概要
米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、OpenAIがスマートフォン向けカメラ技術スタートアップGlass Imagingを3億ドル(約460億円)超で買収した。両社とも取引を公式には認めていないが、この評価額はGlass Imagingが2025年時点で得ていた約1億ドルの企業価値から3倍以上に跳ね上がったことになる。Glass Imagingは2019年にカリフォルニア州ロスアルトスで設立され、これまでGV(Google Ventures)やInsight Partnersなどから合計約2,900万〜3,000万ドルを調達しており、2025年5月にはInsight Venture Managementが主導する2,000万ドルのシリーズAも実施していた。
Glass Imagingの技術と実績
Glass Imagingを率いるのは、共同創業者でCEOのジブ・アタール氏とCTOのトム・ビショップ氏で、いずれも元Appleのエンジニアであり、iPhoneのポートレートモードの計算写真技術を開発したチームを率いていた経歴を持つ。同社が開発した「GlassAI」(Gigazineでは「GLASS AI」と表記、TechCrunchでは具体的な製品名は明示されていない)は、写真を撮影した後にAIで加工する従来型のアプローチとは異なり、撮影時点でニューラルネットワークを用いて画質そのものを向上させる点が特徴だ。具体的には、デモザイク処理、ノイズ低減、シャープ化、フレーム合成といった従来は個別の段階として扱われていた処理を単一のパスで行い、レンズの光学特性そのものをモデル化する。個々のカメラモジュールごとにレンズとセンサーの組み合わせに合わせてカスタムのニューラルネットワークを構築・調整する仕組みで、ピクセルサイズが0.75マイクロメートルから0.35マイクロメートルへと縮小する中でも、標準的な解像度指標を50%以上引き上げたとする研究結果もあるという。この技術はすでに商用化されており、中国Honor Device Co.が2026年に投入した200メガピクセルのメインカメラを搭載する「HONOR 600」シリーズに採用されている。
OpenAIのハードウェア戦略における位置付け
今回の買収は、OpenAIが進める一連のハードウェア事業拡大の一環と見られている。OpenAIは2025年5月、著名デザイナーのジョニー・アイブ氏が率いるio Productsを65億ドルで買収しており、スマートフォンやイヤフォン、画面を持たないAIコンパニオンデバイスなど、複数の消費者向けデバイスの開発を進めていると報じられている。中でも価格帯300ドル程度のスクリーンレススピーカーの開発も取り沙汰されており、Glass Imagingのカメラ画像処理技術は、こうした自社製ハードウェアの完成度を高める要素になるとみられる。OpenAIは買収に関するコメント依頼に応じておらず、正式な発表はまだ行われていないが、AI企業が半導体設計だけでなくカメラ技術のような専門領域のスタートアップまで取り込みながら、垂直統合型のハードウェア開発を加速させている動きとして注目される。