概要

フィールズ賞受賞者25人が、OpenAIをはじめとするAI企業の姿勢を批判する公開書簡に署名したことが明らかになった。書簡は、AI企業が数学の未解決問題の「解決」を急いで発表するあまり、十分な文書化や新手法の検証、既存研究への適切な引用がなされていないと指摘し、これによって帰属(attribution)や盗用(plagiarism)をめぐる深刻な問題が生じかねないと警鐘を鳴らしている。数学界とOpenAIの間ではもともと、ナビエ-ストークス方程式の証明を巡ってNYUの研究者との間で優先権論争が起きており、今回の公開書簡はこの対立をさらに一段階深刻なものにしている。

対立の発端と広がり

発端の一つとなったのが、OpenAIが「マラソン推論」と呼ばれる集中的な計算セッションの末にナビエ-ストークス方程式に関する成果を発表したことだ。これに対しNYU教授のTristan Buckmaster氏は、OpenAIが共同研究者(Anthropic在籍)の貢献を認めないよう圧力をかけたと主張しており、成果の帰属を巡る対立が表面化していた。フィールズ賞受賞者らの書簡は、こうした個別の摩擦にとどまらず、AI企業による性急な成果発表が研究者間の協調に基づく数学界の文化そのものを脅かしかねないという、より広範な懸念を示すものだ。検証を経ないまま成果が公表されれば、他の研究者が手法を追試したり引用したりする機会が失われるだけでなく、競争を避けるために研究者が成果を秘匿する方向に向かいかねないとの指摘もある。

今後の影響

対立の深刻化を示す動きとして、OpenAIがある数学関連イベントへのスポンサーシップを撤回したことも報じられている。数学者らが懸念するのは、AIによる性急な発表がもたらす検証不足や引用軽視の問題が数学分野に限らず、証明や創作物の帰属が重要な意味を持つあらゆる専門分野に波及しうるという点だ。AI企業と学術コミュニティが今後どのように協調体制を築き直すかが、AIによる科学的発見の信頼性を左右する焦点になりそうだ。