概要

オランダ・アイントホーフェン拠点のAI推論チップ新興企業Euclydが、サムスン電子が共同リードするシリーズAラウンドで2億ユーロ(約2億3,100万ドル)超を調達した。ラウンドにはSomerset Capital Partners、Innovation Industries、EQT傘下のScaleup Europe Fundのほか、EIFO、imec.xpand、Brabant Development Agency、Quadriも参加している。2024年設立のEuclydは、GPUとは異なる独自アーキテクチャの推論特化型チップとサーバーラックシステムを開発しており、AI推論需要が急拡大するなかでNvidia一強の市場構造に挑む動きとして注目されている。

Euclydの技術と製品ロードマップ

Euclydの共同創業者は5人で、哲学とコンピュータエンジニアリングの博士号を持ち、かつてASMLの技術戦略家を務めたBernardo Kastrup CEOのほか、Atul Sinha、Gerard Egelmeers、Ingolf Held、Harm Peterが名を連ねる。同社は16,384基のカスタムプロセッサを搭載する推論チップ「CRAFTWERK」と、32チップを統合したシステム「CRAFTWERK Station」を開発中で、2028年までに1エクサフロップの演算性能達成を目標に掲げる。同社はNvidiaの最新「Vera Rubin」チップと比較して最大100倍の電力効率を実現すると主張しているが、これは商用規模での実測結果ではなく、現時点では自社試算にとどまる点には留意が必要だ。製品はセキュアな自社ホスト型AI推論向けのチップおよびサーバーラックとして販売するほか、独自プロセッサを開発する企業向けに技術ライセンス供与も計画している。出荷開始目標は2028年で、すでに4社の見込み顧客と交渉中、2027年には2社への供給開始を目指すとしている。

サムスンの狙いと市場背景

サムスンの半導体イノベーションセンター責任者Dede Goldschmidt氏が投資を主導した。同氏は「AIの次段階は、モデル革新だけでなくインフラの効率性とスケーラビリティによって定義される」と述べている。Kastrup CEOも、サムスンの支援は資金にとどまらないと強調し、「世界有数のメモリ製造企業として、エンジニアリング、システム知識、サプライチェーンの専門知識を提供できる」と語った。サムスンにとっては半導体製造面での協業を視野に入れた出資とみられ、同時期にはフランスのMistral AIにも30億ユーロを投資しており、カスタムAIシステム開発における協業を広げている。

競合環境と展望

Nvidiaは現在、AIトレーニング向けチップ需要の約80%を握るとされるが、推論分野ではより多くの企業が競争に参入しつつある。Google、Amazon、Meta、OpenAIといった大手プラットフォーマーも、コスト削減とNvidia依存の低減を狙い自社チップ開発を進めており、Euclydは非GPUアーキテクチャという切り口でこの潮流に加わる格好だ。背景には、データセンターの運用コストと電力消費の削減が業界共通の課題となっている事情がある。グローバルAIチップ市場は2026年時点の約1,000億ドルから2030年には4,000億ドル超へ拡大すると見込まれており、Euclydが掲げる2028年の量産開始と2030年までに数千社の企業顧客獲得という目標が実現するかが、今後の焦点となる。