概要

中国のテンセントが、Oracleが運営する東南アジアの複数データセンターを通じて、先端Nvidia製AIチップ約10万基を5年間リースする契約を結んだと、Financial Timesの報道をもとに複数メディアが伝えた。契約総額は約70億ドルで、このうち約30%を前払いする内容だという。米国政府は中国企業への先端AIチップの直接販売を輸出規制で禁じているが、海外のクラウド事業者が提供する計算リソースをリースする形態は現時点で規制対象外とされており、テンセントはこの隙間を利用して計算資源を確保した形だ。

対中輸出規制を回避する狙い

米国は国家安全保障上の懸念から、Nvidiaなどの先端AI半導体が中国企業に直接渡ることを厳しく制限している。しかし今回のスキームでは、Oracleが東南アジアに設置したデータセンター内のハードウェアをテンセントがクラウド経由でリースするため、チップそのものが中国本土に搬入されることはない。これにより、現行の輸出規制の枠内で先端コンピューティング能力へのアクセスを確保できる。中国企業が海外クラウドを介して規制を迂回しつつAI計算基盤を調達する動きの一例として注目されている。

テンセントのAI戦略との関係

テンセントはここ数四半期でAI関連投資を急拡大させており、2026年第2四半期の資本支出は前年比176%増となった。同社の大規模言語モデル「Hunyuan」は近年大幅に性能を改善し、DeepSeekやAlibabaなど競合中国企業との差を縮めつつあるとされる。リースした計算資源はこうしたHunyuanモデルの学習・推論基盤の強化に活用される見通しで、主力アプリ「WeChat」をはじめとする各種プロダクトへのAI機能統合を加速させる狙いもあるとみられる。

業界全体に広がる海外調達の動き

同様の動きはテンセントに限らない。ByteDanceもシンガポールの子会社「Spring」を通じて、ノルウェーのデータセンターでNvidia B200 GPU約2,304基にアクセスしているとされ、中国の大手テック企業が海外のクラウド・データセンターを経由して先端AIチップへのアクセス手段を確保する動きが広がっている。輸出規制の実効性や、こうした迂回スキームに対する米国政府の対応如何によっては、今後ルール強化や新たな規制の検討につながる可能性もあり、業界の関心が集まっている。