概要

暗号資産取引所のBitgetは、9月24日18時31分(UTC)にセキュリティシステムが複数のウォレットからの不審な送金を検知したと発表した。攻撃者はウォレット基盤内の重要なバックエンドシステムを侵害し、取引データを偽装して承認プロセスを不正にトリガーすることで資金を移動させたという。被害総額は3億5160万ドル相当に上り、対象はEthereum、XRP Ledger、Arbitrum、Avalanche、Optimism、BSC、Baseの各チェーン上のETH、XRP、BNB、AVAX、USDT、USDCなど複数の資産に及んだ。中でもXRPは単一チェーンでの損失額が最大だったとされる。

被害範囲と初動対応

流出したのはホットウォレットおよびウォームウォレットに限られ、コールドウォレットとプラットフォーム資産は無事だったとBitgetは説明している。また、自己管理型の別インフラで運用されているBitget Walletも今回の侵害の影響を受けていない。同社は安全確認のため出金を一時停止する一方、顧客の口座残高は正確に維持されており、取引と入金は通常通り継続していると強調した。被害額の補填については、4億6400万ドル規模のユーザー保護基金を発動して全額をカバーする方針を示している。Bitgetはさらに影響を受けた各ブロックチェーン財団に連絡し、一部の財団はハッカーのウォレットアドレスの凍結を確認したという。

北朝鮮の関与を示す根拠

BitgetのCEOであるGracy Chen氏は、IPアドレスの挙動パターンとオンチェーン分析の結果が「北朝鮮系ハッカー組織の既知の手口と極めて一致している」と述べた。Chainalysisの過去の調査では、北朝鮮の国家的関与が疑われるハッカー集団が2024年だけで47件の暗号資産窃盗により13億4000万ドルを盗み出したと報告されており、今回の攻撃パターンもこうした一連の手口と符合するとみられている。調査にはMandiant(Google傘下)とSlowMistが加わっており、法執行機関やオンチェーン分析を専門とする機関とも連携が進められている。

今後の見通し

Bitgetは、これ以上の不正送金は発生し得ない状態にあるとしている一方、侵入の具体的な手法については引き続き調査が進められているとしている。安全性の確認が取れ次第、出金機能を順次再開する計画だ。北朝鮮系ハッカー集団による大規模な暗号資産取引所への攻撃は近年繰り返し発生しており、今回の事案もその延長線上にあるとみられる。ホットウォレットの承認プロセスそのものを標的にした手口である点から、取引所側のバックエンド認証基盤の堅牢化が業界全体の課題として改めて浮き彫りになった形だ。