概要
AI音楽生成スタートアップのSunoは9月9日、新モデル「Suno v6」ファミリーを発表した。同社は今回のモデルについて「旧バージョンの学習に使用したデータでは学習していない」と明言しており、Warner Music Group、BMG、Believeといった大手レーベルおよびディストリビューターからライセンスを受けた楽曲データのみを用いて学習したとしている。背景にあるのは、無許諾データでの学習を理由にSony、Universal Music Group、アーティストのJason Isbellらから相次いで起こされている著作権訴訟であり、ユーザーからはセキュリティ上の不備やデータ漏洩を巡る訴えも起きている。Sunoは旧モデルを今後廃止する方針で、業界からの法的圧力に主要AI音楽企業がどう応じるかを示す事例として注目されている。
モデルのラインナップと新機能
v6ファミリーは3種類で構成される。有料ユーザー向けに安定した制御可能な出力を提供する基本モデル「Suno v6」、予測不能な創造的結果を狙う実験的な派生版「Suno v6-wild」、そして全ユーザーが利用できる高速版「Suno v6-mini」だ。新機能としては、プロンプトや歌詞を使って楽曲の特定セクションのみを編集できる機能、テキスト・画像・動画を創作の参照素材として使える機能、サンプルから楽器音を分離する機能などが加わった。さらに、新設されたレーベルとのパートナーシッププログラムを通じ、アーティストのオプトインを前提としたリミックス機能も導入される。
ライセンス契約と業界との関係
今回のモデル刷新を支えるのは、Warner Music Group(2025年に訴訟を和解)、BMG(先月契約締結)、Believeとの間で結ばれたライセンス契約だ。Suno最高製品責任者(CPO)のJack Brody氏は「音楽エコシステムと我々のパートナーは、常に新たな収益機会を模索している」と述べ、レーベル側にとってもライセンス収入という形でメリットがあることを強調した。この発表は、SunoがYouTubeの音声データを用いてモデルを学習していたことを認めた経緯を踏まえたものでもあり、無断学習への批判をかわしライセンスに基づく事業モデルへ転換を図る狙いがうかがえる。
今後の展望
Sunoは生成楽曲への電子透かし(ウォーターマーク)導入を計画しているほか、アカウントの利用tierに応じたダウンロード数制限を既に導入するなど、追加の保護策を進めているとされる。旧モデルの完全廃止とあわせ、著作権侵害リスクを抑えつつサービスを継続させる姿勢を鮮明にした形だ。SunoはSony、Universal Music Group、Isbell氏らとの訴訟を依然として抱えており、今回のライセンスモデルへの転換がこれらの係争にどう影響するかは不透明だが、他のAI音楽生成企業にとっても著作権リスクへの対応方針を左右する先例になる可能性がある。