Rustが社内最高位言語に
マイクロソフトは、Rustを社内開発における「Tier 1」言語として正式に認定したことを明らかにした。これによりRustは、C++、C#、TypeScriptと並ぶマイクロソフト社内で最も手厚くサポートされる言語の一つという地位を獲得した。同社主任エンジニアのVictor Ciura氏はRustFoundation公式サイトへの寄稿およびRustConf 2026での発表で、Tier 1認定が「安全なツールチェーン、ビルド・開発環境、品質ワークフロー、プラットフォーム統合、SDL(Security Development Lifecycle)要件への準拠」といった基準を満たしたことを意味すると説明している。
メモリ安全性への危機感が背景に
今回の格上げの最大の動機は、Windowsにおけるメモリ安全性関連の脆弱性対策にある。Windowsで報告される脆弱性のうち約70%がメモリ関連の問題であるとされ、この構造的な課題への対応が急務となっていた。Azure最高技術責任者のMark Russinovich氏は「C/C++をいかに改善しようとも、Rustが最初から備えている安全性の水準には到達できない」と述べ、ネイティブコード戦略の中でRustを重視する姿勢を明確にしている。マイクロソフトはRustプロジェクトへの投資を数百万ドル規模で継続してきており、今回の認定はその延長線上にある取り組みだ。
独自バックエンドrustc_codegen_utcでC++との相互運用を確保
技術面での最大の投資は、Rustコンパイラのバックエンドを代替する独自ツール「rustc_codegen_utc」の開発だ。これはRustのコード生成をマイクロソフトのMSVCバックエンド(UTC)に接続するもので、WindowsのC++ツールエコシステムとの高い互換性を保ちながら、バイナリ強化やセキュリティ機能、リンク後のコンプライアンスチェック、ホットパッチ対応、クロスランゲージでのインライン化・最適化、デバッグやクラッシュダンプ解析までを一貫してサポートする。Rust 1.90以降でこの仕組みは自己ホスト化されており、2026年初頭から本番環境での運用が始まっている。一方で、Rustコードと既存のC++が扱うメモリ領域との間でポインタ管理をどう整合させるかは依然として課題であり、「unsafe」領域での相互運用性の扱いが引き続き検討されている。
100以上のプロジェクトで採用、M365やCopilotにも拡大
この取り組みはすでに実運用段階に入っており、OutlookやWord、Excel、OneDriveを含む100以上の社内プロジェクトで採用され、その数は毎週増え続けているという。RustはM365やCopilotのテクノロジースタックにも組み込まれつつある。統一されたコード生成基盤の整備により、RustはマイクロソフトのWindowsネイティブなエンジニアリングエコシステムに直接参加できるようになり、今後はRustとC++を組み合わせた複合的なネイティブシステムの構築がさらに容易になる見通しだ。マイクロソフトはRustへの投資とハイブリッドな開発環境の強化を継続する方針を示している。