概要
Nvidiaは8月31日、台湾MediaTekが発行する35億ドル規模の転換社債を引き受けると発表した。これはMediaTekが実施する39億ドルの社債発行のうち約9割に相当し、Nvidiaにとっては米国外での直接投資としては過去最大規模となる。両社はNvidiaの高速インターコネクト技術「NVLink Fusion」と新たに発表された高帯域メモリ技術「NVHBM」を軸に、AIデータセンターからPC・自動車向けのローカルAIコンピューティングまで協業を拡大する。発表を受けて台北市場のMediaTek株は翌日に値幅制限いっぱいの10%高となり、年初来の上昇率は約200%に達した。
NVLink FusionとNVHBMが意味するもの
今回の提携の核心は、MediaTekがNvidiaの「実証済みのスケールアップ・スケールアウト技術スタック」を採用し、データセンター向けカスタムASIC(いわゆるXPU)を設計できるようにする点にある。NVLink Fusionはメーカーを問わずチップ同士を高速接続する技術で、NVHBMはカスタムチップ向けに高帯域メモリを統合しやすくする技術だ。これにより、クラウド事業者が独自設計のAIチップをNvidia製GPUと同じラックスケールアーキテクチャの中に標準的な形で組み込めるようになり、開発期間の短縮にもつながるとされる。MediaTekは6月時点で、自社のカスタムAIチップ事業が2026年に20億ドルの売上を生み、2027年までに市場規模が最大800億ドルに達すると見込んでいることを明らかにしている。
Big Techの自社チップ開発への対抗策
背景にあるのは、Amazon、Google、Microsoftといった大手クラウド事業者やOpenAI、AnthropicなどのAI企業が、Nvidia製GPUへの依存を減らすべく独自チップの開発を進めているという構造変化だ。Nvidiaはこれらの動きと正面から競合するのではなく、自社の技術スタックをAIインフラの標準的な基盤として位置づけることで、competitorがどのチップを採用してもNvidiaの技術圏内にとどまるような戦略を取っている。Nvidiaのシニアディレクター、Dion Harris氏は「あらゆるクラウド事業者、あらゆるモデル開発企業が、何らかの形で我々のプラットフォームを採用している」と述べており、直近のAWSとの提携と並んで、この戦略を象徴する事例といえる。
今後の展開
両社は今回の枠組みを、データセンター向けチップにとどまらずPC向けAI PC(RTX Spark)や自動車向けチップにも広げる計画だとしている。MediaTekはスマートフォン向けチップで世界最大手であり、Qualcommの主要な競合として知られてきたが、近年はデータセンター向けカスタムチップへの多角化を進めており、今回の出資はその戦略を後押しする形となる。一方で、GPU大手が主要顧客・パートナー企業に対して社債や株式の形で出資する「循環的な資金の流れ」に対しては、AI業界全体の過熱を懸念する声も出ており、今後の業界の資金循環構造にも注目が集まりそうだ。