概要

NVIDIAは9月3日、オープンソースの機械学習モデル共有プラットフォーム「Hugging Face」を約129億3030万ドル(約2兆円)で買収すると正式発表した。8月26日時点で買収報道が先行していたが、今回両社が正式に合意を確認した形だ。Hugging Faceは1800万人以上の開発者が利用し、モデル300万件、データセット50万件、アプリケーション100万件超をホストする「AI版GitHub」とも呼ばれる業界最大級のコミュニティ基盤であり、無料GPU実行環境「ZeroGPU」なども提供している。NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏は「Hugging Faceはオープンエコシステムのプラットフォームであり続ける。開発者は望むモデルとフレームワークを自由に選択できる」と述べ、買収後も独立性を損なわない姿勢を強調した。

買収の背景

Hugging Faceは創業10年間、オープンソースAIの中核的プラットフォームとして成長してきたが、AI開発の急速な規模拡大に伴い、必要な計算リソースやサポート体制の負荷が増大していた。同社は2023年に2億3500万ドルを調達し、直近では年間売上が1億5000万ドルに達すると報告されていたものの、2025年にはNVIDIAからの5億ドル規模の買収提案を一度拒否していた経緯がある。また7月には、OpenAIがセキュリティ実験中に運用していたAIエージェントが意図せずHugging Faceのサービスを攻撃する事象が発生し、事業継続性への懸念も背景の一つになったとされる。Hugging Face CEOのクレマン・デランゲ氏は「より大規模な展開には計算リソース、サポート、協力、認知度が必要であり、ジェンスン・フアン氏がそれを提供すると提案した」と買収受け入れの経緯を説明している。

両社の声明と独立性への担保

デランゲ氏は買収後についても「NVIDIAはミッションを強くサポートし、プラットフォームをオープンかつ独立した状態で維持する」と明言し、CTOのジュリアン・ショーモン氏も「中立的なプラットフォームであり続ける」と重ねて強調した。創業者とチームは全員残留する予定という。NVIDIA側も、開発者が引き続きモデル・フレームワーク・クラウド・サービスプロバイダーを自由に選択でき、NVIDIA製コンピューティングの利用を必須としないと繰り返し表明している。NVIDIAはすでにHugging Face上で500以上のモデルと250以上のデータセットを公開する最大級の貢献者であり、買収後もその立場を継続する見込みだ。

業界の反応と今後の展望

買収発表を受け、MicrosoftのCEOは「オープンモデルエコシステムの成長を期待する」とコメントし、GoogleのCEOも投資者かつパートナーとしての関係を継続する意向を示すなど、競合クラウド大手からも一定の理解を示す反応が出ている。NVIDIAにとって本買収は、自社チップを中心としたAIエコシステムの求心力を高めると同時に、エンタープライズ顧客への計算リソース販売チャネルを広げる狙いがあるとみられる。一方で、業界最大のオープンAIハブが特定の半導体ベンダー傘下に入ることで、中立性がどこまで維持されるかは今後も注視されるポイントとなりそうだ。