概要
ファーウェイとクアルコムは10月5日、AI・5G・コンピューティング・ネットワーク分野の特許ポートフォリオを対象とする複数年の相互ライセンス契約を発表した。契約にはクアルコムによるファーウェイの米国特許(コンピューティング・AI・ネットワーキング関連)の買収も含まれており、ファーウェイにとっては5G技術を含む初めてのクアルコムとのライセンス契約になるという。ファーウェイの知的財産最高責任者であるアラン・ファン氏は、ファーウェイが数十年にわたり続けてきたR&D投資が両社の技術革新に貢献してきたと強調し、クアルコム側もFRAND(公正・合理的かつ非差別的)原則に基づく合意であることを確認した。
今回の契約で特に注目されるのは、ロイヤルティの流れが逆転する構図だ。クアルコムは長年ファーウェイにとってのライセンス料受取側であり続けてきたが、今回はクアルコムがファーウェイ発の半導体製造技術「LogicFolding」に関する特許のライセンスを受ける側になる。ファーウェイが開発した独自技術をクアルコムが取り込む形は、両社の技術的な立場の変化を象徴する出来事と言える。
25年続いた特許紛争の背景
ファーウェイとクアルコムの関係は2001年、ファーウェイが初めてクアルコムにライセンス料を支払ったことに始まる。その後ファーウェイは2011年にモトローラから初のライセンス収入を得るなど、徐々に特許ライセンス事業を拡大してきた。しかし2019年以降、米国の貿易制限によりファーウェイは先進的な半導体やソフトウェアの購入が制限される状況に置かれ、両社の関係は緊張をはらんだものとなっていた。
こうした約25年にわたる経緯を経て、今回の包括的な相互ライセンス契約によって両社間の特許紛争には一区切りが付いた形だ。ファーウェイの特許ライセンス契約の累積総額は、今回の契約完了時点で69億ドルを超える見込みで、同社は2021年以降、知的財産ライセンス事業から継続して正の収益を得ているとしている。今年8月にはHPとのライセンス契約も発表しており、ファーウェイは特許ライセンスを収益源として積極的に拡大させている。
今後の見通し
今回の契約は、米中間の技術摩擦が続く中でも大手テック企業同士が特許を軸にした実務的な協力関係を築けることを示した事例といえる。ファーウェイにとっては、半導体製造分野での独自技術であるLogicFoldingを軸に知的財産の価値を高める戦略が、制裁下でも事業の収益源として機能している点が注目される。クアルコム側にとっても、長年の特許紛争を解消し、AIやコンピューティング領域での技術基盤を広げる契機となりそうだ。契約の具体的な金額やロイヤルティ条件は非開示のままだが、今後両社の特許戦略や業界内の力関係にどのような影響を与えるか、継続的な注目が必要だ。