概要
Anthropicは9月24日から25日にかけて、Akamai Technologiesとの間で7年間・116億ドル規模のクラウドインフラ契約を結んだと発表した。今年5月時点で報じられていた契約規模は18億ドルとされており、わずか数か月で6倍以上に膨れ上がった格好だ。契約の特徴は、AI企業のインフラ調達では一般的なGPUではなく、Akamai Cloudが持つ世界数千拠点のポイント・オブ・プレゼンスを活用した分散型のCPU(汎用プロセッサ)インフラに焦点を当てている点にある。AIエージェントが処理するタスクが多様化する中で、推論以外の汎用コンピューティング需要が増していることが背景にあるとみられる。用途の詳細は両社とも明らかにしていない。契約は条件付きで、Akamai側が配信・可用性の要件を満たすことが前提となっており、一定の条件下ではいずれの当事者も解約できる。発表を受けてAkamai株は時間外取引で一時17〜22%上昇し、同社史上最大の契約となった。
新株予約権を組み込んだ契約構造
今回の契約で目を引くのが、AkamaiがAnthropicに付与する新株予約権(ワラント)だ。ワラントは非議決権の転換優先株式で、行使価格は1株111.33ドル、最大でAkamaiの発行済み普通株式の5%(約770万株)に相当する。まず116億ドルの契約締結時点で約2%分がベストし、その後はAnthropicの追加支出に連動して段階的にベストが進む仕組みで、契約には最大90億ドルの拡張条項が盛り込まれている。この拡張が実行された場合、30億ドルごとに約1%ずつワラントが積み増され、拡張分と合わせた契約総額は最大約200億ドルに達する可能性がある。通常、AI企業のインフラ調達では調達先企業(Amazon、Google、Microsoft、AMDなど)がAnthropicに出資し、代わりにチップやクラウド容量を提供する形が一般的だが、今回のAkamaiとの契約はその逆で、供給企業であるAkamai側がAnthropicに新株予約権を付与するという異例の構造となっている。
Akamaiの収益見通しと株式市場の反応
Akamaiは今回の契約に伴い、総額約55億ドルの設備投資を見込んでいるほか、サプライチェーン部材やメモリの先行調達のため2026年中に追加で17億ドルの資本支出を計画しているとしている。一方で、この契約による収益貢献は2026年通期のガイダンスには影響しないとしており、実際の収益計上は2027年後半以降に1億5000万〜3億ドル規模で始まり、2028年末までに年間換算で約17億ドルのペースに達する見通しだ。Akamaiのトム・レイトンCEOは「Anthropicは AI革命を推進しており、大規模なAIインフラの構築・運用にあたってAkamaiの能力を選んでくれたことを大変嬉しく思う」と述べており、大規模言語モデル企業向けの新たな収益源としてAkamai Cloudの立ち位置を強調している。
Anthropicの膨張する調達額と財務リスク
今回の契約は、Anthropicがこの11か月間で積み上げてきたコンピュート調達契約の総額を5170億ドル超に押し上げた。先月にはAI向けクラウド企業Nscaleとの間で450億ドル規模の契約も締結しており、Anthropicは主要クラウド事業者に加え、幅広いパートナーとの間で巨額のインフラ調達を続けている。こうした急拡大するコミットメントについて、Dario Amodei CEO自身が「将来の収益見通しがわずかでも外れれば、会社が破産する可能性がある」との趣旨の警告を発しており、需要予測に基づいて先行投資を積み上げるAI業界特有のリスクを認めている。OpenAIのSam Altman CEOも同様に、コンピュートインフラへの支出が持続可能な水準を超えつつあることに懸念を示しており、AI企業各社が競って結ぶ巨大インフラ契約が業界全体の財務リスクとして意識され始めている状況がうかがえる。