概要

オープンソースのメディアサーバー「Jellyfin」の開発チームは9月7日、バージョン12.0を正式にリリースした。これまで「10.12」になるはずだったバージョンが「12.0」へと名称変更されたことが象徴するように、今回はマイナーアップデートの枠を超えた大型リリースとなっている。開発チームは、これまでマイナーリリースの体裁を取っていた重大な変更を正確に表現するため、10.11.xを最後の「10.x」シリーズとし、以降は12.0、13.0のように先頭の数字が変動するバージョニング体系に切り替えたと説明している。

データベースバックエンドの刷新

今回の目玉は、v10.11から進めてきたライブラリデータベースの再設計が実を結んだ点にある。従来、プレイリストやコレクション、ボックスセットは一つの大きなリストとしてまとめて保存されていたが、12.0では各アイテムが独立したデータベース行として扱われるようになった。これにより、大規模なプレイリストやコレクションでアイテム数の確認や削除、ページング表示が大幅に高速化されている。あわせて、重いメンテナンス処理がライブラリスキャンを妨げなくなったほか、「Continue Watching」「Up Next」や音楽機能表示時のページ遷移でフリーズが発生しにくくなったという。ただし各記事とも、具体的なベンチマーク数値は示されておらず、体感的な改善として説明されている点は留意したい。

UIとメディア機能の変更

これまで実験的機能だった「Modern」レイアウトが、デスクトップおよびモバイル向けのデフォルトインターフェースとなった(テレビ向けは引き続き従来のレイアウトを使用)。従来のインターフェースは「Legacy」に改称され、ライブラリツールバーのアプリケーションバーへの統合、言語・スタジオによるフィルター追加、ポスター画像を実解像度で表示する変更なども加えられている。また、映画のみで対応していた複数バージョン管理機能がテレビシリーズにも拡張され、放送版と拡張版、あるいは1080pと4Kといった異なる品質のエピソードをグループ化し、実際に視聴したバージョンに応じて再生位置を追跡できるようになった。書籍・コミック機能も大幅に強化され、これまでサードパーティのBookshelfプラグインが担っていたOPF・ComicInfoファイルからのメタデータ読み込み、EPUBやコミックアーカイブのカバー自動生成、PDF・コミックのページ数抽出、オーディオブックの章抽出といった機能がサーバー本体にネイティブ統合された(Bookshelfプラグインは非推奨化)。新たにOpenLibraryプラグインも提供される。このほか、メディア処理基盤はFFmpeg 8.1へ移行し、CUDA・OpenCLサポートの強化、Dolby Vision処理の改善、テレビクライアント向けAV1直接ストリーミングにも対応した。

アップグレード時の注意点

データベーススキーマの大幅な変更に伴い、アップグレードには相応の準備が求められる。前提としてJellyfin 10.10.7または10.11.xからのアップグレードが必須で、完全なバックアップの取得が強く推奨されている。移行時にはユーザー名の大文字小文字の違いが重複と誤認され、移行に失敗する事例が報告されているため注意が必要だ。アップグレード後にはフルライブラリスキャンが必須となり、初回スキャンは通常より著しく長時間化するほか、一部の映画が新規追加として誤認識される可能性もあるという。サーバーの基盤が.NET 10に移行したことでサードパーティプラグインは再コンパイルが必要となり、10.11向けにビルドされたプラグインは12.0では読み込まれない。あわせて廃止予定だった認証メカニズムが無効化され、/emby/や/mediabrowser/アドレスに依存する旧式クライアントは動作しなくなる可能性がある。API面でもGetItemsエンドポイントの非同期化をはじめ複数のエンドポイントが廃止・変更されており、サードパーティ製クライアントやプラグインの開発者は対応状況を確認した上でアップグレードする必要がある。