概要

Postgresのマネージドサービスを提供するSupabaseは10月2日、SQLiteベースのデータベースサービス企業Tursoの買収と、GIC(シンガポール政府系ファンド)主導による1億5000万ドルの資金調達を発表した。調達にはAlphabet傘下のCapitalG、IronArc、SquarePegも参加している。両社は「エージェント時代のためのデータベースプラットフォーム」を構築すると位置付けており、背景にはAIエージェントが自ら大量のデータベースを生成・利用する新しい需要がある。Supabase共同創業者のPaul Copplestone氏は「エージェントはプロトタイプや探索、ダッシュボード、アプリを動かすために何百万ものデータベースを立ち上げている」と述べ、この需要が既存のグローバルなデータベースサービス容量を上回る可能性があると見ている。

Tursoの技術とSQLiteアーキテクチャ

Tursoは、SQLiteを土台にしながらも単一ライターという制約を取り除く形でゼロから作り直したオープンソースのデータベースエンジンで、「libSQL」と呼ばれるSQLite拡張フォークを核に、MVCCによる並行書き込み、非同期I/O、ベクトル検索、ページ単位の暗号化などを備える。最大の特徴は、SQLiteが単一ファイルの軽量な組み込み型データベースである点を活かし、1台のサーバーで数百万のデータベースをホストできることだ。ストレージにはAmazon S3を用いた「ディスクレス、WAL-on-S3」アーキテクチャを採用し、「イレブンナイン」(99.999999999%)の耐久性を実現するとともに、最大90日間のバックアップとポイントインタイムリカバリにも対応する。データベースが非アクティブな間はストレージ費用のみが発生し、コンピュート課金は発生しない設計も、エージェントが瞬時に自分専用のデータベースを使い捨て的に生成・破棄するようなユースケースと相性が良い。クラウドサービスとしてだけでなく、BYOC(Bring Your Own Cloud)としてのデプロイにも対応している。

買収後の体制とオープンソース継続

Turso創業者のGlauber Costa氏と共同創業者のPekka Enberg氏を含むチームはSupabaseに合流し、Costa氏はSupabaseのHead of Agentic Servicesに就任する。同氏は「この旅を始めた当初から、10億件規模のデータベースを提供することを目標にしてきた」とコメントしており、Supabaseの開発者基盤とパートナーエコシステムの大きさがこの目標達成を後押しすると強調した。既存のTursoプラットフォームは買収後もデータベースやAPI、ワークフローをそのまま維持して運用が継続され、Turso Database(Rustで実装されたSQLite実装)はオープンソースのまま積極的にメンテナンスされる。AIエージェント向けのファイルシステムで、Copy-on-Write分離を用いる「AgentFS」も開発中だ。アプリケーションの規模がSQLiteの範囲を超えた場合には、Postgresや、ペタバイト級に対応する「Multigres」への移行パスも用意されるという。SuperhumanやSauna.ai、Mastraなどがすでにこの「エージェントごとに専用データベースを持たせる」アーキテクチャの採用企業として挙げられている。

今回の調達資金の使途

今回調達した資金は、Supabaseが新たに立ち上げた長時間稼働型AIエージェント向けのホスト済みサンドボックスサービス「Supabase Compute」をはじめとするAIエージェント向け新機能の開発、および従業員の株式流動性確保に充てられる予定だ。SupabaseとTursoの統合は、AIエージェントが自律的にインフラを生成・管理する時代に向けて、データベース層を根本から作り変えようとする動きの一環として注目される。