概要
AWSは9月17日、2026年3月にイラン革命防衛隊のドローン攻撃を受けたUAE(me-central-1)とバーレーン(me-south-1)のデータセンターについて、一部データが恒久的に復旧不可能になったと発表した。クラウド基盤が物理的な軍事攻撃によって永久的なデータ損失に至った前例のない事態であり、攻撃発生から約6カ月を経ての公表となる。米国とイスラエルによる軍事作戦への報復として実施された攻撃で、革命防衛隊はAmazonが米国に拠点を置く企業であり、当該施設が敵対勢力の軍事・諜報活動を支援していると判断し攻撃対象に選定したとされる。
被害の詳細
UAEリージョンでは3つのアベイラビリティーゾーンのうち「mec1-az2」が施設への直接攻撃を受け、構造的損傷や電力供給の途絶に加え、消火活動に伴う水損も発生し、当該ゾーンのデータは復旧不可能と判定された。残る「mec1-az1」「mec1-az3」は復旧作業が続いているが、再開の見通しは立っていない。単一ゾーンのみにリソースを配置していた顧客のデータが失われた一方、複数ゾーンに分散させていた顧客は被害を免れたとみられる。バーレーンのリージョンはさらに深刻で、複数のアベイラビリティーゾーンにまたがる損害が冗長化設計の許容範囲を超え、リージョン全体がオフラインとなった。加えて2026年4月には2つ目のアベイラビリティーゾーンを破壊する追加攻撃も発生していた。
AWSの対応と顧客への影響
AWSは当該中東リージョンの課金を停止するとともに、顧客に対して別リージョンへのデータ移行を強く促してきた。同社によれば、大半の顧客は永久的なデータ損失が確定する前にバックアップの活用や代替手段の実装によって既に移行を済ませていたという。今後の更新について、UAEは数カ月以内、バーレーンは2027年初頭を目処に続報を出すとAWSは表明している。
今後の見通し
今回の事態は、クラウドサービスの可用性設計が前提としてきた「同一リージョン内の複数アベイラビリティーゾーンによる冗長化」が、物理的な軍事攻撃という想定外の脅威の前では十分に機能しない場合があることを示した。中東地域では緊張の高まりが続いており、AWSをはじめとするクラウド事業者のインフラへのさらなる攻撃リスクも指摘されている。企業がクラウド基盤の地理的分散や災害復旧計画を見直す契機として、業界全体への影響が注視される。