欧州最大級の資金調達

パリを拠点とするAI企業Mistral AIは9月8日、シリーズDラウンドで30億ユーロ(約35.8億ドル)を調達したと発表した。今回のラウンドはSamsung Electronicsが主導し、EQTが運用するScaleup Europe Fundと既存投資家のPSG Equityが共同リード投資家として参加した。新規投資家としてAdvent、BlackRock、ルクセンブルク大公国が加わり、a16z、ASML、General Catalyst、Lightspeed、Nvidia、Salesforce Venturesといった既存投資家も追加出資した。調達後の企業価値は210億ユーロ超に達し、欧州のテクノロジー企業としては過去最大級の資金調達規模とされる。1年前のシリーズC(ASML主導)時点での評価額117億ユーロから、大幅な増加となった。

「主権AI」需要を追い風に

Mistralは、米国の技術依存に対する欧州の懸念を背景とした「主権AI(sovereign AI)」の担い手として自社を位置づけている。すでに20カ国で事業を展開し、Airbus、ASML、HSBCなど125社以上の企業顧客を抱える。フランスのマクロン大統領は今回のラウンドについて、フランスと韓国が「AIにおける第三の道を築く」取り組みを反映するものだと評した。オープンウェイトモデルを強みとする同社は、政府や企業が自国内でAI基盤を管理したいというニーズの高まりを追い風に、独立した欧州発のAI企業としての存在感を強めている。

インフラ投資と成長戦略

Mistralのアーサー・メンシュCEOによれば、調達資金はデータセンターの自社構築・保有および追加コンピューティング能力の賃借に充てられ、5年間で自社保有の計算能力を倍増させ、「より大規模で高速なモデル」を訓練する計画だという。同社はすでにNvidia GB300 GPUを13,800基搭載するパリのデータセンター向けに8億3000万ドルの負債による資金調達を実施済みで、スウェーデンでも12億ユーロ規模の施設を建設中だ。欧州における計算能力については、2027年末までに200メガワット、2030年までに1ギガワットの達成を目標に掲げている。また7月にはMicrosoftとの戦略的パートナーシップを大幅に拡大しており、クラウド統合を進めている。

業績と今後の展望

Mistralは年間経常収益(ARR)で年内に10億ドルを突破する見込みだとされ、事業規模の急拡大が資金調達の後押しとなった形だ。今回の大型調達により、OpenAIやAnthropicなど米国勢が主導するAI業界において、欧州発の独立系プレイヤーとしての競争力強化が期待される。今後はデータセンター投資の拡大とともに、政府機関や規制の厳しい業界向けにデータ主権を重視したAIソリューションの提供を加速させる見通しだ。