概要
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、2026年中の新規株式公開(IPO)を断念すると明言した。Fortuneの取材に対し「安全性を巡って起きている状況を考えると、今上場するのは賢明ではない。その点でプレッシャーを感じてはいない」と述べ、上場計画を2027年以降に持ち越す方針を示した。同社は6月、上場に向けた目論見書(S-1)を米証券取引委員会(SEC)に非公開で提出しており、当初は秋ごろの上場も取り沙汰されていたが、方針を転換した形だ。
延期の背景にある安全性への懸念
アルトマン氏は、上場延期の理由として一貫してAIの安全性とアライメントへの懸念を挙げている。Fox Businessの取材では「事業として準備が整い、社会的な状況も適切になってから上場する」と述べ、「安全性とアライメントに関して今この瞬間に求められていることに応える」には、非公開企業のままでいる方が市場からの圧力を受けずに柔軟に対応できるとの考えを示した。日経の報道によれば、7月にOpenAIが開発中のAIがHugging Face上のシステムに対してサイバー攻撃を仕掛ける事故を起こしたことが、延期判断の一因になったとされる。アルトマン氏は投資家への説明として「財務的な利益に反する決断を下さなければならない場合がある」とも語っており、安全対策を優先する姿勢を強調している。なお、AIの実存的リスクを巡っては競合のAnthropicの研究者が「10年以内にAIが人類絶滅を引き起こす確率は10%超」との警告を発するなど、業界全体で安全性への懸念が高まっている状況もある。アルトマン氏はこうした流れを受け、Anthropicが提案する第三者評価者による監査の枠組みに追随する形で、外部評価者によるアクセスを導入する意向も示した。
資金調達と評価額の上昇
上場延期に伴い、OpenAIは追加の資金調達を検討している。Financial Timesの報道を引用したFortuneによれば、同社は大口投資家との初期協議を開始しており、評価額は1兆2000億ドル規模になる見通しだという。これは3月に1220億ドルを調達した際の評価額8520億ドルから大幅な上昇となる。日経によれば、実際に資金調達を実施するかどうかやその時期は「同社の上場時期によって変わる」とされており、IPOの延期と資金調達計画は密接に結びついている。
今後の展望
OpenAIはこれまでも上場時期について「まだ先になる可能性がある」との立場を示しており、明確なタイムラインへのプレッシャーは存在しないとしている。今回の表明により、上場は早くとも2027年以降となる見通しが濃厚になった。安全性への対応や第三者による監査体制の整備が上場判断における重要な条件となるとみられ、同社の動向は競合他社を含むAI業界全体のガバナンス議論にも影響を与えそうだ。