概要

フランスの電機大手Schneider Electricは10月5日、ボストンに本社を置く産業用ソフトウェア企業PTCを買収する最終契約を締結したと発表した。買収額はPTCの株式価値で約226億ドル、1株205ドルの全額現金取引で、企業価値ベースでは約237億ドルに達する。205ドルという買収価格は、発表前のPTC終値に対して42.3%、直前30営業日の加重平均株価に対しては46.1%のプレミアムを付けたものだ。発表を受けてPTC株は前日比33%急騰して192.26ドルで取引を終え、一方でSchneider Electric株は7〜10%下落した。買収完了は2027年第3四半期を見込み、PTC株主の承認と各国の規制当局の承認を条件とする。本件はSchneider Electricにとって過去最大の買収となり、2023年に約110億ドルで実施したAVEVA買収を上回る、今年に入って3件目となる10億ドル超のディールだ。

PTCの事業と狙い

PTCはコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアの大手として知られ、製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェアにもAI機能を統合して提供している。2025年9月30日に終了した直近会計年度の売上高は27億ドル、1株当たり利益は6.14ドルだった。Schneider ElectricのCEOであるOlivier Blumは、本買収を「エネルギーと産業インテリジェンスの新時代をリードするという野心における重要な一歩」と位置づけ、「物理世界とデジタル世界をつなぐ、業界で最も完成度の高いソフトウェア・AIパワーハウスと最高品質のポートフォリオを作り上げる」と述べている。製品や資産のライフサイクル全体にわたるデータを連携・文脈化することで、設計・製造から運用・保守までを対象とする次世代の産業AI向けの「デジタルスレッド」を構築する狙いがあるという。業界関係者も、この買収がSchneider Electricの産業用ソフトウェア事業を大幅に強化し、産業データ管理の分野で大規模な事業体を生み出すとともに、AI展開を加速させるものだと指摘している。

背景と今後の展望

この買収は、ボストン地域のテクノロジー企業が相次いで大手に統合されるトレンドの一例でもあり、過去にはDellによるEMCの買収やMicrosoftによるNuanceの買収といった事例があった。Schneider Electricは近年、AVEVA買収を含め産業用ソフトウェア分野への投資を積極化してきたが、今回のPTC買収はその規模を一段と拡大するものとなる。取引完了までには2027年第3四半期までの期間を要する見込みで、PTC株主の承認に加え、複数国の規制当局による審査が必要となる。買収が完了すれば、設計・エンジニアリング・製造・運用・保守・エネルギーシステム・産業データを横断する大規模な産業用ソフトウェア・AIプラットフォームが誕生することになり、競合する産業用ソフトウェア企業や製造業のデジタル化戦略にも影響を与える可能性がある。