概要

Cloudflareは、同社のエッジコンテナ基盤「Cloudflare Containers」をAIエージェントのサンドボックス用途に向けて根本から再設計したと発表した。最大の変更は起動速度で、独立したベンチマークであるComputeSDKのBurst TTI Benchmarkによると、起動時間の中央値は従来方式の4.049秒から新しいdurable_objectスケジューリングポリシーでは648ミリ秒へと約6.2倍短縮された。95パーセンタイルでも5.839秒から910ミリ秒(6.4倍)、99パーセンタイルでも6.717秒から1.129秒(5.9倍)に改善している。バースト負荷テストでは、単一アカウントが6つのロケーションにわたって10万コンテナを5.387秒で起動できたという。背景には、人間の開発者向けに設計されてきたコンテナ基盤に対し、コーディングエージェントや評価・強化学習のワークロードなど多数のAIエージェントが開発・テスト・実行環境として利用するようになり、需要の性質が変化したことがある。

起動高速化の仕組みとランタイム時のイメージ選択

高速化は、グローバルなコントロールプレーンを経由せずDurable Objectから直接リクエストを開始し、同じマシン内でキャパシティを優先的に検索し、イメージやスナップショットが既にローカルストレージにあるホストを優先するという新しいスケジューリング方式によって実現されている。仮想マシンのブート処理そのものをスキップし、準備済みのVMを復元する点も時間短縮に寄与している。従来はコンテナのイメージとインスタンスタイプをデプロイ時に固定する必要があり、たとえばNode.js用とPython用で異なるサンドボックスが必要な場合、別々のアプリケーションやネームスペース、ルーティングロジックを用意しなければならなかった。新方式ではwrangler.jsoncで複数イメージを宣言しておき、Durable Object内のコードで実行時にイメージとインスタンスサイズを選択できるようになった。これによりカナリアリリースやロールバックも、起動時に選択する画像をコードで切り替えるだけで実現できるようになり、複雑なロールアウト設定が不要になった。

ファイルシステムスナップショットと新ベースイメージ

もう一つの目玉機能が、パブリックベータで提供が始まったファイルシステムのスナップショット機能だ。snapshotContainer()でワークスペースの完全な状態(リポジトリ、依存関係、キャッシュ、編集内容を含む)を保存し、後からcontainerSnapshotを指定して復元できる。これにより、コーディングエージェントが数日後に同じ作業状態から再開したり、同じスナップショットから複数のコンテナを分岐させて異なるプロンプトやモデルで並行評価する、といった用途が可能になる。あわせて、Debian Trixie SlimとNode.js 24.20.0 LTSを組み込んだシステムイメージcloudflare/debian-trixieも一般提供が始まった。Dockerfileを自作しなくても即座にサンドボックス環境として起動でき、Cloudflareが事前にホスト全体へイメージを配布しているため、ダウンロードや展開の待ち時間も発生しない。

AIエージェント設計への影響と今後

Cloudflareは、今回の変更がAnthropicの提唱する「エージェントの脳と手の分離」という設計パターンに対応するものだと位置づけている。Durable Objectがセッション状態や認証情報、WebSocket通信を管理する「エージェントの脳」として機能し、Containerは起動・停止・失敗・置換を独立に行える「手」としてのサンドボックスツールになる。想定される利用例として、Base44やCursor Cloud Agentsのようなコーディングエージェント、Devin Outposts、OpenAI Agents API、Claude Managed Agentsなどが挙げられており、評価や強化学習の文脈でも、既知の状態から大量の環境を複製・評価・リセットする用途に向くとされる。なお従来のContainer/Sandboxクラスは2026年12月31日まで保守されるが、以降新機能は提供されない方針で、より高レベルな統合APIとして@cloudflare/computerも用意されている。Cloudflareは、エージェントが数時間から数週間にわたるプロジェクトを担当する時代には、永続的で再開可能なワークスペースが不可欠になるとの見通しを示している。