概要

DeepSeekは9月10日(協定世界時4時)、新モデル「V4.1-Flash」を発表した。552Bパラメータ規模のMoE(Mixture-of-Experts)モデルで、新設計の「Causal Encoder-Decoder(CED)」アーキテクチャを採用し、入力処理には8B、出力生成には16Bのパラメータのみを活性化させる構成となっている。最大の特徴は100万トークンという長大なコンテキスト長で、出力も最大38.4万トークンまで対応する。汎用モデルだった従来のV4-Flashと、ビジョン専用の実験モデルであったV4-Flash-Vision-Expは廃止され、V4.1-Flash単体でネイティブな画像理解を含むマルチモーダル入力をサポートする、推論・関数呼び出し・ツール利用・構造化出力・プロンプトキャッシュにも対応した汎用モデルとして統合された。

KVキャッシュ削減と価格体系

V4.1-Flashの技術的な核心は、KVキャッシュの大幅な圧縮にある。CEDアーキテクチャに加え、Compressed Sparse Attention 2とFP4キャッシングを組み合わせることで、グローバルKVキャッシュは1トークンあたり890バイトまで削減された。これにより必要なHBM(高帯域幅メモリ)は前世代V4-Flashの4分の1、SSDストレージは8分の1で済むという。この効率化はそのままAPI価格に反映されており、ピーク時でも入力100万トークンあたり0.30ドル、出力は1.20ドルという低価格を実現した。オフピーク時間帯(協定世界時で月〜金の1〜4時および6〜10時を除く時間帯)はこの半額で利用でき、キャッシュ読み込みは100万トークンあたり0.003ドルと、リポジトリ全体やツール定義、システムプロンプトを繰り返し読み込むエージェント用途でのコスト圧縮を強く意識した設計になっている。

ベンチマークとV4-Proからの移行

性能面でもV4.1-Flashは旧世代の旗艦モデルを上回る結果を示している。新しい事前学習手法と大規模な強化学習による事後学習の成果として、DeepSWE v1.1ベンチマークではV4.1-Flashが74.2点を記録し、V4-Proの62.7点、V4-Flashの54.4点を大きく上回った。DeepSeekはこの結果を受け、性能・コスト・速度・総実行時間のいずれにおいてもV4.1-FlashがV4-Proを凌駕すると説明している。これに伴い、9月14日(協定世界時4時)以降はdeepseek-v4-pro宛のリクエストがすべてV4.1-Flashへ自動的にルーティングされるようになり、課金もV4.1-Flashの料金体系に統一される。DeepSeekは後継となる「V4.1-Pro」の投入を予定しており、V4-Proは過渡的な位置づけとしていったん運用を終える形となる。

今後の展望

V4.1-FlashはMITライセンスのオープンウェイトモデルとしてHugging Faceで公開されており、APIではdeepseek-flashの識別子で利用できる。100万トークンという長大なコンテキストとキャッシュコストの劇的な低減は、リポジトリ全体を読み込んで作業するコーディングエージェントや、長時間の会話履歴を保持するチャットボットなど、エージェント型ワークロードでの採用を後押しする可能性がある。一方でV4-Proの旗艦モデルとしての立ち位置がV4.1-Flashに実質的に置き換わることで、DeepSeekのモデルラインナップは当面Flash系列を中心とした構成に集約される見込みだ。