Row Zero買収の狙い
Databricksは、クラウドベースの表計算スタートアップRow Zeroを買収したと発表した。買収金額は非公開。Row ZeroはAmazon Web ServicesとTableauの元エンジニアが創業した企業で、100万行を超えるライブデータをブラウザ上で直接扱える点を特徴とするスプレッドシート製品を開発してきた。2025年5月には評価額4000万ドルで1000万ドルの資金調達を実施していた。買収の発端は、Databricks社内の財務チームがRow Zeroを日常的に愛用しており、自社のAIエージェント「Genie」との組み合わせに可能性を見出したことにあるという。GenieはSQLを書かずに自然言語のプロンプトだけで複雑なデータ分析を実行できるツールで、利益率分析や営業パイプラインの状況確認といった業務での活用が想定されている。買収後は、企業データをDatabricksのクラウドストレージ上に安全に保持したまま、ビジネスアナリストが使い慣れたスプレッドシート形式のインターフェースでAIと人間が協働できるようになるとしている。
「BI・エージェント・スプレッドシート」の融合構想
DatabricksのCEO Ali Ghodsiは自身のX(旧Twitter)への投稿で、「スプレッドシートはビジネスアナリストが愛するインターフェースだ。BI(ビジネスインテリジェンス)、AIエージェント、スプレッドシートを組み合わせることには合理性がある」と述べ、今回の買収の位置づけを説明した。さらにTechCrunchの取材に対しては「将来、このような買収をさらに多く実施していく予定だ」と語っており、単発の案件にとどまらず、既存製品を補完する小規模なスタートアップの取り込みを継続的な戦略として位置づけていることを明らかにした。
加速するM&A戦略と背景にある資金力
Row Zeroの買収は、Databricksが2026年に入ってから進めてきた一連の買収の最新事例にあたる。同社は3月にAI評価・強化学習を手がけるQuotient AIとノートブック関連のSiftD.aiを、6月にはセキュリティ運用センター(SOC)を展開するPantherを、8月には軽量Postgres実装PGliteを開発するElectricを、それぞれ買収してきた。矢継ぎ早の買収の背景には、8月に完了した50億ドル規模の資金調達によって評価額が1900億ドルに達し、年間経常収益(ARR)も70億ドル規模まで拡大しているという財務的な体力がある。データ基盤企業として成長してきたDatabricksが、BIツールやセキュリティ、開発者向け基盤といった隣接領域を次々と自社エコシステムに取り込むことで、AIエージェントを中核に据えたプラットフォーム全体の価値を高めようとする姿勢が鮮明になっている。