概要

Qualcommは9月8日(現地時間)、Amazon Web Services(AWS)のデータセンター向けにAI半導体を供給するパートナーシップを発表し、Amazonに対して最大40億ドル相当の自社株購入権(ワラント)を付与すると明らかにした。この発表を受けてQualcomm株は同日3%上昇した。今回の提携により、AmazonはMetaに続いてQualcommのAI半導体を採用する大手クラウド事業者となり、主要ハイパースケーラーの間でNvidia以外の調達先を確保する動きがさらに広がった。

契約とワラントの仕組み

両社は「複数世代のカスタムシリコン」にわたって協業し、AWSのAI推論インフラの構築を支援する。ワラントはAmazonが1株161.26ドルで合計2500万株のQualcomm株を取得できる権利で、評価額は約40億ドルに相当する。特徴的なのは、株式の権利確定(ベスティング)が実際のハードウェア調達額に連動する成果連動型の設計になっている点だ。契約発表時点の当初購入コミットメントに基づき375万株分がまず即時に権利確定し、残りを含めた2500万株全体の権利を完全に確定させるには、Amazonが2036年までにQualcommのサーバー向けチップ、ネットワーキング機器、製造サービスに対して最大600億ドルを支出する必要がある。

Qualcommのデータセンター事業戦略における位置づけ

Qualcommにとって今回の提携は、スマートフォン依存からの脱却を進める上での大きな一歩となる。同社はApple向けモデムチップ事業の将来的な喪失、部品コストの上昇、スマートフォン需要の軟化といった逆風に直面しており、この1年でクラウド事業者に対しカスタムAIチップやデータセンター技術を積極的に売り込んできた。同社は非スマートフォン事業(自動車、IoT、データセンターなど)の売上比率を、現在の約25%から2029会計年度までに半導体売上全体の約3分の2まで引き上げる方針を掲げている。データセンター分野では「1兆ドル規模」の市場機会を見込み、2029年までに150億ドルの売上目標を設定している。

MetaやMicrosoftとの先行事例との関係

今回のAmazonとの提携は、6月に発表されたMeta Platformsとの契約——Dragonfly C1000 CPUを用いたサーバー電源ソリューションでの合意——に続くものであり、Qualcommにとって2社目となる大手ハイパースケーラーとのAI半導体パートナーシップとなる。Microsoftも含め、主要クラウドベンダーがNvidia一強体制からの脱却を模索する中、Qualcommは推論用途に特化したカスタムシリコンという切り口で存在感を強めつつある。成果連動型のワラントという構造は、実際の調達実績が積み上がるまでQualcomm側のリスクを抑えつつ、Amazon側にも長期的な調達コミットメントへのインセンティブを与える設計であり、今後他のハイパースケーラーとの契約にも同様のモデルが採用される可能性がある。