概要
AWSは9月3日、次期クラウドネイティブOS「Amazon Linux 2027」(AL2027)のパブリックプレビューを開始した。Webアプリケーションやデータベース、コンテナ化マイクロサービス、AI/MLワークロード、大規模インフラストラクチャなど幅広い用途を想定した設計で、Fedora 44/45をベースにLinuxカーネル7.1を採用する。前世代のAmazon Linux 2023(カーネル6.1系)から大きく世代が進み、パッケージ管理やセキュリティ設定、コンパイラ最適化まで全面的に刷新されている点が特徴だ。プレビューAMIはx86-64・ARM(Graviton)の両プラットフォームに対応し、全商用リージョンのAWS管理コンソールから利用できるほか、コンテナベースイメージはAmazon ECR Public Galleryでも配布される。
セキュリティとパッケージ管理の刷新
最大の変更点の一つがSELinuxの既定値だ。Amazon Linux 2023ではpermissive(通知のみ)モードが標準だったが、AL2027ではenforcingモード(強制モード)がデフォルトで有効になる。暗号処理には引き続きAWS-LCが用いられ、暗号化パフォーマンスの向上に寄与するという。パッケージ管理は長らく使われてきたYUM/DNF4系列から一新され、DNF5 5.4が採用された。dnf・yumいずれのコマンドも内部的にDNF5を呼び出す形になる。またSystem Vサービススクリプトのsystemdサポートが廃止され、正規表現ライブラリのPCRE1はPCRE2へ完全移行するなど、レガシー機能の整理も進められた。パッケージマネージャーにはRPM 6.0、初期化システムにはsystemd 260が採用されている。
パフォーマンス最適化とツールチェーンの更新
性能面では、全パッケージが-O2最適化レベルおよびLink Time Optimization(LTO)を有効にしてビルドされる。x86-64版パッケージはAVX/AVX2命令セットを前提としたx86-64-v3をターゲットとし、自動ベクトル化も有効化された。ARM(Graviton)版ではmallocヒープアリーナ向けにTransparent Hugepages(THP)がデフォルトで有効になっている。開発ツールチェーンも大幅にアップグレードされ、GCCは11.5系から16.1系へ、glibcは2.34から2.43へ、LLVM/Clangはバージョン22系へ、Pythonの既定バージョンは3.9系から3.14系へと刷新された。RustやGoの更新版も含まれ、AI/MLワークロード向けにAWS Neuron Driversもサポートされる。Phoronixは今後ベンチマーク計測を実施予定としており、これらの最適化が実際の性能向上にどれだけ寄与するかは今後明らかになる見通しだ。
今後の展望
現時点ではプレビュー段階であり、AWSは本番環境での利用を推奨していない。プレビュー期間中は自動更新の仕組みが提供されず、ユーザーは手動でのアップデートが必要になる点にも注意が必要だ。AWSはAL2027専用のGitHubリポジトリを通じてユーザーからのフィードバックを直接収集しており、正式リリースまでの間に仕様が変更される可能性もある。カーネルやツールチェーンの大幅刷新、セキュリティ既定値の強化は、クラウドネイティブ環境における性能とセキュリティ両立の要求に応える狙いとみられ、正式版のリリース時期や後方互換性の詳細に注目が集まる。