概要

OpenAIは、社内で開発した未公開のChatGPTフロンティアモデルを用いて生成した372件の数学的問題に関する722本の成果物を、GitHub上のopenai/mathリポジトリで公開した。内容には証明、予想、推論過程、Lean形式化ファイルなどが含まれ、中には4次元Kakeya予想の解決や、リーマン予想への貢献を主張するものも含まれている。ほとんどの論文は単一のエージェントへの単発のプロンプトから生成されており、平均してChatGPT Proで約3時間の計算時間を要したという。公開にあたっては、OpenAIが設置した数学とAIに関する諮問グループ(Advisory Group on Mathematics and AI、AGMAI)のガイドラインに沿って、推論過程や計算量の見積もり、問題への取り組み結果が併せて示された。

検証をめぐる懸念

一方で、この発表は数学界に大きな懐疑をもたらしている。MITの数学者Andrew Sutherland氏は、「モデル自体が公開され、人々が結果を再現できるようになるまでは、単一エージェントによる“ワンショット”での問題解決に関する主張は未検証のものとして扱うべきだ」と警鐘を鳴らしている。実際、OpenAIはAGMAIの推奨に反して、具体的な計算時間や使用した正確なプロンプトを公開していない。モデル自体へのアクセスも閉じられたままであり、第三者が同じ条件で結果を再現し検証することは事実上できない状態にある。

今回の発表は、以前のNavier-Stokes方程式をめぐる論争で既に高まっていた数学コミュニティとOpenAIとの緊張関係をさらに増幅させる形となった。専門家たちは、同社が主張する成果の真の意義を判断する前に、査読や独立した検証を待つべきだとしている。AIが生成した数学的成果物が量産される一方で、その信頼性を担保する透明性が伴っていない点が、今後の焦点になりそうだ。