概要

ウォルト・ディズニー・カンパニーは、創設以来初めてとなる最高技術責任者(CTO)職を新設し、AI対話プラットフォームCharacter.AIの前CEOであるカランディープ・アナンド氏を起用したと発表した。アナンド氏はシニア・エグゼクティブ・バイスプレジデント兼CTOとして、2026年10月2日付でCEOのジョシュ・ダマロ氏に直属する形で就任する。担当領域はエンタープライズ技術、グローバルインフラ、データ・AIプラットフォーム、プロダクト・エンジニアリングと幅広く、Disney+のストリーミング事業やテーマパーク運営、デジタルメディアなど各セグメントに分散していた技術チームを横断的に統括する狙いがあるとみられる。ダマロ氏は今回の起用について、「インフラ、コンシューマー向け技術、AIにまたがる稀有な経験をもたらし、経営陣の重要な補強となる」とコメントしている。

アナンド氏の経歴

アナンド氏はインドのハイデラバードにあるIIITHでコンピュータサイエンスの学士号を取得後、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で経営学の資格を取得した。マイクロソフトに15年間在籍し、Azureクラウド基盤の構築に携わったのを皮切りに、2015年から2021年まではMeta(旧Facebook)で広告・ビジネス製品担当バイスプレジデントとしてInstagram、WhatsApp、Messengerなどの製品群を統括した。その後、フィンテック企業Brexでプレジデント兼最高製品責任者を務め、2025年5月にCharacter.AIのCEOに就任するまでは同社の取締役顧問を務めていた。20年以上にわたりコンシューマー向けサービスとインフラの両面で経営経験を積んできた人物であり、ディズニーが技術戦略を統括するリーダーとして白羽の矢を立てた背景がうかがえる。

ディズニーとCharacter.AIの因縁

今回の起用で注目されているのが、ディズニーとCharacter.AIの過去の対立関係だ。TechCrunchの報道によれば、ディズニーは2025年9月、Character.AIに対して同社の著作権キャラクターを無断でホストしているとして警告状を送付した経緯がある。自社が著作権侵害の疑いをかけた企業のトップを、1年後には自社の技術戦略を統括する要職に迎え入れる形となり、AI企業とコンテンツホルダーの緊張関係が人材の還流によって思わぬ形で収束した事例ともいえる。

背景と展望

今回の人事は、2026年3月にボブ・アイガー前CEOから経営を引き継いだダマロ氏が、技術とAIへの積極投資を打ち出す一連の経営陣刷新の一環と位置づけられる。CTO職の新設自体、ディズニーがストリーミング、テーマパーク、エンターテインメント事業を横断する技術基盤の統合と、生成AIの活用を経営の最優先課題に据えたことを示すシグナルといえる。アナンド氏自身も就任にあたり、「技術と創造性を融合させ、世界中のファンに物語やキャラクターを新しく革新的な方法で届けたい」と抱負を述べており、今後Disney+のパーソナライゼーションやテーマパークでのAI活用など、具体的な施策にどう反映されるかが注目される。