概要

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は9月30日、法案署名期間の最終日にAI安全規制に関する新法に署名した。Transparency Coalitionの報道では11本、州政府の発表では13本とされ、集計範囲に差があるものの、いずれも労働者保護、ヘルスケア、ディープフェイク対策など多岐にわたる分野を対象としている。これにより同州が今年成立させたAI関連法は合計約30本に達し、全米で最も先進的とされる同州のAI規制の枠組みをさらに強化した。州政府は同時に、州法における「人工知能」の定義を正式に定める大統領令(エグゼクティブオーダー)も発出している。

労働者保護に関する新法

今回署名された法律の中心は職場でのAI利用に対する規制だ。SB 947(McNerney)は雇用主がAIの判断だけに基づいて懲戒処分や解雇を行うことを禁止し、SB 951(Gómez Reyes)は従業員の25%以上に影響が及ぶAIによる大量解雇・配置転換・移転について90日前の通知を義務付ける。さらにAB 1331(Elhawary)は職場監視技術の制限を定め、浴室などへの監視ツール設置を禁じるとともに個人データ収集を規制し、AB 1883(Bryan)は神経データを含む感情状態の追跡を禁止するなど、従業員のプライバシー保護を強化した。ニューサム知事は署名にあたり「AIは労働者や家族を犠牲にするのではなく、機会を拡大すべきだ」と述べ、職場改革の中心に人間を据える方針を強調した。

医療・専門職分野での規制

ヘルスケア領域では、AB 1979(Bonta)がAIツールを用いた患者診療において医師の専門的判断が維持されることを保証し、ヘルスケア向けチャットボットを医療提供者と同様に規制する枠組みを設けた。SB 503(Weber Pierson)は臨床支援システムにおける偏見リスクの低減を義務付けている。法律実務の分野でもSB 574(Umberg)が弁護士による中核的な法律業務のAIへの全面委任を防ぐ内容となっており、専門職の判断をAIに置き換えない姿勢が複数の分野で一貫して示されている。

透明性・コンテンツ規制と今後の展望

コンテンツの真正性に関しては、AB 2713(Wicks)がカリフォルニア州AI透明性法を強化し、デジタル署名の埋め込みなどシステムデータの要件を厳格化した。SB 1000(Becker)は進化するAI技術に対応する開示要件を更新し、SB 1111(Ashby)はディープフェイクによる詐欺的ななりすましから保護する規定を設けた。また教育分野ではAB 2392(Fong)が公立高等教育機関に学生・教職員へのAI研修を義務付けている。カリフォルニア州では2023年に生成AIに関する大統領令(エグゼクティブオーダー)を発出して以降、2026年にも州のAI調達におけるプライバシー保護強化(3月)やAIの安全性・セキュリティに関する第三者監査の加速(9月18日)などの大統領令を相次いで発出してきた経緯があり、今回の新法群はその延長線上にある。全米で最も包括的とされる同州のAI規制枠組みは、他州の立法モデルとして今後も注目されると見られる。