概要
オランダASMLは、TSMCおよびSamsungが次世代露光装置「High-NA EUV(高開口数極端紫外線露光装置)」の量産導入を確約したと明らかにした。Samsungは2028年から、TSMCは2030年から量産ラインへの導入を計画しており、Intelはすでに生産用機として導入を済ませている。急増するAI向け先端半導体の需要が、1台あたり約4億ドルという高額な新型装置への投資判断を後押しした形だ。
技術的な詳細ーマスク大型化とスループット向上
今回の合意の柱となるのが、フォトマスクの規格を現行の6インチから12インチへ移行する計画だ。ASML、TSMC、Samsung、Intelの4社はこの12インチマスクへの切り替えで足並みをそろえており、マスクの大型化によって一度の露光で処理できる面積が広がることで、生産能力(スループット)を最大40%引き上げられる見通しという。TSMCは2031年までに12インチマスクの試験ラインを構築する計画で、業界全体としては2033年までの本格採用を目指す。High-NA EUV自体は既存のEUV露光装置よりもさらに微細な回路パターンの形成を可能にする一方、微細化が進むほど製造コストやエネルギー消費が増大するという課題も抱えており、生産性向上と設計プロセスの簡素化がこの装置導入の狙いとなる。
背景と業界への影響
EUV露光装置市場で事実上の独占的地位にあるASMLにとって、TSMCとSamsungという二大ファウンドリからの確約は、High-NA EUVの本格普及に向けた大きな弾みとなる。ASMLの最高技術責任者はこの合意を「生産性における大きな一歩」と評価した。TSMCの魏哲家(C.C. Wei)会長兼CEOも、技術的な障壁が経済的な障壁に転じる前に克服する業界協業の重要性を強調しており、AI半導体をめぐる需要急増が装置ベンダーとファウンドリ双方の投資判断を加速させている構図が浮かぶ。SK HynixやMicronといった他のメモリーメーカーも、AI向けGPUの生産を支える重要なサプライヤーとして位置づけられている。