概要
Microsoftは9月2日、Visual Studio Codeの最新版「1.136」(後に1.136.1へ更新)をリリースした。今回の目玉は、プルリクエストの完成までをエージェントが自動で担う新機能「Agent Merge」(プレビュー)だ。設定 chat.agentMerge.enabled で有効化すると、エージェントがコードレビューの指摘対応、CI/CDチェック失敗の修正、マージコンフリクトの解消、ワークフローの再実行を繰り返し実行し、プルリクエストがマージ可能な状態になるまで自律的に作業を続ける。Agentsウィンドウの「Enable Agent Merge for Active Session」またはタイトルバーのボタンから利用でき、開発者はレビュー作業の細部から解放され、より戦略的なコード評価に集中できるようになる。
エージェントセッション管理の強化
今回のアップデートでは、複数のエージェントを同時に走らせる開発スタイルを見据えた機能追加も目立つ。実験的機能として、chat.agentHost.copilotAgent.multiRootEnabled と chat.agentHost.claudeAgent.multiRootEnabled の2つの設定により、CopilotおよびClaudeのエージェントセッションが複数フォルダを含むマルチルートワークスペースに対応した。ただしエージェント拡張機能(Agent hooks)は単一のワークスペースフォルダに限定される設計のため、複数フォルダでフックが検出された場合はプライマリフォルダの選択をユーザーに求める仕様となっている。エージェントはプロジェクト名や絶対パス、ワークスペースURIをもとにワークスペースを解決し、リモートワークスペースURIにも対応する。
あわせて、関連するチャットとセッションを階層的に表示する「Navigate related chats and sessions」機能も追加された。セッション配下にチャットが子要素として表示され、各行にタイトルやステータス、承認待ちの有無が一覧できるほか、複数チャット間で委譲された作業を「Sent from another chat」のようなソースリンクで追跡できる。ファイルのブレッドクラム表示についても、これまでセッション識別子がそのまま表示されていた問題を解消し、安定したプロバイダー・セッションラベルを使う形に改善された。さらに chat.notifyWindowOnConfirmation と chat.notifyWindowOnResponseReceived の設定により、ウィンドウが非フォーカス時に入力待ちや応答完了を通知できるようになり、複数セッション・複数ウィンドウでの並行作業をより追跡しやすくなっている。
チャットの見た目と基盤の進化
チャット画面の背景をカスタマイズできる実験的機能も加わった。Chat: Set Background... コマンドからCodiconsパターンやユーザー画像を背景に設定でき、Chat: Change Background Layout... では反復配置や引き伸ばし、中央配置など11種類のレイアウトから選択可能だ。背景はダーク・ライトのテーマに応じて自動切り替わり、ハイコントラストテーマでは表示されない仕様になっている。チャットの内容自体は独立した背景を持つため、画像を敷いても可読性は損なわれない設計だ。
裏側では、Agent Host Protocol(AHP)に基づき専用プロセスでエージェントを実行する「Agent Host」の開発が進行中で、複数のVS Codeウィンドウから同一セッションにアクセスできる構想が示されている。Copilotエージェントはnpmパッケージ @github/copilot-sdk に依存する形となり、Copilot CLIやGitHub Copilot Appなど他のCopilot製品との動作一貫性を確保する狙いがある。このほかエンタープライズ向けには、辞書機能で使用するモデルや文字起こしのクラウド送信可否を管理者がポリシーで制御できるようになった。
その他の改善と今後の展望
AI機能以外にも、実験的な window.density.layout 設定によるコンパクトレイアウト、インレイヒントやカラーデコレータを考慮したワードラップ計算の改善、統合ブラウザでのスペルチェック、拡張機能経由のターミナルコマンド実行遅延の削減(JavaScriptデバッガーで実測5秒短縮)など、細部の使い勝手向上も図られている。今回のリリース全体からは、単発のチャット応答から、複数フォルダ・複数セッションにまたがるエージェント委譲やその管理へと、VS CodeにおけるAI活用の重心が移りつつある様子がうかがえる。Agent Mergeやマルチルート対応はいずれもプレビュー・実験段階であり、今後のフィードバックを踏まえて正式機能への昇格が進むとみられる。