入れを図ったが、経営再建には至らなかった。
ディズニーへの売却と今後の見通し
今回合意した2000万ドルでの資産売却は、Character.AIの技術とチームの一部をディズニーが取り込む形となる。売却手続きは2026年11月下旬から12月初旬にかけて完了する見込みで、同社は現在、他の買い手からの入札も募集している段階にある。仮に追加の買い手が見つからなければ、プラットフォーム自体は停止される可能性があるという。急成長したAIキャラクターサービスの消滅は、同様のビジネスモデルを持つ他の消費者向けAI企業にとっても、収益化と安全性対応の両立という課題を改めて突きつける事例となりそうだ。