概要

フランスのAI企業Mistral AIは10月6日、愛称「le Chonk」で知られる新フラッグシップモデル「Mistral Large 4」のプレビューをMistral StudioおよびAPI経由で公開した。Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用し、総パラメータ数は1兆(1.05T)に達する一方、推論時に活性化するのは490億パラメータのみに抑えられており、巨大なモデル規模とハードウェア効率を両立させている点が特徴だ。160以上の言語(EU加盟国の全公式言語を含む)に対応し、コンテキストウィンドウは100万トークンに拡張されている。スプレッドシート、文書、チャート、技術図面、PDF、地理空間画像なども扱えるネイティブなマルチモーダル対応が盛り込まれており、単純なテキスト生成を超えた実務的なタスクでの活用が想定されている。オープンウェイト版は今月末までに公開される予定で、現時点ではクラウド経由のプレビューとしての提供にとどまる。

性能とベンチマーク

公開されたベンチマーク結果では、画像内の対象物検出を測るDense200でGPT-6 Astraを1%上回るなど、マルチモーダル性能で競合に伍する結果を示した。一方、主流のコーディングベンチマークではAstraには一歩譲るものの、Qwen3.8MaxやDeepSeek V4 Proといった他のオープン系モデルは上回っている。ソフトウェアエンジニアリングタスクを測るDeepSWE v1.1では61.7%、自動化タスクのAutomationBenchでは59.9%を記録し、知識作業系のAA-Briefcaseでも競合を上回る成績を収めた。セキュリティ分野では特に強みを示し、AA Cyber Indexで82%のスコアを獲得してオープンソース競合を上回ったほか、個別のサイバーセキュリティテストでは82〜93%の性能を達成している。こうした結果から、Mistral Large 4はトップクラスのクローズドモデルに完全に追いついたわけではないものの、セキュリティやマルチモーダル用途、知識作業系のタスクで実用レベルの競争力を持つモデルとして位置づけられる。

公開方法と今後の展望

Mistral Large 4は現在、Mistral Studioおよびクラウド経由のAPIで即座に利用可能で、API価格は入力トークン100万個あたり1.36ドル、出力トークン100万個あたり4.18ドルに設定されている。モデルの学習には3,800個のNvidia Grace Blackwellチップが用いられた。Mistral AIはオープンウェイト版を今月末までに公開するとしており、クローズドなプレビュー公開から段階的にオープン化していく方針を取っている。同社はすでに次のモデルの学習を継続中であり、今後数ヶ月でより大規模かつ高性能なバージョンを投入する計画を示しているほか、長期的には特定の用途に最適化したモデル群を構築する方向性も明らかにしている。大規模なMoEモデルでもハードウェア効率を保ちながら多言語・マルチモーダル対応を進める今回の発表は、オープンウェイト市場における競争がさらに激化することを示唆している。