概要

Teslaは9月、電動大型トラック「Semi」の量産体制への移行と顧客への本格納車を、ネバダ州リノ近郊のギガファクトリーに隣接する新工場で開始した。2017年に発表されて以来、当初は2019年の生産開始を目指していたが、パンデミックや半導体不足、部品供給網の混乱などが重なり、実に7年遅れでの実現となる。新工場は延べ180万平方フィートの規模を持ち、将来的には週約1000台、年間5万台の生産能力を見込む。地元では約3000人の雇用創出も期待されている。すでにPepsiCo、DHL、US Foodsといった既存の試験運用顧客に加え、ZET SCALEアライアンスから2500台、Einrideから500台という大口受注も獲得しており、トラック輸送業界の電動化に向けた節目として注目されている。

技術的な詳細と価格

Semiにはロングレンジ版とスタンダードレンジ版の2種類があり、最大積載量82,000ポンドの状態でロングレンジ版は約500マイル、スタンダードレンジ版は325マイルの航続距離を実現する。電費は1マイルあたり1.7kWh程度とされる。バッテリーセルは当初の2170セルから4680セルへと刷新され、軽量化と航続距離維持を両立させたほか、初期プロトタイプ比で約450kg(1000ポンド)の軽量化も達成した。駆動軸には炭素繊維に代わりスチール製ケージ付きロータを採用し、電動パワーステアリングや熱管理システム「Megamanifold」など、量産化に向けた設計変更も加えられている。またドライブアクスルの潤滑油を当初の3種類から1種類に統一するなど、部品点数の削減を通じたコスト低減も図られた。価格は補助金適用前でおおむね26万〜30万ドルとされ、競合の電動大型トラックの平均価格と比べて約14万5000ドル安いとされる。充電については自社のメガワット級充電設備「Megacharger」を展開中で、実演では充電残量3%から60%まで約30分で回復できたという。運用コストの面では、電気代が1マイルあたり0.20〜0.30ドルとされ、ディーゼル燃料の約0.80ドルを大きく下回るとしている。

発表までの経緯と関係者のコメント

Semiプログラムを率いるDan Priestley氏は、大型トラックは走行車両全体のわずか1%にすぎないものの、輸送部門全体の排出量の16%を占めると指摘し、電動化の意義を強調した。同氏は当初計画していたポップアップ式の窓を通常のロールダウン窓に設計変更した経緯について「我々は明らかに間違っていた」と率直に認めており、また、駆動軸の潤滑油を当初の3種類から1種類に統一できた経緯に触れ「時折、カスタム化をやりすぎることがある」と述べ、量産化における設計の複雑さと現実的な妥協の必要性に言及した。500マイルという航続距離目標は発表当初、Bill Gates氏をはじめとする有識者から非現実的だと批判されていたが、今回の量産開始によってその実現可能性が事実上証明された形となる。

今後の見通し

Tesla は今後、部分的な自動運転機能を「近い将来」追加する計画を示しており、まずは自社の物流オペレーションへの導入を進めるとしている。また、より短い航続距離に特化した廉価版の展開も検討されているという。もっとも、Electrekが指摘するように、今回の量産開始が真に成功と言えるかどうかは、2027年に5000台以上を実際に納車できるかどうか、そして現状カリフォルニア州、テキサス州、東海岸に集中しているMegacharger網を全国規模に拡大できるかどうかにかかっている。長年の遅延を経てようやく軌道に乗ったSemiが、大型トラック輸送の脱炭素化を実際に牽引できるかが今後の焦点となる。