概要

Cohereは9月10日、機械翻訳に特化したオープンウェイトモデル「North Small Translate」を発表した。218Bパラメータ(アクティブパラメータは25B)のMixture-of-Experts(MoE)構成を採用し、50以上の言語に対応する。最大の特徴は性能で、WMT26ベンチマークにおいて全言語平均で83.6のスコアを記録し、DeepL NextGen(81.37)やGoogle翻訳(68.20)、Gemma 4 31B(79.46)を上回った。エージェント的な推論を行うバリアントではさらに84.36まで伸びるという。地域別に見てもGemma 4 31Bをヨーロッパ圏(82.2対73.9)で上回るほか、中東・北アフリカや南アジアといった非ヨーロッパ圏ではDeepL NextGenを上回る結果を示しており、主要な競合モデル・サービスに対して総合的な優位性を主張している。

速度とコスト、長文翻訳への強み

性能面だけでなく、実運用に直結する指標でも優位性が強調されている。スループットは低同時実行時で1秒あたり112トークンを出力し、比較対象モデルの81トークンに対して30〜38%高速だという。コスト面では1タスクあたり0.000676ドルとされ、Gemini 3.1 Proの0.038928ドルと比較して5,762%安価という試算が示されている。さらに長文翻訳の評価では48.9のスコアを記録し、Google翻訳の21.3を2倍以上上回った。長いコンテキストを扱う実務上の翻訳需要——ドキュメントや契約書、記事全体の翻訳など——において、文脈の一貫性を保ったまま高速・低コストで処理できる点を強みとして打ち出している。技術仕様としては、最大16kトークンの入出力コンテキスト長に対応し、最小動作要件としてB200 GPU 1基(W4A4量子化)、あるいはH100 GPU 2基(同)を挙げている。

ライセンスと提供形態

North Small Translateのウェイトは Hugging Face から入手可能で、実装ガイドもドキュメントとして公開されている。ライセンスはCC BY-NC 4.0で、研究および非商用利用は無償だが、商用利用については RWS社の Language Weaver プラットフォーム経由でのライセンス提供となる。オープンウェイトモデルとして性能を検証可能にしつつ、商用展開はパートナー企業を通じるという二段構えの提供形態を取っている点は、近年の高性能モデルのリリース戦略として一般的になりつつある形と言える。DeepLやGoogle翻訳といった既存の商用翻訳サービスに対し、専用モデルとオープンな検証可能性を武器にどこまで食い込めるかが今後の焦点になりそうだ。