概要
AnthropicのIPO目論見書により、Broadcomが自社製TPU(テンソル処理ユニット)のリース資金として最大420億ドルをAnthropicに融資する契約が明らかになった。融資は転換社債の形式で実行され、将来的にAnthropic株式へ転換される可能性がある。この金額は、Anthropicが結んだ1,252億ドル規模・5年間のTPUリース契約のおよそ3分の1をカバーする。対象となるのはGoogleが設計しBroadcomが協力して製造する次世代TPUチップで、Anthropicは2027年以降、複数ギガワット規模のTPU計算容量へのアクセスを確保する計画だ。Anthropicは2026年4月時点で、制限付き口座にBroadcom向けの資金をすでに預け入れており、状況によっては追加の資金拠出が必要になる可能性もあるという。なお、IPO前の社債売却は予定されていない。
「循環出資」としての懸念
今回の契約が波紋を呼んでいるのは、チップの供給元と融資の貸し手を同一企業が兼ねる構造にある。AnthropicのIPO目論見書自体も、Broadcomが「ハードウェア供給業者かつ融資パートナー」という二重の役割を担うことで、計算資源へのアクセスや価格設定に影響しうる「潜在的な利益相反」が生じると明記している。さらにAnthropicは同時並行でAmazonやMicrosoftからも資金調達しており、その資金で両社のクラウドサービスを購入するという、いわゆる循環出資の構図がAI業界全体に広がりつつある。Broadcomの予想では、Anthropicは2027年までに同社最大の計算顧客になる見通しで、機器のリースと資金調達の両面で依存関係が一段と深まることになる。
業界への波及と専門家の見方
この手法はNvidiaがこれまで自社チップの販売促進のためにバランスシートを活用してきた戦略に倣うもので、NvidiaやAMDも同様に、OpenAIやAnthropicといった顧客に資金を提供し、その資金で自社チップを購入させる仕組みを採用してきた。Seaport Researchのアナリストは「Nvidiaが大規模な資産を投入しており、Broadcomも対抗措置を取らざるを得ない」と述べ、競争上の必然性を指摘する。一方でRothschild & Coのマネージング・パートナーは、「AI構築の多くが、2社による十分な収益生成能力に依存する集中的な賭けになっている」と警鐘を鳴らす。専門家の間では、こうした連鎖的な相互依存関係の下でもし一社が経営不振に陥れば、AI業界だけでなくそれに連動するグローバルな株式市場全体に深刻な波及効果が及びかねないとの懸念が強まっている。