概要
Sakana AIは、単一の巨大な基盤モデルに依存する従来のアプローチとは異なる新型モデル「Fugu Max」と「Fugu Ultra v2」を発表した。両モデルの正体は単一モデルではなく、複数の既存AIモデルを1つのAPIの背後でルーティングする「学習済みオーケストレータ」である。タスクの内容に応じて最適なモデルへ振り分け、必要に応じて再帰的な自己呼び出しを行うことで、コストを抑えながら高い推論性能を実現するという。
アーキテクチャの仕組み
Fugu系のオーケストレーション設計は、「ケーパビリティ」と「コスト」という2軸でモデル選択を最適化する点が核心にある。技術報告書によれば、大規模ファインチューニング、進化アルゴリズム、強化学習を組み合わせてこの振り分け機構を訓練しているという。理論的な基盤としてICLR 2026採択の2本の論文が挙げられており、複数ターンにわたり軽量な進化型コーディネーターがタスク役割を割り当てる「TRINITY」と、自然言語による調整戦略を強化学習で発見する「The Conductor」がベースになっている。
Fugu Maxは、NVIDIAのNemotronファミリーを含む拡大されたオープンウェイト・特殊化モデル群のプールを活用する。一方Fugu Ultra v2は、意図的にFable 5、Fable 5.1、GPT-6-Astraをモデルプールから除外している設計が特徴的で、これによりベンダーロックインやAPI取り消し、サービス中断への露出を減らす狙いがあるとされる。
価格とベンチマーク性能
Fugu Maxの価格は入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり6ドルで、SonnetシリーズやGPT系列の上位モデルと比較して40〜60%低価格に抑えられている。性能面では、Terminal Bench 2.1、GPQA Diamond、AA-LCR、GDP.pdfを含む6つのベンチマークで最高スコアを記録し、10個中7つのベンチマークでコスト対パフォーマンスのパレート効率を拡大したという。
Fugu Ultra v2は特殊領域でさらに際立った結果を示している。視覚推論を評価するChartographyベンチマークでは48.3のスコアを記録し、Opus 5の27.3、Fable 5の29.5を大きく上回った。実世界のソフトウェアエンジニアリングタスクを評価するDeepSWEでも74.3を記録している。
デプロイメントと今後の展望
両モデルは発表当日からOpenAI互換APIを通じて利用可能となったが、提供形態はホスト型APIのみで、EU/EEA地域でのサービス提供は行われていない。また自己ホスティング向けのオープンウェイトは公開されていない。Sakana AIのこのアプローチは、単純なデータ検索から複雑な推論タスクまで、タスクの難易度に応じて適切な規模のモデルをマッチングすることで効率性を追求するものだ。2026年4月のベータ版から現行バージョンまで半年というペースで進化しており、今後も複数モデル協調型のオーケストレーション路線を加速させていくとみられる。