概要

Microsoftは10月12日、自社開発AIアクセラレータの第3世代となる「Azure Maia 300」を発表した。2027年に本番展開を開始し、データセンターでマルチギガワット規模の大規模展開を計画しているという。同社はMaiaファミリーをMicrosoft製品・サービス全体における主要な推論ハードウェアと位置づけており、2023年から進めてきたシリコンの内製化戦略を次の段階へと進める発表となった。現行世代のMaia 200は既に米国・欧州・オーストラリアのデータセンターでMicrosoft Copilotの本番環境を支えており、GitHub CopilotとMicrosoft Foundryについても2026年内の対応開始を予定している、GPUシステム比で1ワットあたり1.7倍のトークン処理を実現しているとされる。Maia 300はこの効率をさらに引き上げ、GPUシステムに対して1メガワットあたり約40%多いトークンを処理できるとしている。

技術的な詳細

Maia 300はTSMCのN2Pプロセスで製造されるチップレット設計を採用し、演算チップレット・メモリコントローラー・I/O機能を分離することで効率性・拡張性・コスト構造を改善している。メモリ面では8スタックのHBM4を搭載し、ピークメモリ帯域幅は18.0TB/sに達する。消費電力(TDP)はMaia 200から200ワット増の950ワットとなった。推論コンテキスト長を拡大するためMXFP4などの低精度フォーマットへの対応を強化し、KVキャッシュのメモリ消費を抑える設計も特徴だ。ラック構成では96基のアクセラレータを搭載し、ラック全体の消費電力は167キロワット、集約HBM容量は27.6TB、集約帯域幅は1.7PB/sに達するという。Microsoftはアクセラレータ同士を自社開発のEthernetベースAI伝送プロトコルで接続し、単一ラックから1万2,000基超のアクセラレータを擁する「スーパーポッド」規模まで一貫した計算・メモリ資源を提供できる点を強調している。

性能面では、ラックスケールのトークンスループットが前世代Maia 200比で最大7倍に達するとされ、計算能力自体も36%向上したとの報道がある。Microsoftは「大規模推論システムにおいては、生の計算能力よりもデータを効率的に移動させることがボトルネックになりつつある」と説明しており、Maia 300の設計思想が純粋な演算性能の追求からデータフロー最適化へと重心を移していることがうかがえる。オンダイSRAMをソフトウェア管理のスクラッチパッドとして活用する点も、このデータ移動削減の取り組みの一環だ。

背景と今後の見通し

Microsoftは2023年以降、独自シリコンの開発を通じて推論コストの削減と外部GPUサプライヤーへの依存低減を図ってきた。Maia 300はその延長線上にあり、エンタープライズ向けAIアプリケーション、複数ステップにまたがるエージェントタスク、医療分野のDragon Copilotといった用途での活用が見込まれている。同社は「フロンティア変革」戦略の一環として、シリコンからシステム、エージェント層までを一体的に最適化する姿勢を示しており、今後の自社AIサービスの価格競争力にも影響を与える可能性がある。Microsoftは2026年11月開催のIgniteで、採用戦略や導入事例についてさらに詳細を公開する予定としている。