概要
NVIDIAが出資する英ロンドン発のAIクラウド企業Nscaleが、ティッカー「NSCL」でニューヨーク証券取引所への上場を申請した。目標とする評価額は約300億ドルで、2026年3月時点の146億ドルから倍増する水準となる。主幹事はGoldman Sachs、JPMorgan、Morgan Stanleyの3社が務める。申請書類によれば、2026年上半期の売上高は前年同期の1,040万ドルから1,252%増の1億4,060万ドルへ急拡大した一方、純損失も前年同期の3億6,890万ドルから10億2,010万ドルへと大幅に膨らんでいる。同社は再登記を経て「Nscale plc」として上場する見込みで、CEOはJosh Payneが務める。
事業モデルと主要契約
Nscaleは発電、モジュール式液冷データセンター、GPUオーケストレーション、クラウドソフトウェアまでを自社で垂直統合するAIハイパースケーラーで、長期のテイク・オア・ペイ契約によって収益の安定性を確保するビジネスモデルを採る。世界14リージョンで事業を展開し、電力パイプラインは10ギガワット以上に達する。中核資産の一つが、2026年3月にAIPCorpの買収を通じて獲得した米ウェストバージニア州の「Monarch Compute Campus」で、同キャンパスはグロス発電容量で8ギガワット超まで拡張可能な計画を持つ。契約実績も急拡大しており、2026年8月末時点の契約総額(TCV)は1,034億ドルに達し、2025年末時点の380億ドルから大幅に積み上がった。主要顧客としては、同キャンパスでのデータセンターサービスに関して450億ドル規模の契約を結んだAnthropicと、ヒューマノイドロボティクス向けに複数年の展開契約を結んだFigure AIが挙げられており、最大顧客1社だけで上半期売上高の52%を占める。今後はMicrosoftとAnthropicが主要顧客としてさらに拡大する見通しも示されている。
財務基盤と資金調達
2026年8月末時点でNscaleの総資産は172.5億ドル、総負債は123.6億ドル、株主資本は47.9億ドルとなっている。資金調達面では、NVIDIAからの10億ドル出資を含む総額31億ドル規模の転換ローン(convertible bonds)パッケージを組成しており、急拡大するデータセンターや電力インフラへの投資を支えている。急速な事業拡大に伴う損失拡大と資本集約的な事業モデルは、AIインフラ企業に共通する構図であり、今回の上場でどこまで市場の評価を得られるかが注目される。
市場環境と今後の見通し
アナリストのMatt Kennedy氏は今回の案件について「AIインフラを巡る環境は取引を成立させるには十分だが、数カ月前のような熱狂とはまるで違う」と指摘し、AI関連銘柄への投資家の姿勢が以前より慎重になっていることを示唆した。株式の発行株数や想定価格帯といった詳細は、今後提出される追加のSEC申請書類で明らかになる見通しだ。AIインフラ投資の持続可能性を測る試金石として市場の注目を集めそうだ。